25 はじめての仲間たち

 受付嬢の興奮して話にならなかったので、落ち着くのを待ってから、助けた人たちの現状を教えてもらった。

 みな全員病院で検査を受けており、命に別状はないらしい。

 ちなみにカナリアはすでに回復しており、俺たちといっしょに戻ってきていた。

 ギルドカウンターでの手続きを終えて振り返ると、彼女は順番待ちをしていたようにさっそく声をかけてくる。


「ありがとう、ナイトさん! これは私からのお礼だよ!」


 カナリアはハート型の小さな宝石を差し出してきた。


「いいよ、お礼なんて」


「ううん、もらって。これは『ハートストーン』っていって、ギルドバンドに付けられる宝石なんだ」


 そう言われて自分のギルドバンドを見てみると、たしかに表面にはハート型の窪みがあった。


「その宝石を付けるとどうなるんだ?」


「どこにいても、私を召喚できるようになるの。……実をいうと、パパがもういないっていうのは、なんとなくわかってたんだよね」


「そうだったのか……」


「うん。だって私のギルドバンドには、パパの『ハートストーン』があるの。いくらパパを召喚しようとしても、ぜんぜんできなかったから……」


 しんみりした空気を感じたのか、カナリアは笑顔を作った。


「あ、でももう寂しくなんかないよ。だって、パパとはこれからずっと一緒だもん」


 その手には、キングゴブリンから奪い返した杖があった。

 彼女は決意に満ちた表情で続ける。


「私はこれからもっともっと修業して、自分の力だけで青い火の鳥を出せるようになる。そうなったらきっと、ナイトさんの役に立てると思うから……私をそばにおいてほしいんだ」


 彼女は自分なりに、父親との別れを済ませたのだろう。

 そして生きていくための目標を新しく作り、前に進もうとしているのだろう。


「……そういうことならわかったよ。このハートはありがたくいただいておく」


 さっそくギルドバンドにはめ込んでみると、カナリアの宝石は最初からそこにあったかのような自然な輝きを放つ。


「ありがとうナイトさん。最後に……『なでなで』、してくれる?」


「『なでなで』? それって、頭を撫でればいいのか?」


「うん。しばらく会えなくなっちゃうから……お願い」


 頭を撫でてやるという行為が、異世界でどういう意味を持つのかはわからない。

 でも、そのくらいであればお安い御用だ。

 俺はカナリアの頭をいっぱい『なでなで』してやったあと、別れを告げる。


 そのまま冒険者ギルドを出ると、表の通りでドワーフ三人組に鉢合わせた。

 買い物でもしてきたのか、両手いっぱいに紙袋を抱えている。

 紙袋の隙間ごしに目が合うと、「「「おっ、新入り」」」と仲良くハモっていた。

 中央のドワーフが、さっそく絡んでくる。


「いや、あれだけの活躍を見せられちゃ、もう新入りじゃねぇな。お前、名前はなんてんだ?」


 俺は短く答える「ナイトだ」。


「ナイトか。俺はルーイだ」


 左右のドワーフも挨拶を返してくる。


「そうか、俺はヒューイってんだ。よろしくな、ナイト」


「いい名前じゃねぇか。俺はハルオだ」


 ドワーフトリオは自然な流れで世間話をはじめた。


「しっかし、お前みてぇな異世界人もいるんだな!」


「そうそう、いままで冒険者になりたがった異世界人どもは大勢いるけど、ロクでもねぇヤツらばかりだったんだぜ!」


「スマホとかいうので撮ってばっかでなんの役にも立ちゃしねぇんだ!」


「モンスターが来たらビビって逃げちまうしよ! しかも転んでケガして足手まといにしかならなかったんだ!」


「クエストは俺たちにとっちゃダンスホールみてぇなもんだが、まさか異世界人と踊る日が来るだなんて思わなかったぜ!」


「ナイト、お前は俺たちが初めて認めた異世界人だ! これからもよろしく頼むぜ!」


 ドワーフトリオはガハハと笑いながら、ギルドの中に入っていく。

 とりあえず、仲間と認めてもらえたようで俺はすこしホッとした。

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