第27話
「モテないってはっきり言えばいいのに」
「モテないって?由佳理は知らないだろうけど、こう見えて―――」
「こう見えて?」
何か言おうとしたみたいだが、嘘がばれると思ったらしく続く台詞はなかった。
「すぐ帰っちゃうの?」
「いや、今回は休みも長いからこっちには一週間くらい居ようかと思ってる」
「一週間…そう。ちょうど良かった。宿題見てくれる?」
「宿題?」
「そ、なんたって勉強一筋だもんね」
参ったなという顔をしつつも「あとでな」と言って部屋から出て行った。それにしてもとんでもないものを見られてしまった。私はまた兄貴にからかわれると、名前で埋め尽くされかかったページを引き千切り丸めてゴミ箱に放り投げた。
日曜日の夜にもちゃんと電話が来た。
《俺んちに?》
「そう。ホントは今夜また出掛けようと思ってたんだけど、ちょうど兄貴が帰って来ちゃって。だから抜けだせないの。それに今村さんの家にも行ってみたいし」
《そっか。ま~月曜の昼間なら誰もいないから別に構わないよ。どうする?迎えに行こうか?》
「ううん。自転車で行く。前にちょっとだけ話したと思うけど、月曜の三時からアルバイトが始まるの」
《あ~、駅んところの喫茶店だっけ》
日曜の九時ともなれば多少お店が空くのかこの日は五分くらい話せた。その時、家の場所を聞いて、お昼過ぎに行くからと電話を切った。
今村さんの家は駅から北へ二キロくらいのところにあった。同じような建売が並んでいるからと言われ、教えられた道を進んでいくと同じような家が並んでいる。確か、その並びの一番奥だと言っていた。それで、住宅の間の道をスイスイ走っていくと見慣れた白い車が目印のように止まっている。
辺りに少しだけ視線を移してチャイムを押した。あらかじめ待っていたかのようにすぐにドアが開く。
「来ちゃった」と言ってニコって笑う。今村さんも笑顔を見せた。
今村さんの部屋は二階の階段を上がった突き当りにあった。広さは六畳。意外と狭く感じるのはいろんなもので溢れていたからだろう。シングルのベッドの周辺には車のホイールとか部品などが置かれていて、部屋というよりも物置を連想させる。
落ち着いて座るほどの場所もないからかベッドに座るように言われた。寝るだけではなくソファーも兼ねているのかもしれない。
見たことのないような部品があったので、それとなく訊くと今村さんは楽しそうに説明してくれる。余程車が好きなんだなって思った。
一通り話し終えると私の脇に身体を寄せ、顔を近付けて来た。私もそれに応える。誰もいないって聞いてたし、初めての今村さんの部屋ということもあって、足を踏み入れた時からその気があった。ましてやこんな明るい昼間。もう準備万端どころか通り越しているくらい。
でも今日はいつも通りいくかどうか。
今村さんが童貞じゃないことはわかってるけど、どのくらい女性経験があるのか探りを入れてみたくなったのだ。Tシャツを脱がしてから背中に手を回し、それを外さんと指を動かす。同じような動きを何度もしている。
やがて今村さんは首を傾げながら私の顔を見た。
「どうなってんの?」
それで素早く前を探り始めたら、手慣れたものだと思ったのかもしれないが、意外と経験人数は少ないと見て良さそうだ。
あるいはこの手のブラをしてなかっただけか。
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