第43話

 夏休みには海に梨絵と二人で出掛けた。本当なら順ちゃんと出掛けるはずだったと電車での長旅の途中何度も考えた。費用は貯めたお小遣いとアルバイトのお金。でも出掛ける間際に餞別と言ってお母さんが五千円くれた。


 厳しいのに無理して。ありがとうお母さん。


 泊りなので内緒で出掛けるのは止めることにした。すると高校生二人を心配したのか、費用の手助けをしたかったのか、梨絵のお父さんが親戚の民宿の手配をしてくれた。民宿のお手伝いもするという条件で宿泊代がさらに安くなったのはありがたい。



「おばさんお久しぶりです」


 久しぶりに見る梨絵に親戚のおばさんは目を細める。


「しばらくぶりやね~!まぁ~、ちょっと見ん間にこんなに大き~なって―――」


 梨絵に紹介され私も頭を下げる。それからお手伝いの段取りなどを聞かされた。忙しい時期なので私達の他に地元の高校生もアルバイトに来るらしい。どんな子が来るのかちょっと楽しみ。話が合うといいな。


 お手伝いまでには時間もあるので遊んでらっしゃいと言われて私達は海へと繰り出した。海までは歩いても五分と掛からないそうだ。それに海の家は高いからと民宿で着替えて教えられた場所を目指す。


 水着姿で歩くなんて海辺ならではの光景だ。天気も良くて露出した肌が既にジリジリしている。どこからともなく吹く潮風が鼻をくすぐる。海の香りだ。


 開放的な海で新たな出会いもちょっとだけ期待していた。


「どこから来たの?」


 ビーチマットを広げてくつろいでいると後方から定番とも言えるフレーズが耳に届く。相手も二人で私達を物色するように目を向ける。視線を胸に感じる。やはり見るところはそこかと、ちょっと突き出して見せる。こういう時のバストは武器だ。


 私は黒のストライプの入った白、梨絵は花柄模様のグリーンと共にビキニだ。ビキニに着替えた途端、梨絵は少し恥ずかしそうにしていたけど、こんな海辺でスクール水着など来ていたらそっちの方が恥ずかしい。


 思った以上に会話も弾み、ご飯を食べたり一緒に泳いだりしたけど、気配でも出ていたのかな~。それ以上の進展はなかった。でも後で聞いた話によると梨絵はそのうちの一人から電話が来るらしい。処女じゃないんだから積極的に行きなよと背中を押してあげた。


 お手伝いがあるからとドライブの誘いを断って民宿に戻って一息つくと、アルバイトの高校生を紹介された。二人とも女の子で私と同じ二年生。既にTシャツの上にエプロンを羽織っている。


 互いに簡単な挨拶を済ませ私達も渡されたエプロンを着けて夕食の準備に取り掛かった。こんな時は同じ年。初めて会うのに呼吸が合う。前から友達だったみたいだ。


 お風呂には梨絵と一緒に入った。やっぱり少し大きくなってる。そんな話題で二人盛り上がった。バカみたいだけど案外楽しい。



 家が近いのでいつもは二人とも帰るらしいのだが、この日は泊まると両親と民宿のおばさんに承諾をもらったらしく私達の部屋に布団を持ち込んで来た。


 紗枝ちゃんと、亜実ちゃんだ。


 もちろん私達も大歓迎。布団を並べて修学旅行のように盛り上がる。

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