フォールン・イノベーション -2030-
Mr.Z
第1話 当選
今日受けるリモート講義はこれで終わりか。
ARの画面を閉じ、玄関へと向かう。
靴を履き、外に出ようとした瞬間、
『配達が完了しました』
突然L.S.に簡易通知が走る。
朝の適当な時間にしといたけど、タイミング良すぎだろ。
配達ドローンが仕事を終え、気持ちよさそうに飛ぼうとしている。
中に入っているのは、たぶん昨日買った服。
最近はほぼ全部の店でこうしてドローン配達をしてくれる。
新しい総理のR.E.Dがしてくれた政策の一つで、荷物を持たなくて済むからクソ便利。
時間はいつでも指定でき、少し多く払えば買ったその日のうちにも届けてくれる。
ほんと最近はいろんな場所でAI化が促進された。
俺が知ってるのもほんの一部で、他にもいろんな場所でAI化されてるんだと思う。
目の前で走ってる"コレ"だって、R.E.D.が総理に就く3か月前は無かったし。
そう思いながら、俺は止まっている方の"黒いコレ"に乗る。
事前に指定した場所を送っているから、後は乗るだけって感じ。
こんな"無人自動運転タクシー"に乗れるようになるのは、日本ではもう少し後になると思ったけど今じゃ普通だもんな。
しかも格安だし、今までの運転手たちはどうなったんだ?
♢
『ご利用ありがとうございました』
料金も事前に支払っているため、降りる時もスムーズ。
ちなみに、この無人自動運転はタクシーだけじゃない。
今や全部の車が無人自動運転化されている上に、事故もまだ聞いたことが無い。
警察が暇になるほど事故は減少してるらしく、マンガやゲームで見てきた近未来化が異常に進んでる感がある。
秋葉原の大型施設M.I.O.に入ると、日曜だからか多くの人がいた。
ネットではなくリアルでしか手に入らない物を置いてたりと、いろんな店も手を尽くしてる。
そんな俺も"リアルでしか手に入らないモノ"があるから"ここ"に来たんだけど。
今回発売された"UnRule"は初の"L.S.専用ゲーム"で、XR技術を使った新感覚の非日常が"東京でのみ"楽しめると告知されまくってた。
まずは東京で様子を見て規模を大きくしていくらしい。
あれだけ告知はされてはいたが、映像は何も公開されておらず、まさかの"日本政府開発"とだけ知らされている。
東京って物価も家賃も高いけど、その分こういった最新の事にすぐ触れられるのはいいんだよな。
なんでか知らないが、昨日はめっちゃ楽しみで興奮して寝られなかったし。
叩かれまくるのか、めっちゃ凄いのか、どっちにしても"これ"は持っておくだけでなんか謎の価値ありそう。
10Fのゲームコーナーへとさっそく行くと、
...ん?
なんだあれ?
あんな"ゲームに出てきそうな人型アンドロイド"がゲームの販売やってんの!?
大量の人を捌いていく"現実離れした姿"がそこにはあった。
M.I.O.って、最近あんなの置いてんの!?
近くに行って見てみると、人と相違無い対応をしており、中に誰か入ってるんじゃないかとさえ思えてきた。
いや、本当は入ってるんじゃないか?
疑問に思って凝視を続けていると、奥の方から"赤い何か"が近付いてきた。
"それ"は目の前で止まった途端、
『"三船ルイ様"ですね。お待ちしておりました』
突然お辞儀をされ、つい俺も「えっと...どうも」と言ってしまった。
他の"それ"とは違う雰囲気を醸し出す、この"赤い人型アンドロイド"。
周りを見ても、他に赤なんて"1体も存在しない"。
なんで俺だけ"これ"が対応するんだ?
ってか、一瞬で俺だと分かるのか!?
最近の認証システムって怖いくらいだな...
『こちらにどうぞ』
そう言うと、赤いのは"事前予約当選者専用の部屋"へと案内し始めた。
へぇ~、事前予約者はこっちなのか。
適当に歩きながら、横目に"あっち側"を見てみると...
"一般販売専用の部屋"に並んでる多くの人から、"なんだアイツ"と言わんばかりの目を向けられていた。
俺ってただ事前予約しただけの人間だよな...
なんであんなに睨まれるんだ...
気になりながらも"事前予約当選者専用の部屋"へと入ると、
俺と赤いの以外誰もおらず、奥に1個の"赤い冷蔵庫のような大型装置"が置かれていた。
これはなんだ!?
『三船ルイ様、"ここ"にご所持のL.S.を外して置いて頂ければと思います』
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