第7話 永遠の寿司
徹はそれと寂しかった。こんなふうに楽しくなった時に父の徹生と話せなかったことが。もっと自分らしく生きれば良かった。もっと誇らしく生きれば良かった。もっと父に学べば良かった。そんなことを思いながら目を塩に湿らせて握り続けていた。それはいつかの父も濡らした塩だった。
失われている時間を感じつつ、眠気に襲われる目を瞑った世界の中で、三鷹の街の雰囲気を感じるのも悪くない。時間が過ぎる焦燥感にかられながらも、そんな他愛もない瞬間が人生を豊かにしてくれている。幸せを感じながら少しずつ前に進んで生きたい。
何年も塩混じりの寿司を握り続けている。切なくても力強く握り続けている。孤独な作業だ。でも父と繋がっている気がする。母が応援してくれている。家族が寿司で繋がっている感覚を握りながら感じていた。
徹は徹也のことを想像していた。想像しながらグッグッと寿司を握っていた。背筋をピンと伸ばして、真っ直ぐ寿司を見てグッグッと。そんな姿を見て母が思わず呟く「お父さん」。三人は確かに寿司で繋がっていた。グッグッ・・・グッグッ・・・。そんな徹の姿を外の光が照らしていた。
寿司屋の徹生 @kagihiroki
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