第4話 開幕
俺は一人、先程から廊下で落ち着かずにいた。これから俺が加わることになるクラスの前で、自己紹介のタイミングで担任の先生に呼ばれるのを待っているからだ。
緊張はしているが、留学先の学校では簡単な会話しかできない状態からのスタートだった。それを思えば、会話の通じる日本の学校なんて余裕で馴染めるだろう。
そう自分に言い聞かせながら、その時を待っていた。まあアメリカの奴らは言葉が通じなくてもジェスチャーで身振り手振り伝えようとしてくれる気さくなやつが多かったが、日本人はシャイだからそう上手くいかないんだけどな。
そんな地続きの考えを巡らせているうちに、いよいよ出番がやってきたらしい。担任の先生が教室の扉を開けて俺に声をかけてきた。
「自己紹介の内容はもう考えてある?」
「はい」
「よし。それじゃあ教室に入って」
教室へ一歩足を踏み入れると、俺はクラスメイト達の好奇の視線を一身に集めることとなった。
だが、怖気付いてはいられない。ここはいっそ歳上らしく、気の利いた自己紹介でもしてみるか。
「初めまして。今日から皆さんと同じクラスで学ぶことになった新庄亜蘭です。アメリカに一年いたので、興味がある人ははぜひ気軽に話しかけてください!」
さりげなく帰国子女であることをアピールしつつ、話しかけやすいようにきっかけを提示する。我ながらよくできた自己紹介だ。
クラスメイト達の様子を伺うと、どうやら上手く興味を持たせることができたらしい。話しかけてくれるかどうかは結局他力本願だが、この様子なら問題なさそうだ。
「はーい、これからよろしくね。皆さんも新庄くんが困っていたら手を貸してあげてください」
先生のナイスアシストを受けながら、俺は後ろの空いている席に座るよう促された。
***
始業式を終えて休み時間になると、案の定何人かのクラスメイトが早速俺の席に寄ってきた。
「新庄くん……だったかな?これからよろしくね!」
人一倍元気な声で早速俺に話しかけてきたのは、このクラスでも特に中心人物といった様子の女子だった。
「こちらこそよろしく。それで、君の名前は……」
「私は
静川暁音と名乗った女子は、ミディアムショートの髪が彼女の快活な印象を与えていて、誰の目から見ても美少女と言えた。
そんな静川が自分で「一応」なんて言うから、周りのクラスメイト達は楽しそうに笑っている。彼女はクラスのリーダーであると同時に、ムードメーカーでもあるようだ。
「そうなんだ。じゃあ何かあったら頼らせてもらうよ。委員長さん」
「もう!新庄くんってもしかして意地悪?」
「ごめん、ごめん。静川さんね」
あえての委員長呼びは他のクラスメイト達にもウケたようで、雰囲気を掴むことができた。
それからは、静川に続くようにして他のクラスメイト達も目まぐるしく入れ替わりながら俺に自己紹介をしていった。
積極的に話しかけてくれるのは嬉しいが、正直、一度に20人も名前を覚えられない。それこそ、静川のようなインパクトのある生徒なら別なのだが。
それに、このクラスの人数は全員で40人だから、これから後20人も覚えないといけないと思うと少し気が遠くなる。
俺は、一度に大量の情報をインプットしようとして頭がショートしてしまう前に、一旦その場を離れることにした。
「もっと話したいんだけど、そういえば先生に呼ばれていたんだった。ちょっと席を外させてもらうよ」
クラスメイト達にそう言って、俺は教室を抜け出した。もちろん、先生に呼ばれてなどいない。
さてと。せっかくだから修司のところへ行ってみるか。去年のクラスメイト達が元気にやってるかも気になるしな。
そんなことを考えながら、俺は修司がいる二年生の教室へ向かうのだった。
***
二年の教室は一年の教室の近くだったので今回は自分でたどり着くことができた。修司のクラスは確かここだったか……。
「失礼します」
「え……。もしかして、新庄なのか?」
俺が廊下から教室に顔を覗かせると、真っ先に反応したのは修司ではなかった。
「おう、星見か。久しぶりだな」
「何が久しぶりだな、だ!急に留学すると言い出したかと思えばあっという間にいなくなったくせに」
「いやぁ、それは悪かった。でも、元々決まってたことだったからな」
「まったく、お前という人は……。もう会えないのかと思っていたんだぞ!」
こいつは
今では完全に失言だったと思っているが、前に俺が星見のことを「美少女」と言ってしまって以来、何となく避けられているように感じていた。しかし、どうやら今は俺の帰国を心から喜んでくれているらしい。やや大袈裟すぎるような気もするが。
「お、来たのか亜蘭。新しいクラスはどうだ?」
「ちょうど新しいクラスメイト達に質問攻めにされる前に避難してきたところだよ」
「そいつはご苦労様」
修司とそんな会話をしていると、徐々に他の奴らも俺のところにやってきて再会を喜んでくれた。
「みんなお前に向こうでのことを聞きたがってるみたいだぞ?」
「それが疲れるから避難してきたんだが……」
「そうだったな。……あ、そういえば、もう会ったのか?」
「会ったって、誰に?」
「どうやらその様子だとまだみたいだな。お前鈍感だから、案外すぐには気づかなそうだな」
修司が何のことを言っているのか俺にはさっぱりわからないが、こいつはこういう含みを持たせたことを言うのが好きなのでいつものことだろうと思って聞き流した。
「あ、そろそろ休み時間も終わりそうだし教室に戻るわ。またな修司。あと、星見も」
「おう、またこっちに来て他の奴らとも話してやれよ」
修司と最後に一言交わして俺は教室を後にした。しかし、自分の教室に戻ろうとしたところで星見に呼び止められた。
「そういえば新庄。言い忘れていたが、私は去年お前に言われたことを根に持っているからな?」
「あー……。すまん、悪かったとは思ってる」
「い、いやそうじゃなくてだな!別に怒ってるわけではないというか、嬉しかったというか……」
急に慌て出したかと思えば、何か小声でもごもご喋っていて俺の耳には内容が届いて来ない。時間もないので、俺は一旦この場は手短にすませることにした。
「よくわからないけど、怒ってないならよかった。じゃあ急ぐから、またな」
「あ……」
星見はまだ何か言いたそうだったが、生憎俺としても帰国初日から授業に遅れるような事はしたくないので、星見には悪いがさっさと自分の教室に戻ることにした。
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ハーレム展開ありますがメインヒロインは幼馴染です。これは断言しておきます。でも、サブヒロイン推しも大歓迎なので推しになりそうな方は是非気軽にコメントで教えてください!
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