8ページ 催眠術にかかってたフリ
「テメエ! 俺の妹に何してんだ!」
声を上げて割り込む。
男は悠人に気が付くと慌てて立ち上がり、逃げる様に玄関を出て行った。
悠人は玄関を勢いよく閉める。
振り返ると未歩が混乱し、両手の拳を小さな胸の前で合わせてオロオロとしていた。
「え? あれ? お兄ちゃん催眠術にかかってたんじゃ」
未歩は戸惑う。
だが、今は未歩の無事を確認する方が先決だった。
「未歩の方こそ大丈夫なのか!?」
悠人が尋ねると、未歩は少しだけ後ずさりをしたけれど、コクッとうなずいた。
その様子から察するに特にケガなどもしていないようだったので、悠人はホッと一安心をしていた。
しかし、そこでようやく未歩は気づく。悠人が催眠術にかかっていなかったというウソだ。
「ごめん。催眠術にかかってたフリをしてたんだ」
悠人は謝る。
未歩は訊く。
「じゃ、じゃあ。オムライスに字を書いたの知ってるの?」
悠人が頷くと、未歩は顔を赤くして頬に手を当てる。
「何よ。わたしの事騙して、酷……」
言いかけて未歩は、泣き始めた。悠人にすがりつく。
「怖かったよ、お兄ちゃん」
そう言って、ワンワン泣いた。
そんな姿を見て、悠人は罪悪感でいっぱいになる。
未歩は泣きながら続けた。
お兄ちゃんができて嬉しかった。
でも、お兄ちゃんは、わたし達のことが嫌いみたいで、いつも避けられているのが辛かった。
だから仲良くなって、本当の家族になりたかった。
お兄ちゃんに甘えたかったけど、自分が近づくと怖い顔をしていたので、自分は気持ちを出さないようにしていたと。
料理中に、天使だ。
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