赤竜神祭のいわれ

 その昔、ボルジィート山の中腹の洞窟に1頭の赤い竜がどこからともなく現れ住み着いた。その赤い竜は近隣の国を滅ぼした竜といわれたため冒険者たちはこぞってその赤い竜を倒しに向かっていった。だが、冒険者たちはほとんど帰ってこなかった。


 ある日、このボルスの町で一番の腕利き冒険者もその赤い竜に敗れたため、町を移転するかの話し合いが持たれたところ、当時の町長の娘が「私が生け贄としてその竜のところに赴き、町を襲わないように願いましょう。」と言い、町長も渋々ながら承諾をし、娘は冒険者と共に赤い竜のところに向かっていった。竜の巣についた娘は赤い竜に「町から毎年生け贄を1人お送りします。なので町の者を襲わないでください。」と懇願すると、赤き竜は「生け贄は要らん。その代わり毎年家畜を一頭貢ぐよう。」と答え、娘はそれを受け入れ毎年赤き竜に貢ぎ物を送る祭が始まった。


 祭が始まり百数十年経った頃、夏が寒い年があり全国的に飢饉の年があった。家畜も辛うじて残しているものしかおらず、今年は貢ぎ物をどうするか話し合われた。その話し合いの最中に当時の町長の娘が「私が生け贄になって町のみんなを守る。」と言って飛び出してしまいました。


 飢饉の中での貢ぎ物と町長の娘の出奔で話し合いが纏まらず、町長の娘がいなくなった翌日、話し合いは町長の娘を誰が救助に行くかで紛糾した。なぜなら彼女が行ったと思われる場所は今まで誰も討伐できなかったドラゴンの巣である。今いる冒険者では荷が重すぎるので向かわせることができなかったのだ。だが、町長の娘を見殺しにはできない。なのでどうするか難しい判断が必要だった。話し合いは進まず、夜中まで行われていた。その時、ものすごい風切り音が聞こえてきた。


 何かとその音が聞こえた町の広場に向かうと、そこには大きなオークの死体が2体置いてあり、その傍らに町長の娘が立っていた。


 町長の娘に話を聞くと、赤き竜に事情を話すと「別に捧げ物はいらん。今後は来なくてもいい。」と言い、オークを2体くれたと言った。オークにも同様のことを書いた赤き竜の書簡が付けられていた。


 町長は赤き竜のお心遣いに感謝をし、ボルジィート山の赤き竜を赤竜神と崇め、毎年オークを頂いた日を含む3日を赤竜神祭として赤竜神に感謝をする祭を行うことになった。





 ボルスの町 赤竜神祭のいわれより抜粋

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