寿司屋の徹生

@kagihiroki

第1話 寿司屋の徹生

美味しい寿司を握りたい。お客様を唸らせたい。

その気持ちだけでやってきた。

でも妻は他界した。それでも寿司を握り続けた。

そんな男の寿司屋の物語。



男はもう何十年も握り続けていた。もうおかしな程に。妻と二人三脚だった。

初めは都内な何店舗もある寿司屋で働き始めた。妻と結婚し、暫くは我慢して働いた。ただ、どうしても自分の尊敬出来ない先輩に従うのは我慢ならなかった。



まずはとにかく店舗を探した。そして店から8分程離れた場所を借りた。偶然空いてたから。すぐに借室申し込みに判をを押した。妻はただただ黙ってついてきてくれた。お腹が大きい妻だったけど徹生は無心に作り続けた。


妻のお腹が限界まで大きくなり、朝から陣痛が来た。でもその日は大きな宴会が入っていた。「私は大丈夫だから、寿司を握りに行って。」徹生は少し迷っていた。でもタクシーを呼んで妻に乗って貰った。「今日も頑張ってね。」その優しい言葉に涙が出そうだった。

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