第2章 食べ歩きとドラゴン

第6話 麓の街、再び

「あ~クシヤキ食いてえ~。」


 アタイはクシヤキを食べれないことにイラついていた。あの噛むごとに広がる肉汁と甘辛いタレのコントラストがが忘れないでいた。


「待てよ、ひょっとしたら……。」


 アタイはいいことを思い付く。クシヤキは人間が作り出したものだ。それならば、他にもうまいものがあるんじゃないか?それに気づいたアタイはクシヤキ代わる新たな味覚に出会うため再び麓の町に向かうのだった。




「やっぱり前とは違うんだな……。」


 久しぶりに来た町の様子は大きく変わっていた。やはりあの時は祭でいつもより賑わっていただけでそれに比べれば賑わいは少なかった。といっても閑散としているわけでなく、単に出歩く人の数が減った感じだ。


「さて、どうするかなぁ。」


 そう呟きながら歩いていく。何となく人が多い方に進んでいこうかな。と思ったそのとき。


「やあ、祭で串焼きをお嬢さん、久しぶりだね。」


 と後から声をかけられた。


「おっちゃん、誰だ?……ああ、思い出した。クシヤキを聞いてきた髭のおっちゃんか。」

「はっはっは。髭のおっちゃんとはな。確かに私は髭のおっちゃんだ。」


 アタイの物言いに笑うおっちゃん……。あ、いいこと思い付いた。


「髭のおっちゃん。なんか旨いもの知らないか?」

「ふむ、実は私もそう言うものを探していてね。」

「そうか……、なんか見つけたら教えてくれ。」


 アタイは肩を落として言った。


「そうだ、これから行こうと思っている店があるんだが行ってみないか?」

「……旨いのか?」

「私も初めて行くから保証はできないがそれでもよければ。」


 アタイは少し考える。このおっちゃんを信用していいのだろうか?判断基準はないから素直に聞いてみよう。


「おっちゃんは何でアタイと行こうと思ったんだ?」

「ふむ、そうだな……ここで会ったのも何かの縁だし、それに君が食べていた串焼きは確かに旨かった。そして君の舌でこれから行く店の味に対してどういう感想が聞けるかが楽しみでね。どうかな?なんなら君の食事代も私が払ってもいいと思うくらいだ。」

「そ、そうか……。」


 悪意があるのではなさそうだな。さて、どうするかなぁ。


「うん、今回はお言葉に甘えるとしよう。」

「そうか。どんな感想が聞けるか楽しみだ。」

「アタイはフィアだ。」

「私のことはグローケンと呼んでくれ。」

「よろしくな、グローケン。」


 こうしてアタイはグローケンと握手をし、旨いものを食わせてくれる場所に向かった。

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