キズナ・エラビ
一ノ瀬 夜月
第1話
「嫌だ。俺には、友達か母親、どちらかを見捨てる事なんて出来ない!」
遡る事半日前...
俊)おい、仁、聞いているか?今日のバイトが終わったら、合コン行く?他校の可愛い女子が来るらしい。
美)もう俊!仁がそんなのに出るわけないでしょう?
それより、今度私の家に招待してあげるわ。お母様も一緒に美味しい食事でおもてなししたいの。
幸)二人とも、話を遮らないでよ。えっと、今度のアニメのイベント、僕と一緒に行こうよ。仁が好きな声優が出演する予定だから、きっと楽しいよ。
この三人は、大切な友人ではあるのだが、基本的に遠慮が無さすぎるから困る。
まず、最初に話しかけて来た俊は、一言で言えば、バカで女好き。俺とはよく、可愛い女子の話は誰か?という話で盛り上がっている。
次に割って入って来た、プライド高めなお嬢様っぽい女子は美麗。こいつの家はかなりの金持ちで、甘やかされていて、結構我儘だ。加えて好奇心旺盛だから、常に振り回されている。
最後に、声をかけて来た、気弱そうに見える眼鏡男子は幸。俺とはアニオタ仲間で、たまにイベントとかに一緒に行く仲だ。
こいつらとは、学校内では四人で行動している。でも基本的に、共通の趣味などは無いので、まとまったグループではなく、個人個人が仲の良い集まりだ。
ここでの俺の立ち位置は意見が衝突した時の仲介役、もしくは場をまとめる役だ。だからこういう時は、一人一人に返事を返す。
仁)お前ら一気に話しかけすぎ。まず美麗、何度も言っているがお前の家に訪問するのは良いが、ご馳走はいらない。それは、俺が一人前になって、自分の金で母さんに美味しい物を食べさせたいんだ。
美)そう言われると思ってた。残念だけど、食事を振る舞うのはなしにするわ。
仁)次に幸、今度イベントの日程を教えて欲しい。日程が合えば、行けるはずだ。
幸)分かったー、後で日程を送るよ。
仁)最後に俊、前も言ったはずだが今日はダメなんだ。母さんの誕生日だから、バイトが終わったら、すぐに帰らないと...。
俊)本当、お前はマザコンというか、親バカというか..。分かった、また今度な。
仁)あぁ、今度は絶対に行くから。
俊)おぅ、楽しみにしてるぜ。
放課後
俺はバイトへ向かった。実は今日のバイト先は、俊も働いている。俊が俺の事情を説明して、バイトを早くあがれるように手配してくれたので、八時過ぎにはあがることができた。いつも妙な部分で気が利く奴だ。
バイト終わりにケーキ屋に寄って、マロンケーキを買った。母さんは、マロンケーキが大好物なので、きっと喜んでくれるはずだ。
母さんは、俺の誕生日には手作りハンバーグなどの手の込んだ料理を作ってくれるので、そのお返しという意味も込めて、プレゼントは母さんの好物にしたのだ。
バイト先から家まで徒歩ニ十分、ケーキの形が崩れないように、慎重に歩いて、家の前到着した。ここで俺はある事に気づいた。
家は明るいのに、人の気配はしない。不審に思いながらも、ドアを開け中へと入る。
中に入っても、母さんがいる気配はしない。でも、靴は置いてあるし、今日は休暇を取っているから、間違いなく家に居るはずなのに..。
俺は、母さんが居そうなリビングに向かい、電気を付けようとした次の瞬間、死角から誰かが出てきて、俺は思いっきり殴られたかのような衝撃に襲われた。しかも、急所の側頭部に直撃してしまったため、俺は耐えきれず、意識を落とした。
次に目が覚めた時、俺は全く知らない場所にいた。ぼんやりとした状態のまま、確認したところ、周りは暗くかなりの広さがあるようだ。
加えて、なぜか両手が手錠で拘束されていて、体の自由が利かない。でも、口は塞がれていなかったので、大声で叫ぶ。
仁)お〜い、誰かー、いないのか?いるなら今すぐ拘束を解いて、助けてくれ〜。
辺りは少しの間、静寂につつまれたが、何と、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
俊)今声を出した奴は、仁だよな?今、俺と美麗と幸、少し離れた所にお前の母ちゃんがいるんだけど、どうなっているんだ?
声の主は間違い無く、俊のはずだ。だが、なぜ四人が集まっているんだ?幸と美麗と俊が一緒に居るのはわかるが、母さんがなぜここに?
思考を巡らせていると、俺の近くに仮面をつけた人物が出てきて、こう言った。
「仁さん、あなたには今から友人か、家族か、どちらかを見捨てて貰います。」と。
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