第二章

第24話

レベルが上がってから一週間が経ち、僕も大分この体に慣れて来た。

それでも、ふとした瞬間に制御に失敗してしまうこともあるのだけれど…。


そんなこんなで、今、僕はダンジョンに実力がどどのくらいなのか、試しに来ている。


ダンジョンに潜り始めておよそ6時間、僕は東京ダンジョン12番、11番の2つを攻略し、現在は10番へと来ている。


東京ダンジョン10番は銅級上位に位置し、以前の僕であれば全く歯が立たない強さだったのだが…。


「こんなに簡単に着くなんて…。」


約2時間で特に苦戦することなく、僕は5階層の門の前まで来ていた。


此処…東京ダンジョン10番のダンジョンの主は通称”スケルトン部隊”と呼ばれている。

元々面倒な魔物であるスケルトンの進化種であるスケルトンナイトが4体、スケルトンウィザードが2体で構成された部隊である。


奴らの魔石は進化前のスケルトンの段階で硬い骨と骨の隙間に存在しており、極めて攻撃が通りにくいと言うのにそれらが戦闘技術を得て、更に連携して攻撃してくると言う…。


しかし、正直今の僕なら行けるような気がする。と言うか行ける。


これより上の層で出会ったスケルトンは全て一撃で仕留められた。

それに上位のダンジョンに上がるにつれて何故だか体が良く動くのだ。


「―――良し…。」


僕は覚悟を決めて門を開く。


そこには武装したスケルトン4体、その後方にローブを身に纏ったスケルトンが2体いた。


『風糸』


相手が武器を構える前に糸を放ち、スケルトンたちを拘束する。


レベルが上がった事により魔力が増え、展開できる糸の数がかなり増えている。

しかし、6体全員を拘束できるほどではない為、後ろに控えているスケルトンウィザードにのみ照準を合わせ、風の糸で拘束する。


突然の事に対応できず、スケルトンウィザード達は何もできずに拘束される。

前衛のスケルトンナイト達も気付くがもう遅い。


『風断・紡』


そのまま流れるように魔法を発動させ、拘束に使った糸を這わせるように風の刃でスケルトンを斬りつける。


放たれた風の刃はスケルトンウィザード達の体を切り刻み、魔石を切り裂いた。


残るは前衛のスケルトンナイトのみサポートをする後衛を失った彼らに部隊としての連携などほとんど残っておらず…。


「さあ…行くぞ。」


僕は腰から夜半嵐を引き抜き、アイテムボックスと『風糸』を展開する。


戦闘開始からおよそ20分、僕は銅級上位ダンジョンを攻略したのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「銅級下位の素材が13点、銅級中位の素材が29点、銅級上位の素材が24点、微小魔石が18点、小魔石が25点、中魔石が53点で合計15万2000円となります。」


香取さんから差し出されたトレーには1万円札が15枚に千円札が2枚乗せられていた。


僕はドキドキしながらそのお金をお財布に仕舞う。


これが…ダンジョンに潜る度に安定して手に入ると考えると…凄くテンションが上がって来た。

どうしよう、大金だ…思わずお財布を握る手に力が入る。


その様子を見ていた香取さんは優しい笑みを浮かべた。


「ふふっ…良かったね、星巳君。それと、レベルアップおめでとう。この前言えなかったから、今になっちゃった。」


そうやって笑う香取さんにお礼を言うと、香取さんはハッとした表情を浮かべた。


「そう言えば、今度、水無瀬さんが星巳君に会いたいって、言ってたよ。」


「教官が…?何かあったんですか?」


「きっと水無瀬さんも祝いたいんだよ、大事な教え子なんだから。」


……教官、本当に感謝してもしきれないな…。

何時か何かの形で恩を返せたら良いんだけれど…。

早く会いたいけれど明日は予定があるんだよな…。


「すみません、教官にはまた今度、こちらから伺いますと、伝えておいてくれませんか。」


そう言うと香取さんは「了解、それじゃあまたね」と言って、自分の机へと戻って行った。


今の時刻は午後3時、お昼時を過ぎ、冒険者協会に居る人の数がかなり増えて来た。


僕は人の波を掻き分けるように外に出て帰路へと着くのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



衝撃のダンジョン攻略から一日、今日は久しぶりに母さんのお見舞いに来ていた。


日曜のお昼ということもあって人の数も少ない。


僕は受付に行き、リハビリ中の母さんを待つために、椅子に座るのだった。


病院はガラガラで椅子もほとんど誰も座っていなかった。


僕は隣に女性が居るソファに腰かけた。


折角ならお見舞いに夕夏も来れたら良かったのだが、以前から約束があったそうなので、今日は僕一人だ。


昨日の内にお見舞いの品も買えたし、準備は万端だ。


――――――――――――

―――――――


――あれ?

何で僕はここに座っているんだ?

普通なら、人に迷惑をかけないように隣に誰もいない席に座るはず…。


それなら何で、隣に女性がいる?

それよりもまず、僕は何で違和感に気付かない。


この人から感じる絶大なまりょ「おや、バレちゃったか。」


そう言って帽子?を脱ぐ女性?


その姿は不定形で、シルエットも、顔も何もかもが分からない。


けど見覚えのある感覚…この人は…!


「初めまして…と言っておこうか、私の名前は”神条 創”しがない冒険者だよ。」


冒険者ランキング日本、世界一位にして冒険者協会の会長。

そして今を生きる人類最古の冒険者。


神条創 その人だった。




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・補足コーナー&色々


・東京ダンジョン10番…銅級上位のダンジョン、東京ダンジョン駅から最も遠い位置に存在するダンジョンで、銅級冒険者最大の壁。これを攻略できれば銀級冒険者になる為の切符が手に入る。


・スケルトン…剣を持った骨。骨が硬い為、隙間を縫って魔石を破壊する必要がある。骨ごと破壊できる場合、特に考えなくて良し。


・スケルトン部隊…魔法で強化や遠距離攻撃が出来るスケルトンウィザードを軸とした6体の部隊。基本的に後衛に居る2体がサポートをして前衛4体で仕留める。と言う非常に厄介な魔物。後衛から潰すのが吉。


・神条創について…私は一体何者なんだろうね?何時か全て分かる時が来る。けどそれはきっと今じゃない。

…ただ一つ言える事は、彼女は人智を超えた存在であると言う事。


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平均的な12000ptのステータス



兵 近次  lv23 NEXT3500pt 21歳


力 240  敏捷 240 耐久 240 器用 240 魔力 240 知力 240


〈スキル〉

【剣術】…lv4


・剣の扱いが上手くなる。


【炎魔法】…lv5


【弓術】…lv3



・ステータスについての補足


第一話にてステータスはレベル1毎に全ての値が10ずつ増えると書いていますが、それはあくまでlv20くらいまでの話で、20を超えてくると値にばらつきが出始め、何かに特化したステータスとなっていきます。

分かりにくくて申し訳ないです。


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