おまけ ――これで何度目かな。


「結局、あの日、なんで泣いていたの。」



雅樹が言う。

私は答える。


「どうしても知りたい?」



雅樹がうなずく。

私は笑う。


「結局ね、私、雅樹が好きだったのかもしれないね。」



不思議そうな顔の雅樹。

私は笑う。


「自分だけ納得して、笑うのは反則。」



不機嫌そうな顔の雅樹。

私は笑う。


「私の辞書には そんなこと書いてありません。」



苦笑いをする雅樹。

私は笑う。


「そういうのなんていうか知ってる?自己中っていうんだよ」



雅樹がそっぽをむく。

私は笑う。


「雅樹が、私の傘を欲しいって言ってくれたことが、嬉しかった。面白いって言って、私を認めてもらえたのが嬉しかった。」



雅樹がこっちをむく。

私は笑う。


「そんなカッコいいこと言ったかな。」



雅樹が首をかしげる。

私は笑う。


「カッコいい言葉じゃなかった、だからよけいに嬉しかったんだよ。」



雅樹が笑う。

私も笑う。


「最近、好き、っていう感情がわかってきた。」



雅樹が言う。

私は笑う。


「立派な進歩だね。それでは、雅樹くん、何が好きですか?」



雅樹が まっすぐ こっちを見る。

私は驚く。


「俺は、先草ちさとが好き。」



雅樹が言う。

私は また うれし泣き。


「ちさとのこと考えた時の、感じが 好きっていう 感情に一番合う気がする。」



雅樹が笑う。

私が言う。


「どうして?」



雅樹が私を見る。

私も雅樹を見る。


「ちさとの傘が、ほしいって思ったときの、感じと似てるから。」



雅樹が笑う。

私も笑う。



良かったね、2人出会えて。


 幸せっていうのかな、出会えたおもいで。


わけのわからない、貴方が いつのまにかすきだったんだよ。


 自分に対して 向き合ってくれたひとに もっと 早くに気付きたかった。


今、ここに 私たちがいること。いつか、きっと、懐かしく思い出す おもいで。


 そのときも、ちさとは うれしなきをするのかな。


そのときも、雅樹は どうしてってきくのかな。


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