第162話 闖入者
「嘆かわしいわね……」
ルビアがため息をついた。
ダミアンを喪い、まさかこうしてイシス達に反旗を翻されるとは。
寂しい思いをする反面、恩知らずな二人に怒りがこみ上げる。
「もうあなた達なんていらないわ。ティタン様、お願い。あいつらを処分して頂戴。もういらないから、殺して構わないわ」
「わかった」
その言葉にティタンは大剣を持ち、駆け出す。
「ティタン様のお相手なら俺達が」
赤髪の双子が剣を手にティタンへ向けて走り出す。
セシルが二人のサポートをするために魔法を唱え、防御壁を作り出した。
「援護は任せて!」
余計な邪魔が入らないように結界を張ろうとしたその時、突如皇宮が揺れた。
「なんだ、地震か?!」
揺れる地面に皆が戸惑う。
予期せぬことに立っていることも難しい。
「きゃあっ!」
体を縛られてバランスを保てないレナンは、思いもかけずバルトロスに寄りかかってしまう。
バルトロスも咄嗟に支えてくれたが、レナンの胸中は複雑だ。
(うぅ、中身は違うのに)
それでも顔も体もエリックなのだ。
そして揺れに立っていられず、仕方なく体を預けたままになってしまう。
「ミューズ!」
同じくバランスを崩すルビアの元にティタンは身を翻して駆け寄る。
しばし揺れが続いた後、今度は爆発音は鳴り響いた。
「何だこれは?!」
ヴァージルは叫んだ。
皇宮には頑丈な結界が張ってあり、ここも特別頑丈に作られている。
だからこのような事態になるのはおかしい。
一体どのようなものに攻撃されているのか。
派手な音がして、天井に大きな穴が開く。
「マオ!」
墜ちてくる瓦礫を見てリオンは咄嗟にマオの体に覆いかぶさる。
だが不思議と衝撃は来なかった。瓦礫は人に当たることなく、粉々になって降り注ぐにとどまったからだ。
「遅くなったが、俺様の登場だ。皆無事か?」
開いた天井から入ってきた人物を見て、帝国側に戦慄が走る。
「貴様はロキ、そしてそっちは剣聖シグルドだな」
ヴァージルは苦々しい表情で二人を睨みつける。
「帝国にも俺様の名声が届いているとは、光栄なことだ」
ロキは胸を張り、自慢げに笑う。
「バルトロス陛下、懐かしいですな。顔を合わすはアカデミー以来かな?」
シグルドは剣を抜き放ち、軽口を叩く。
「あなたが皇帝バルトロスか。早速だが、皆を返してもらいたい。皇子達ももうこの世にはいないし、大人しく投降する事を推奨する」
キールは淡々とした表情でそう告げた。
「馬鹿な、アシュバンとシェルダムが?!」
ヴァージルは思わず立ち上がる。
「アシュバン皇子は俺様が燃やした。すまんが骨くらいしかないかもな」
ロキは悪びれもせずに言い放つ。
「シェルダム皇子は俺が止めを刺した。今頃グウィエン殿がアルフレッド陛下に報告してくれているだろう」
ロキとキールの言葉に動揺を隠せない。
「兄様達がやられた?」
イシスも複雑な気持ちだ。
けして悲しいわけではない。そんな事を思う程親しくもなかった。
だが身内の死と言うものは思った以上に衝撃を受ける。
「嘘をつけ。お前達みたいなものにそんな事が出来るわけ……」
「出来るでしょうね。結界を張った皇宮をこんなにもあっさりと壊せたのだから」
バルトロスが前に出る。
「エリック王子、何故そちらに?」
事情を知らないロキは訝しむ。
「エリック兄様の中には、バルトロスの魂が入っています。そしてバルトロスの体の中には、その兄ヴァージルの魂が。ヴァージルの肉体はとうの昔に病で失ったそうです」
リオンが手短に説明する。
「そうか、ならばこちらに来て良かった」
ロキは魔力を集め、バルトロスに目をやる。
「バルトロス、俺様が相手するぞ。魔法に関することで俺様が負けることなどない」
自信たっぷりのロキをバルトロスは嘲った。
「お前ごときにやられるものか」
バルトロスにはエリックの魔力がある。
たとえロキがどれだけ強くても一人分の魔力など大したことない。
「では試してみようじゃないか。どちらが上か勝負だ」
不敵に笑うと真直ぐにバルトロスへと向かっていった。
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