第65話
彼女たちは私に気付いて適当に挨拶をして腰を下ろした。見慣れない顔という表情を浮かべていたので、私は川島ですと軽くお辞儀をした。すると彼女たちも順番に名前を言う。続けざまだったので今一つ覚えきれなかった。普段とは少々勝手が違う空気が漂い始めた頃、
「健ちゃんの彼女?」と誰かが訊いた。
「いや、教習所でたまたま知り合ったというか」
小池君は彼女たちにそう説明した。間違ってはいない。
「そうなんですよ。それで豚が居るって聞いたものだから見せてもらおうかなって」
私もここに来た理由を話す。ひとまずは皆納得した様子だったが、真ん中の子が急にニヤ付き始めた。
「健ちゃんボインが好きだから、それで呼んだのかなって思っちゃった」
それを聞いて両隣の子たちも一緒になって笑い始めた。
「んなわけね~だろ」と小池君が慌てて否定する。
「だって、私達三人のを合わせても負けそうな感じだもの」
そこでまた笑いが起こる。
胸への視線は私も感じ取っていた。だから私もそれとなく彼女たちの胸を見たりした。あっても中学の時の梨絵くらいかそれ以下、中にはブラも不要だろうという子もいた。アピール感の強いピッタリ目のTシャツは彼女たちには目立つことこの上ないのだろう。
「それで川島さんはどこの高校?」
「サクジョです」
それを聞いて彼女たちは、ふ~ん、と納得したように頷いた。なんだろうこの雰囲気。
「あなた達は?」
「私達は
その響きに一瞬頭がクラッとなった。
聖女。正式名称は
私の通う桜高とは雲泥の差。制服も清楚を強調するかのセーラー服で、私達の野暮ったい制服とは別物。桜高はかつて荒れた時代もあって、他の生徒からは除外を示すかに『削除』などと皮肉られたこともあったらしい。
同じ目線で座っているのに急に向こうの三人が高く見え始めた。さらに悔しいことに聖女と聖子カットがこの上なくフィットしているようにも映る。
「で、ついでに宿題も見てもらうとか?」
「そ!そうしてもらったら健ちゃん頭良いから」
サクジョと聞いてからの変わりようは凄く、まるで胸の大きい女はバカだとでも言いたいようにも取れる。
「それで教えてもらったお礼におっぱいをちょっと触らせるとか―――」
イヤ~ッと隣の二人も大うけだ。
「おい!いい加減にしろよ」
小池君もこの一言には耐えられなかったようだ。もちろん私も。
これから用事があるのでとジュースにも手を付けずに腰を上げる。それから部屋を出る際にこう言った。
「今日はありがとう。おかげでしっかり見られたわ。メス豚をね」
私の言葉に三人から笑顔が消えた。
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