第2話 速報
赤いのは大型装置の"とある部分"を示して言う。
置いたら一体どうなるんだ!?
せっかくだしちょっと聞いてみるか。
「置いたらどうなりますか?」
『"特別仕様のL.S."へと交換させて頂きます。新たな機能と共にデータは全て一瞬で引き継がれるため、今まで通りにすぐご使用頂けます』
総理がR.E.D.になっていきなり無料配布されたこの"L.S."。
正式名称は"Linked Someone"。
今まで以上に"誰かと繋がろう"をコンセプトとしているらしい...
腕時計のような見た目でも、とんでもない機能を有している。
起動すると、ホログラムディスプレイが幾つか展開され、それに触れて操作が出来る。
今までのような画面を介さず、空気上に触覚を感じる技術が使われている。
前々から研究は続けられていたようだが、一気に急発展を遂げ、今に至る。
ARやVR技術も付いており、まさに何でもアリ。
きっとまだまだ多くの機能が潜んでいると思う。
専門家が見ても、複雑すぎて分からないという。
充電に関しては、血液の流れに応じて発電するって意味が分からない。
そして腕に付けてはいるが、実感をほぼ感じないほど皮膚にも優しく、皮膚科医でさえ"長く付けていても大丈夫だ"と。
一般販売はされておらず、"一人1個"までという謎の制限が付けられている。
この約3か月間にして、一瞬で国民の約9割以上を依存させた。
それほど今までと違った、画期的な簡易次世代デバイスだった。
そんなL.S.をさらに"特別仕様"へと交換?
一体どんなモノに変わるんだ!?
...つっても選択肢は無い、か。
言われた通り、大型装置の"示された部分"にゆっくりと置いてみることにした。
すると、すぐさま俺のL.S.は沈むように中へと吸い込まれていく。
おいおい、大丈夫だよな、帰ってこないとかないよな!?
不安に思っていると、30秒も経たないうちに"何か"が大型装置の下から排出された。
赤いのはそれを取り出すと、こちらへと差し出した。
『こちらが"新仕様のL.S."となります。中の項目に"UnRule〔EL〕"が入っておりますので、ご確認をよろしくお願いします』
これが...
前のような透明なメタリック感から、時間によって色がコロコロ変わるような少し派手なモノとなった。
謎の特別感を感じる。
さっそく右腕へと持っていくと、感知して自動で纏わりついた。
前のよりさらに装着の違和感無くなった...?
血液の流れを感じたのか、"七色の光の線"が幾つも内部で走った。
前までは"白い光の線"だったけど、ここも変わったのか。
そして確かに"UnRule〔EL〕"というのが追加されていた。
この"〔EL〕"ってのはなんだ?
これも一応聞いておこうか。
「すみません、〔EL〕というのはなんですか?」
『ELECTIONNERの略です。事前予約で当選された100名の方々のみ表記されていますよ』
え、これって"100人"にしか当たらないのか!?
SNSを見てみると、まさかの"当たらなかった"という声ばかりだった。
どうやら来店時にしか当選かどうか分からないようだ。
「〔EL〕だと他にもまだ何か違うところはあるんですか?」
『私共もこれ以上は詳しく知らないのです。申し訳ございません』
あくまで知るのは政府のみってか...
んじゃ、この後触りまくってみるしかねぇな。
当選部屋から出ると、また"あっち側"から多くの目で見られた。
んな睨まれてもな...
俺だってよくわかんねえし。
少し嫌悪感を感じていると、"とある人物"から急に通話がきた。
「行くんだったら言ってくれれば良かったのに!」
ちょっと怒っているような、いつもの声。
昔っから腐れ縁で同い年の"ユキ"だ。
おそらく俺の位置をGPSで確認でもしたんだろう。
つっても、俺もユキの位置知ってるんだが。
「なんか研究室にいるっぽかったから。邪魔したらわりぃし」
「逆にルイの話聞く方が研究進むから、気にしなくていいって」
ユキは卒研がキリのいいとこまで行ったらしく、今からこっちに来ると言い出した。
他愛もない会話をしつつ、M.I.O.内にある"Pasta Dream"で会う約束をした。
数回行った事あるぐらいで、最近出来たばかりのパスタの店。
そういや、ユキと外食するの久しぶりか?
