第2話 兄の親友

 多聞が中学3年生の夏、兄の隼人は死んだ。


 元気でかっこよくて俺のことをいつも心配してくれて、うざいと思った時もあったが、仲が悪い両親が嫌いだった俺は兄貴に頼り切っていたし、唯一の味方だった。


 特に俺は出来が良くないと思われていたので両親にほぼ相手にされていなかった。父親なんて兄貴に期待していただけに、パソコンばっかいじっている気味の悪い弟が残り兄貴が死んでさぞかし絶望しただろう。


 昨日まであんなに元気でいきなり自殺なんて、遺書もないのに全然考えられなかった。なんで親は素直に受け止めたのかも不思議だった。


 葬儀は土砂降りの雨の中静かに行われた。自殺と言われているだけあってみんな言葉少なく帰っていく。


 そんな中、兄貴の同級生らしき人からいきなり話しかけられた。


「君は、隼人の弟?」


 目が真っ赤で泣きはらしているのが分かった。


「はいそうですが。」


「ちょっと話があるんだけど。今度連絡くれないかな?」と携帯の番号と名前の書いてあるメモを渡された。


 葬儀から1週間が経ち、相変わらず両親は喧嘩している。部屋を掃除し、制服に入っていたハンカチを洗濯しようと取り出すとメモが落ちた。


「そう言えば連絡欲しいって言われてたんだ。」


 早速メモの番号に電話をかけた。


「はい。」


「あ、あの、木佐さんですか?葬儀の時は来てくれてありがとうございました。隼人の弟の多聞です。連絡欲しいと言われていたのでかけたんですけど。」


「やっと連絡来た!待ってたんだよ。どう家は落ち着いた?」


「はい、まあなんとなく。」


「会って話をしたいんだけど、今、樽田公園に出てこられるかな?」


「今ですか。わかりました。行きます。」


 自転車に乗り公園に向かった。まさか今日会うとは考えてもいなかった。そんなに急ぐ話なのだろうか。公園に着くと自転車を止め、中に入る。


 辺りは暗くなっていたので子供達の姿は見えなかった。ブランコのところに木佐さんは座り、ゆらゆらと揺れていた。 


「こんばんは。」


「あ、悪いね。色々と忙しいのに。」


「大丈夫です。基本暇なんで。」


 横のブランコに腰を掛けた。


「話っていうのは?」


「とりあえず自己紹介から、俺は木佐爽平と言います。隼人の親友でした。


 なんで呼び出したか言わなくても隼人のことだってのは分かるよね。本当はご両親に話そうかと思ったんだけど、俺から伝えるより弟の多聞君から話してもらった方が良いかなと思ってさ。」


「わかりました。何か必要なら俺から話します。」


「ありがとう。実は隼人と俺である事を探っていたんだ。この話を聞いたら隼人が殺されたんじゃないかと君も感じるんじゃないかと思う。」


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