09 暴走族を炎上させちゃいました

『チッ、なんなんだこの車!? びくともしやがらねぇぞ!?』


『ナメやがってぇ! こうなりゃとっておきのヤツをお見舞いしてやろうぜ!』


 バットや火炎瓶が効かないとわかるや、両側のオープンカーたちは勢いをつけて体当たりしてくる。


『おらおらぁ、ダークエンペラー名物の鉄のサンドイッチだ! たっぷり食らいなぁ!』


『どうだ、走りながらスクラップにされる気分はよぉ!』


「ぎゃーっ!? ナイトさん、このままじゃ潰れちゃ……! あ、あれ? なんか、ぶつかってきてる向こうのほうが潰れちゃってるし!?」


「さっきも言っただろ。ミッドナイトは世界最強の装甲車よりも頑丈だって。あの程度の体当たりじゃ、蚊に刺されたほどのダメージもねぇよ」


 サイドがへこんで仰天しているチンピラたちを横目に、俺はハンドルを切った。

 右、そして左に。


 それだけで、金属がスクラップと化すサウンドがステレオで届く。

 両脇にいたオープンカーは、金属どころか紙クズのように宙を舞っていた。


『なっ……なんなんだ、なんなんだぁーーーーっ!?』


『ばっ、バケモンかっ!? あの車はぁーーーーーっ!?』


 オープンカーは乗っていた搭乗者を撒き散らしながら道路を横転。

 アスファルトに叩きつけられたチンピラたちは這いずって逃げようとしていたが、あえなく車の爆発炎上に巻き込まれていた。


『うぎゃぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?!?』


 デジャヴ感のある悲鳴を轟かせ、燃えながら吹っ飛んでいくチンピラたち。


「ゴブリンによく似た人間を炎上させたことにより、レベルアップしました」


「わあっ、見て見てナイトさん、アイツら黒コゲになっちゃってるし!」


 オープンカーは前方に吹っ飛んでいたので、眼前の道路では火だるまになったチンピラたちがのたうち回っている。

 合皮や髪の毛が焦げる匂いが鼻をつき、まるで世紀末版の地獄絵図だった。

 しばらくして火は消せたようだが、誰もが力尽きたようにプスプスと白煙をあげながら動かなくなる。

 ぜいぜいと胸や肩が上下しているので、死んではいないようだ。


「しかし、通るのに邪魔だな」


「そのまま通れば『コレクトバキューム』で吸引できますよ」


「生きてるチンピラを吸い込むのか? なんかやだな」


「でしたら『オートストリップ』のスキルを覚醒させるというのはどうでしょう。これは、吸収したものを自動的にパーツごとにバラバラにできます。ゲームで例えるなら『剥ぎ取り』を自動的にやってくれる機能です」


「それはもっとやだよ! 生きた人間を吸い込んでバラバラにするなんて!」


「人間の腎臓や眼球は高く売れますよ? それが嫌なのでしたら『オートストリップ』には、人間だけを残してそれ以外のものを吸引する機能もあります」


「お前は本当に、俺以外には容赦ないな……。まあいいや、そこまで言うならやってみよう」


 キッズの言うがままに『オートストリップ』を獲得。

 俺はミッドナイトのハンドルを操り、道に倒れているチンピラどもを轢かないようにして跨ぎ越えた。


 するとおなじみの吸引音がして、『焦げた特攻服』『シルバーアクセ』『タバコ』『革のサイフ』などのアイテムがリストアップされていく。

 通り過ぎたあとをバックモニターで確認すると、そこには生まれたままの姿になったチンピラどもの姿があった。

 これにはアダルトも大爆笑。


「あっはっはっはっはっ! すっぱだかになっちゃってる! チ○コ丸見え! あっ、見てみて! 人が集まってきてるし!」


 騒ぎをききつけて、歩道には人だかりができていた。

 誰もがスマホを手に、事故現場の状況をカメラにおさめている。

 チンピラどもの生き恥のような姿が、インターネットの海に放流されるのも時間の問題だろう。


「ちょっとお灸が効きすぎてるような気もするけど……まあ、これでヤツらも少しは大人しくなるだろ」


「あたしにへんなことしようとしたんだから、そのくらい当然だし!」


「ゴブリンによく似た人間をインターネットでも炎上させたことにより、レベルアップしました」

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