告発ゲーム
木風 詩
第1話 入学
8月半ばなのにやけに肌寒い夜だった。
雲ひとつ無く綺麗に輝く星は全てを見ていた。夏休みの誰もいない学校の屋上。1つの影が暗闇に真っ直ぐ落ちていく。鈍い音が響き、何も動かなくなった体は深い闇に落ち、そして頬を涙が伝い流れ落ちた。
8ヶ月後 相馬多聞はこの学校に入学した。
相馬多聞(そうまたもん)は売店に来ていた。先輩達を押しのけてパンを買うわけにも行かず。まるでバーゲンセールのように人がウジャウジャいる場所からはじき出されていた。
「まいったな。」
今日は月に1回の美味しいパンの日、この日だけは購買に有名店のパンが格安で並ぶ。なぜだかよく分からないが校長の知り合いのお店らしい。
みんなこの日はパンを買いに来るものだから、どうやっても混雑する。諦めかけた時に副島海斗(そえじまかいと)が多聞の腕を引っ張り中に入れてくれた。
「海斗サンキュ。よく中までたどり着いたな。」
「まあな、背が低いのはこう言う時に役立つよな。」
海斗は身長が160cmで顔が可愛いのでショートカットの女の子に見える。でも毒舌で見た目と中身のギャップがすごい。俺は身長が180cmあるので一緒にいるとカップルに見えるらしい。
海斗のおかげでパンを4個ゲットし屋上へ上がった。
「多聞はデカイくせにトロいんだよ。」
「そんな事ないって。なんか女の子の比率が高くて痴漢に間違えられたら嫌だから入れなかっただけだよ。」
「多聞なんて両手を上に上げてれば大丈夫だろ。それにイケメンが痴漢するとか思う奴いねえよ。」
「海斗はよく俺の事イケメンとか言うけど、他のやつに言われた事ないよ。」
「どう考えたってそのメガネのせいだと思うけど。黒縁とかじゃなくて銀縁とかにすればいいのに。」
「このメガネが好きなんだよ。いいよどう思われようと。」
「もったいね。メガネ外して髪も上に上げたら相当モテると思うけどな。」
「モテる訳ないだろ。」
「そんな事言ってると彼女出来なくて後で後悔するぞ。」
この学校に来たのは彼女を作るわけでもなく、兄貴が死んだ真相を探りに来ただけだ。本当は友達も作る気がなかったが入学当初から海斗が寄って来て、いい奴だったのでなんとなく友達になってしまった。海斗には俺がのんびりしているように見えるらしい。まあそもそもそんなにテキパキした性格ではないけどな。
まず俺がやる事は彼女を作る事…じゃなくて勉強で良い成績と悪い成績をとる事。その後どうなるかお楽しみだ。
部活をやりたくは無かったが兄貴が在籍していた弓道部に入る事にした。兄貴の親友だった木佐先輩がここに元彼女がいる事を教えてくれた。
事情はよく知らないが兄貴が亡くなった時にはもう付き合っていなかったと言っていた。木佐先輩とは学校では話さない事に決めていたので他人の振りをしていた。
マネージャーって言ってたよな。2年の森川優花。
今日は体験の日だ。メンバーは2年4名、3年3名、とマネージャー2人、1年の入部希望は3人。まあそんなに強いわけでもないしそんなもんだろ。
部室で待っていると女の人が現れた。
「初めましてマネージャーの森川と言います。」
あんまり愛想ないんだな。笑顔もないし。でも、さっそく会えたね…森川さん。
多聞は部活帰りに木佐先輩の家に来ていた。
「会えたか?」
「会えました。なんか普通ですね。」
「まあそうだな。でも隼人はメガネ取ると美人なんだって自慢してたよ。」
「ああ、そうかも写真見た時、美人だった。」
「でもまあ本当に入学してく来たんだな。」
「まあ、レベルそこまで高くないし入るのは簡単だった。」本当は高校も行く気がなかったのだが兄貴の件があったので仕方なく行く事にした。
「おい!この学校レベル高いんだぞ。簡単ってお前。…隼人が死んで8ヶ月ぐらい経つんだな。なんか早いよ。親はどうしてる?」
「兄貴が死んでからギクシャクして離婚したし、俺はさっさと家出ちゃったからよくわからないですけど、母親の姓にしてくれって言ったぐらいで、家を出てから必要以外は交流ないですし。」
「そうか…お前大丈夫か。まあ多聞の問題だもんな。それでいつから始めるんだ?」
「初めの小テストが終わってからですかね。まず俺は小テストで良い点取る所から始めないと。」
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