会った時は大抵どっちかの家でゲームや卒究の話をしまくった後、料理するかドローンで頼んだりするし。
そんなこんな考えていると、8Fの約束の場所に先に着いてしまった。
せっかくなら中に入って"あの場所"でも取っといてやるか。
前に来た時にいいなと思った場所。
そう思った俺は先に"Pasta Dream"へと入り、一番奥のお気に入りの場所を確保した。
まだ朝10時な事もあってか、人はほぼいない。
ここなんか好きなんだよな。
"先に入って良い場所取っといたぞ"とユキへメッセージを送信と。
待っている間に"ある事"をしていると、店内ロボットに連れられてユキが来ていた。
「何やってるの?」
「ん、あぁ、今金稼いでる」
「え? お金?」
そう、ここの席だけ特別だ。
なんと、店内なのにお金を稼ぐことができる。
この特殊なPCを使って、他店舗の店内ロボットへ正確な指示を送るとくれる仕組みだ。
もちろん正確じゃなかったらミスとカウントされて貰えないんだけどな。
けどミスは幾らしてもよく、まだ学習の薄いAIや調子の悪いAIを助ける事に意味があるようだ。
これやってくれる人がどれくらいいるのかは謎だけど。
「なんか調子良くて5000円行ったんだけど」
「こんな短時間で!?」
「あぁ、今日も奢ってやる」
ユキは嬉しそうな顔で「いつも悪いね~」と言う。
全額いつも俺が払ってたりするんだけど、その分ユキには色々と協力してもらってる。
研究やスキマ時間の仕事、料理等。
そして、俺と同じくらいユキもゲーム好きだったりするから、パーティ組んでやったりもするわけで。
もうPCは置いといて何か頼むか。
「んじゃ、俺はこれで」
「ん~、私はこれ」
それぞれ注文したメニューを店内ロボットが持ってくる間、俺の持ってる新型L.S.について話題になった。
「さっきから思ってたけど、ルイのL.S.なんか変わった?」
「これな、"UnRule"もらいに行ったら事前予約者の中で"当選した100人だけ"もらえるんだってさ」
「へぇ~、そんなのやってるの?」
「なんかよく分かんないけどな。あの時ユキも事前予約一緒にしたよな?」
「うん、したよ。食べたら私も貰いに行こうかな」
「貰った後、試しに俺の家で一緒にやってみようぜ」
ユキは俺の提案に「いいね~、やるやる~」と凄い乗り気だった。
俺はこの後が楽しみで仕方なかった。
新しいゲームをやる時ってなんでこんなに高揚するんだろうか?
店内ロボットによって目の前に置かれるペペロンチーノ。
俺はパスタの中で一番ペペロンチーノが好きだ。
ユキは、きのこと野菜の和風パスタにしたみたいだ。
昔っから和風系が好きなんだよな、ユキは。
さぁて食べますか。
フォークを手に取り、いざ麺を上げようとした時、
『速報です。AI総理大臣R.E.D.は"新たな経済対策"を発表しました』
ん?
急になんだ?
突然L.S.のホログラムディスプレイが幾つか勝手に展開された。
この時、俺たちは何も知らなかったんだ...
最新AIの"R.E.D."が総理大臣になるとはどういうことなのか。
新たな経済対策が"一体何を意味"しているのか。
そして、このL.S.が普及していった"本当の理由"。
これから始まる"AI総理による日本大虐殺"。
もう絶対に逃げる事も、目を背ける事も出来ない。
こんな日本を終わらす事件を...
真犯人が...
"アイツ"だったなんて...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます