第2話

仁)はぁ!? 何言ってるんだよ、というかお前、誰だよ...


 ?)これは、申し遅れました。わたくし、今回のゲームの司会を務めさせて頂きます、怜夜と申します。どうぞよろしくお願いします。


 "今回のゲーム"って何の事だ?それに名前を名乗ったのは良いが、どう見ても胡散くさい。

 それはさておき、拘束を解いて解放してもらう方法を考えないと。そのためにはまず、相手の目的を知る事が先決。


 仁)ひとまず、俺達の拘束を解いてくれないか?その後に、詳しい事情を教えてくれ。


 怜)申し訳ないのですが、拘束を解くことは出来ません。こちらにも事情がございますので、このまま進行させていただきます。


 解放してもらうのはやはり無理だったな。それなら一度、こいつの話を聞くしかないか。


 仁)とりあえず、一通りの説明を。


 怜)はい、分かりました。それでは、今日、この場にお集まりの皆様には、今から始まるゲームに、強制参加して頂きます。もちろん、拒否権はありません。


 強制参加で、拒否権無しのゲーム。嫌な予感しかしないな..。そんな事を考えていると、母さんが質問をした。


母)少し質問なのですが、そのゲーム?が終わったら、皆を家に返してくれるのよね?突然子供が居なくなったから、保護者の方が心配していると思うのだけど...。


 怜)もちろんでございます。ただしその時、生きている人に限っての話ですが。


母)どういう事?


幸・俊)なっ...


 怜夜の発言を聞いて、皆が困惑する。しかしここで、美麗が怒声を発した。


 美)何よ?まるで死人が出るみたいな言い方して..。そもそも、私達を誘拐して、何がしたいのよ?


 怜)今、まさに説明している途中なのですが...。まぁ、良いでしょう。話を続けます。


 これより、皆様に行なって頂くゲームは、「究極の二択」というものです。

 まず、皆様の中から、"選択者"を決めます。選択者は、二択の内のどちらかを選ぶ人の事を指しますね。今回は、事前にこちらが決めさせて頂きました、"仁さん"にお願いします。


 次に十分間の猶予が与えられ、その時、話し合いを行います。話し合いの内容は、「友人と家族、どちらを選ぶか」についてです。


 そして、話し合いが終わったら、わたくしの所まで来て頂き、手に持っているボタンの内、どちらかを押してもらいます。ボタンには、"友人ボタン"と"家族ボタン"があります。

 例えば友人ボタンを押すと、俊さん、美麗さん、幸さんの拘束が解除されます。家族ボタンを押した場合は、お母様の拘束が解除されます。


 最後に、ボタンが選ばれなかった方の拘束具が作動して、その方が死に至り、ゲーム終了となります。説明は終わりましたが、質問はありますか?


 俊)質問はあるか、じゃねーよ!今のルールだと俺達か、仁の母ちゃんが死ぬ事になるだろうが。ルールを変更しろよ...


 怜)ルールの変更は、受け付けておりません。他に質問のある方は?


 幸)はい、質問!もし仁がどちらも選ばなかった場合は、どうなるんですか?僕達全員、無傷で解放されたりは...


 怜)いいえ、全員無傷で解放はされません。その場合は、仁さん以外の全員の拘束具が起動して、死に至るでしょう。


 マジか、今の話を聞く限りルールに抜け穴が無い。という事は、俺は必ず、親友か母親、どちらかを選ばなければいけないのか。そして、選ばなかった方は...死ぬ?

 嫌だ、俺はどちらかを見殺しにするなんて出来ない。選べないよ...


 怜)もう質問は無いようなので、今から十分間、話し合いタイム、スタート!


 くそ、いきなり始まった。とりあえず、俊達の所に行ってみるか、時間がある内に。


 そう思い、俊達の所に向かうと、皆の表情が曇っているのが見て分かった。


 俊)...仁、なんか、とんでも無いことに巻き込まれたな。いきなりすぎて、わけわからん。


 仁)俺も今、同じ気持ちだよ。というか、俺が巻き込んでしまった様なものか。


 幸)そんな事ないよ、僕達みんな被害者だもん。


 美)あの、本当にムカつくわ。後でうちの全権力を使って、徹底的に痛めつけてやるわ。


 仁)それは、悲惨な事になりそうだな..。あっ、雑談してる場合じゃなかった。お前らの意見を聞きに来たんだ、正直、どう思うよ?


 幸)僕は、死にたくないって思ってる。まだやりたい事が沢山ある。(例えば、観たいアニメとか、クリアしてないゲームとか。)それを差し引いても、僕は死ぬのが怖いんだ。


 美)私も、まだまだやりたい事は沢山あるわ。加えて、家の事もあるのよね。一応、大企業の跡取り娘だし...。でも最終的な判断は、仁に任せるわ。


 俊)へぇ〜、いつも自分の意見が絶対の、美麗にしては珍しいな。


 美麗)失礼ね、バカ俊。でも、確かにその通りかも。いつもと違って、自分で決められなくて...


 仁)なるほど、二人の気持ちは伝わった。後は俊、お前の考えを聞かせてくれ。


 俊)俺は、死にたくないっていうよりは、やり残した事がある派だな。だが、それよりも、お前と母ちゃんの事が心配だ。

 

 例えば、仁が俺達を選んで、仁の母ちゃんが亡くなったら、お前、家族がいなくなるだろ。この先の生活は、どうするんだよ?


仁)それは...


 考えた事が無かった。母さんが亡くなる頃には、きっと俺は家を出て、新しい家庭を築いているなどと思っていたから。

 しかし、今の俊の話を聞いた後だと、余計に迷ってしまう。一体、何が正解なんだ、俺はどうすれば良いんだ!

 

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