第3話
くそ、どれだけ考えても、結論が出ない。なのに、決断の瞬間は、刻一刻と迫っている。
このままだと、母さんの話を聞く時間が、無くなってしまう。会話を終わらせて、母さんの所に行かないと。
仁)俊、あのさ、俺は母さんが亡くなるかもなんて、考えた事もなかった。それにまだ、母さんの考えを聞いていない。だから、今の状態で決断出来ない。
俊)分かった、母ちゃんと話して、決意を固めてこい!
仁)あぁ、行ってくる。
そうして母さんの元へ行くと、いつもの優しい雰囲気とは打って変わって、凛とした眼差しで俺を見つめてきた。
まるで、何かの決意をした様に...
母)仁、いきなりで申し訳ないけれど、単刀直入に言うわ。
私は自分が犠牲になる事よりも、仁の大切な友達が犠牲になる方が嫌なの。だから仁には、家族ではなく、友人ボタンを選んで欲しいの。
一瞬、理解が追いつかなかった。母さんは何を言っているんだ?
「友達を失って欲しくないから、私が犠牲になれば解決!」ってそんな結論、受け入れられる訳が無い。
仁)えっ、母さん...どうしてそうなるんだよ!何で自己犠牲で解決しようとするんだ。母さんが居なくなったら、俺はこの先、一人で生きていけない。
だって俺、今まで母さんに助けられてばかりだし、まだ親孝行してないよ?俺が大人になって、一生懸命働いて稼いだ金で、美味しい物をご馳走するって約束も...果たせてない!
母)確かに、約束が実現しないのは残念かな。でもね、仁、貴方は私がいなくなっても、立派に生きていける。なんたって、私の自慢の息子だからね。
それに、貴方は一人じゃないよ。周りを見てみて、三人もいるじゃない。貴方の事を心から思ってくれる友達が。
だから大丈夫、これからも支え合って、共に高めあって、全力で生きてくれると信じているもの。
仁)止めろ!お願いだから、一生の別れみたいな雰囲気を出さないでくれ。まだ俺は、決めていない。母さんが死ぬなんて決まっていない、だから...
怜夜)はいっ、十分経ちましたので、話し合いタイムは終了でございます。それでは仁さんには、選択してもらいましょう。
"家族か、それとも友人か?"
くっそ、決まらない、選べない。いくら自己犠牲を訴えかけられても、母さんを見捨てるのは無理だ。
けれど、それは俊達も同じ。むしろ、人数の面で考えると、俊、美麗、幸の方を優先すべきなのか!?
もし、母さんを選んだ場合、俺は、三人を死に追いやった糞野郎になる。もしそうなったら、あいつらの家族、友人などの多くの人を悲しませる上に、恨まれる。
俺は、そんな重荷を背負って、一生暮らしていくのか?
三人の命を奪ったという足枷に、一生囚われ続けるのか?
その覚悟は、資格は、俺には無いだろ!なら、俺の選択肢は一つしかない。
仁)母さん、ごめんな。俺、母さんの残りの人生、全部背負うから。だから...だから、この選択を許して欲しい。
"ポチッ。"
震えた指先で、だけれど確実に、俺は友人ボタンを押した。
怜)只今、仁さんが友人ボタンを押したため、俊さん、美麗さん、幸さんの拘束が解除されます。
しかし、仁さんのお母様には、刑が執行されます。是非ご覧ください。
怜夜が言い終えた次の瞬間、母さんが付けていた手足の拘束具が起動して、母さんは壁に磔にされた。しかもただの壁ではなく、無数の針が取り付けられた壁に。
母)ガハッ、痛いし血が止まらない。お願い、仁、助けて!
怜)先程まで覚悟を決めていたのに、今更助けを求めるのですか?みっともないですね。そんな方には、さっさと死んで頂きましょう。
怜夜は手に持っていた小型の装置を操作して、こう言った。
怜)皆さん、少々お気をつけ下さい。今からナニカが飛んでくると思いますので。
仁)ナニカってなんだよ?それよりも、母さんをこれ以上苦しめっ
"ブチブチッ、ゴリゴリッ"
俺が抗議の言葉を言い終わる前に、母さんを拘束している方角から、嫌な音が聞こえた。
それは、今までに聞いた事が無い音のはずなのに、俺は本能的に何の音か分かってしまった。多分、母さんの命が尽きた音だ。
見たく無いけれど、恐る恐る振り返ってしまった俺は、母さんの変わり果てた姿を目撃する。
それは壁から出てきた刃物で、首を切断された、死体と成り果てた母さんだった。
しかも、胴体と切り離された首が転がってきて、俺の足にぶつかる。その表情は苦しそうで、とても見られない。だけど、俺は、足元に来た母さんだった物を持ち上げ、抱き締めながら怜夜に言い放つ。
仁)この糞サイコパスが、こんな事してタダで済むと思うなよ!
いいか?俺は、絶対お前に復讐するぞ。お前が俺を苦しめた分、何千倍にもして返してやる!!
怜)貴方だけでは無理だと思いますが...
俊)いいや、仁だけじゃない、俺もお前を許さねぇ。
美麗)私も、許さない。あんたなんか、成敗してあげるわ。
幸)僕も、協力する!
仁)お前ら..。よし、この四人で、必ずお前に復讐してやる。
怜)フフッ、楽しみにしていますよ。
こうして、一連の騒動は幕を閉じた。でも、まだ終わっていない。あいつに復讐するまでは。
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