第7話 間違い

 今日もいつものように店は開店する。


 お客さまは多くはないがそれなりの数が来てくれた。


 私はそんな店内を忙しく動き回る。


 そんな中、ふとある事に気がついた。


「あれ? 昨日きたあの子がまた来てる?」


 私は店の入り口を見るとそこには昨日見た少女ともう一人の少女の姿があった。


「いらっしゃいませ」


 私は彼女に挨拶をする。


「あ、あの、ここに来ればおこの子に見せてもらったイケメンのお兄さんに会えると聞いてきたんですけど...!」


「お兄...さん?」


 私はキョロキョロと辺りを見回す。


 今の店内に男性はいない


「あ、お兄さんというのはお店のマスターさんであるあなたのことです」


 と、恥ずかしそうに言う彼女。


 ああ、そういうことね。


「ごめんなさい。僕は女の子なんだ」


「えっ!? そうなの!?」


「ごめんね、よく間違えられるんだ」


「そっかー、残念...」


 彼女はガッカリしている様子だった。


「それでご注文は?」


「あ、はい! えっと...」


 彼女はメニュー表を見ながら悩んでいた。


 よく分からなかったのか、少女は口を開いてこう呟いた。


「...コーヒーで」


「あの〜、注文内容がそれではちょっと困るのですが...」


「じゃあ紅茶で」


「いや、それも種類がありましてですね」


「ならカフェオレで」


「...分かりました。少々お待ち下さい」


 私はキッチンに戻り、自分好みのカフェオレを用意して戻る。


(口に合うといいけど...)


「はい、どうぞ」


「ありがとう」


 彼女はゆっくりとカップに口を近づけ、一口飲む。


「ん、美味しい」


「良かった」


「あ、あの、名前だけでも教えて貰っていいですか?」


「僕? 僕はツカサ。この喫茶店のオーナー兼マスターさ」


「あ、あの、わ、私は...」


 彼女は少し焦りながらも自己紹介を始めた。


「え、えと、私は、ショウカと言います。


「へぇ〜、良い名前だね」


「え、えと、ありがとうございます...」


 それから彼女は自分の事をポツリポツリと話し始める。


 彼女はこの町に住んでいて、今は学校に通うために一人暮らしをしているらしい。


「あの、良ければ連絡先を教えてもらっても良いでしょうか?」


「うん、構わないよ」


 私はポケットからスマホを取り出して彼女と連絡先を交換しあう。


「これで登録完了かな」


「はい! ありがとうございます! 私、頑張りますから応援しててくださいね! 必ずまた会いに行きますから!」


「うん、待ってるよ」


(何を頑張るんだろうか? まあいいか)


 こうして私はまた1人お客さまと知り合うことが出来た。


 ちなみにいつもの常連さんの方の名前はヨウカだと言う事を後になって知る事を、この時の私はまだ知らないのだった。

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