第6話 王太子殿下「わたしはエレノアさんが好きだ」※ざまぁ回
「王太子殿下!わたくしたち絶好調です♡」
アンが媚び媚びの猫撫で声で言った。
「そうは見えないが……。チョコを食べてるのか?エレノアさんの分は?」
「えーと……。エレノアさんの分はありません。エレノアさんは急に王宮に来られましたから」
「解せんな。エレノアさんは今日が初めての人だぞ。彼女の分がないのは問題だ。まさか貴族学校の令嬢みたいに、仲間外れにしようとか幼稚なことを考えているのか?」
「滅相もございません!エレノアさんの分もすぐご用意します!」
ナタリーは慌ててチョコをエレノアに配った。
「どうぞ♡」
(まだチョコあるんじゃん……)
エレノアは手のひらの返しように呆れてしまった。
「で、作業は進んでいるのか?」
「殿下、作業については——」
キャサリンが発言したが、
「そなたには聞いていない。エレノアさんに聞いている。私はエレノアさんにこの仕事を任せたのだ」
エレノアは正直に言うことにした。
「作業は進んでいません。各自に仕事を割り当てようとしましたが、どうやらお三方はわたしのことが気に入らないようで……」
「気に入らないだと?エレノアさんのような才能ある女性に嫉妬していると言うことか?3人とも、エレノアさんが気に入らないのか?」
「誤解ですわ!わたくしたち、エレノアさんのことが大好きです♡」
3人は声を合わせて言った。
どの口が言っているのかと、エレノアは呆れ果てた。
「わたしのことは無能で陰気臭くて、殿下と一度踊っただけで溺愛ルートに入ったと勘違いしていると……」
「そんなこと言ってませんわ!」
「なるほど。3人とも、王宮から【追放】する」
「そんな!お許しください!」
追放宣告。
3人は泣きそうになっていた。
「わたしの大切なエレノアさんを傷つけるそなたらは許せん。そなたらは元王宮秘書官だから優秀だと思って部下につけたが、とんだ見込み違いだった。ただの性悪女だとわかった。そなたらよりもエレノアさんのほうが何億倍も価値がある。それに、そなたらは大きな勘違いをしている。溺愛ルート?とは何のことか知らんが、わたしはエレノアさんが好きだ」
突然の告白。
(今、わたしのことが好きって言った?)
「追放されたら生きていけませんわ……」
3人は泣き出した。
行き遅れの令嬢が王宮から追放されたとなれば、実家に帰っても居場所はないだろう。
「そなたらの自業自得だ。荷物をまとめてさっさと出ていけ!」
ヘンリー王太子殿下は、冷たく言い放った。
3人は泣く泣く王宮から去って行った。
「よし。害虫は駆除した。また別の部下をつけよう」
「でしたら、メイドのマリアと妹のグレイスと一緒にやらせてもらえませんか?ずっと3人でセクシィを作ってきましたから」
「わかった。何でもエレノアさんの好きにしていい」
(さっきの好きってどういう意味だろう?広報官として好きって意味なのかな?きっとそうだよね……)
「エレノアさん、今日、夕食でも一緒にどうだ?」
「え?」
突然のお誘いに戸惑うエレノア。
「嫌か?」
「嫌じゃないです……」
「では夕方に使いをやろう。エレノアさんとの夕食が楽しみだ」
まるで子供みたいにヘンリー王太子殿下は笑った。本当に楽しみらしい。
今日は無事に家に帰れるかしらと、エレノアは不安だった。
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