ランドセルからの卒業

新しい家に越してきてから暫くして叔父が駆け落ちで家を出ていった、部屋が少し広くなった


叔父と次に会うのはそれから長い年月が経った15年後である、それはまたあとで話そうと思う


季節は春、真っ赤なツヤツヤのランドセルが似合う小学生になりちょっぴりお姉さんになった気分だった


たとえ離婚してもたとえ母が居なくてもたとえ家が変わってもきっとこの時までは幸せだったと自負している


小学校3年生くらいからの時期であったろうか

昔の出来事でも未だに鮮明に憶えている

突然何かを合図したかのように学校でいじめが始まった


私自身、なぜ自分がいじめの対象に選ばれたのかは今でもよく分からない

でもよくあるような《なんとなくムカつくから》が理由なのだと思う


そんないじめは気付けば卒業まで続くことになる

小学生のいじめだからそんな現代ほど悪質で陰湿なものではなかったが、そのせいで中々友達が全然できないでいた


ほんのひと握りの友達はいたが教室の中ではよそよそしく裏では仲が良いという典型的さであった


いじめは本当に簡単なもので近寄ると机ごと避けられるきちんと洗ってきた給食着も臭いと言われる陰口は日常茶飯事


だけど確実に小さな私の心には憎悪となって蓄積されていった

今となってはそんないじめっ子たちも子を持つ親となっているのだから実に愉快である


「お友達をいじめてはいけません」なんて口が裂けても私なら言えないだろう


いじめの原因はやはり片親だからなのかもしれないと少し思う


何かあれば片親だから躾がなっていないマナーや常識が分からない、そういった枠組みに勝手に固定され差別への対象として認識されるのだ


この時になって初めて母を憎んだ


当時の理由を知らない私は何故自分を置いて出ていったのかと頭の中では喚き怒り憤慨していた


いじめられていてもプライドが高かった私はやり返し精神を持ちながら屈せず登校しつづけ晴れて小学校を卒業するのだが


少し時を巻き戻そう


卒業する半年前の事だった

おばあちゃんから家へと電話がくる





「むぎちゃん、ママに会いたくはないかい」

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