おさんぽデビュー!

 元来、犬というものは散歩が好きだとばかり思っていました。

 私が子供の頃に飼っていた初代ヨークシャーテリアのパールは、リードを手に取っただけで、呼んでいないのにどこからともなく現れて、「おさんぽ、行くの? 行くんだよね?」と大きなおめめで圧をかけてきたものです。

 二代目ヨークシャーテリアのルビーは、生後二か月の時にうちに迎え入れ、三回目のワクチン接種が終わった後、生後六か月の時に『おさんぽテビュー』を行いました。

 リードを付けて、まずは家の庭にそっと下ろしてみましたが、まったく反応せず、じっとその場に座り込みます。

 微動だにしないその様子に、リードを軽く引っ張ってみましたが、どっかとお尻を下ろし、足を突っ張って、動くことを断固拒否。

 これはもしや、噂に聞く『拒否柴』……いやいや、『拒否テリア』です。

 頑として動かないルビー。

 じれましたが、あまり無理強いするのは逆効果と思い、その日はおさんぽを諦めました。

 しかし、その後、何度、おさんぽに挑戦しても彼女はずっと『拒否テリア』のまま。一歩も動かない構えです。

 しかし……飼い主は諦めません。

 だって、ルビーとおさんぽに行きたいんだもん。

 小型犬は家の中で走り回るだけで十分な運動量を得られるから大丈夫と獣医さんが仰っておられましたが、しかし、たまにはお日様にあたりひなたぼっこをして、風にそよがれ、草花の香りを嗅いで欲しいと飼い主は思うのです。

 そこで、新しいアイテムを用意しました。

 それは、

『ペットカート』!

 ペット用のベビーカーというわけです。もう、苦肉の策ですね……。

 並んで歩くことはできなくても、これで一緒にお外に出ることはできます。

 天気の良い日を選んでルビーをカートに乗せ、ご近所を一回り。

「カートの中なら怖くないでしょ?」

 と、覗いてみると、うちの可愛いルビーはカートの中で両足を突っ張って必死に『拒否テリア』をしておりました……。

 いや、そこで拒否ってもカートは前に進むんだよ、ルビー……。

 へっぴり腰で必死の形相で拒否るルビーは、それでもとってもキュートで可愛らしく、まあ、こんな散歩があってもいいかと思える一日でした。

 ルビーもそのうち、慣れてくれると思います(笑

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