第4話 みつけた。

 隼人は高校に入って部活を何をやろうかと迷っていた。

 

もともとアーチェリーをやっていたので、部活があれば入りたかったが、この高校にはなかったので同じように的を射る弓道部に入る事にした。あの射る時の緊張感が好きだった。


 入ってみるとゆるい部活で上下関係もなく楽しかった。こんなゆるい部活にマネージャーはいらないような気がするが、3年と1年にマネージャーがいた。1年の森川優花は髪の毛が長くメガネをしていて大人しそうだったが、話しかければ笑いながら楽しそうにするので暗いわけではないらしい。


何で弓道部のマネージャーをやるのかと聞くと「それは内緒」と言われた。もしかすると先輩とかに好きな奴でもいるのか?

 

 3年のマネジャーは部長とカップルらしく、おしゃべりはするがあまり仕事的なものはしない。ただ部長を見てるだけの感じだった。意外だったのは森川はよく働き洗濯や掃除など感心するくらい凄く一生懸命やっていた。


 タオルを洗濯し大きなカゴに入れ重そうに持っていたので「持つよ」と話しかけると、


「大丈夫だから」と言って歩き出そうとした時、よろけて転びそうになったので支えた。


 メガネが飛びタオルは落ちたが森川はとりあえず転ばずに済んだ。


「あー。タオル落ちちゃったね。ちょっと待ってメガネ拾うから。」


 メガネを拾い上げ森川に渡そうとした時、ちょっとびっくりした。あれ、可愛い。メガネがないと目大きいんだ。全然感じが違う。

「あ、ありがとう」と笑うとさらに可愛かった。これはちょっと良いもの見つけた。


 その日以来、俺は森川に毎日話しかけるようになった。ちょっとおどおどしながらも段々打ち解けてきて笑う数も増え、他の部員達とも話すようになり、ちょっとイラッとすることがあった。


「俺が最初に見つけたのに…。」


 


「なあ、最近お前楽しそうじゃない?なんか良いことあったのか?」爽平に言われた。


「そうか?良いことっていうかちょっと良いなって思う子がいて楽しいんだよね。」


「え、誰だよ!俺の知ってる子?」


「知ってるよ。隣のクラスの森川。」


「森川?誰だそれ。あ!あの大人しそうな子か?」


「そうだね。実はメガネ取ると結構可愛いんだよ。誰にも知られたくないけどな。」


「マジかよ。見てみたい!」


「俺の彼女になったら見せてやるよ。」


「マジ!告白するのか?その前に見たい!」


「ダメだよ。俺だけ知ってれば良いんだから。」


「メロメロじゃねえか。」


「まあな。」


 いつ告白するかのタイミングが難しい。多分俺の事好きなんじゃないかなと思うんだよな〜。よく目が合うってことは俺を見てるって事だよね。あまりグイグイ行っても嫌がられるかな?


 部活の時に森川がマネージャーの先輩と話しているのが聞こえた。図書委員会になったので、部活はその日は遅れますと話していた。図書委員会?うちのクラスまだその話出てないよな…これはラッキーかも。


 次の日のホームルームは思った通り委員会を決める話だった。


「では立候補お願いします。」


「はい!俺、図書委員やります。」


「何だよ隼人、やる気満々じゃん。」


「まあね。」


 その日以来、俺は本好きと思われた。

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