第2話 徹産まれる
「今日は奥さんいないんだね。流石にお家で休憩かい。あんまり無理させちゃだめだよ。」
「えーそうですね。」
徹生は寿司を握り続けた。自分の志を保つために。妻を守るために。
今日はワサビを少しだけ多くもってしまいそうな衝動を静かな気持ちで抑え続けていた。
病院に着いた。出産は疾うに終わっていた。目の前の妻はぐったりしながらも優しい笑顔を振りまいてくれた。
「無事産まれたよ。」優しい笑顔だった。そしてどこか深みがあった。これがお母さんの笑顔なんだと思った。
「男の子だよ。」目の前の赤ちゃんが我子というのが不思議だった。
徹生は翌日から寿司を握り続けた。病院には仕込みが終わってから間に合う時は行こうとしたが、間に合わなかった。定休日に翌日の仕込みが終わった日だけお見舞いに行った。一日見舞い行って妻と我が子が戻ってきた。不思議な我が子を徹と名付けた。愛着がほんの少しずつ増えはじめた。
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