第18話

「女性に歳を訊いちゃいけないんですよ。だから秘密。そんなことよりお兄さんはいくつなんですか?」


「俺?いくつに見えるなんて言ってもしょうがないか。十八だよ。来月一個増えるけど」


 ということは兄貴と一緒。それか一つ下。意外と若いので驚いたけど、すぐに話題を変えることにした。


「お兄さんじゃあれなんで、名前訊いても良いですか?」

今村いまむらっていうんだけど」


「今村さんって言うんだ。隣にいる子は日向梨絵ひなたりえちゃん。そして私は川島って言います」


「先輩、どうして私だけフルネームなんですか」


 戸惑ったように梨絵は振り返る。そんな会話に今村さんは笑い出した。前回にはないいい雰囲気だ。


「でもまさか二人揃ってラーメン食べに来るとは思わなかったよ」


 そう言いながら今村さんは何か思い出したようにクスッと笑う。すぐに理由を訊ねた。


「いや、いきなり現れたから山上の奴ったら、俺に惚れてるんだとか言い出してさ」

「私達ですか?」


「いや、後ろの、え~と川島さんだっけ?」

「私?」


 思わず吹き出しちゃった。


「全然タイプじゃないですから」


「ってことは、もしかしてそっちの?」と梨絵を指さした。


「いえ、私もああいう感じの人は…」


「そっか」とさばさばした声で言うと、今村さんは腑に落ちないという感じで口を噤んだ。


「まさか…俺って…。そりゃないか」と苦笑を漏らす。その言葉に答えは返さなかった。



「それで。また朝までドライブ?それともどこかに行く?」

「ドライブじゃ疲れちゃうでしょうから、もし行きたいところがあれば今日は別にどこでも――」


 これは私の本音でもある。同時に今村さんも先週のドライブを思い出したのか、あの日は昼近くまで寝てしまったと笑った。皆同じだったようだ。



 少ししてから不意に今村さんは言った。


「どこでも?じゃ~ネオンがチカチカとかでも良いの?」


 冗談と本音が入り混じったトークだったので厭らしさは微塵も感じなかった。


「別に良いですよ。ね?」と梨絵に振る。

「私も別に‥‥」


 困ったように梨絵が話す。拒否してる感じではない。だから私も明るく言った。


「社会勉強ってことで」


 これは良い言葉だったようだ。今村さんも納得したように笑った。


「社会勉強か~!いいね~それ。俺もああいうところは行ったことがなくてさ―――」


 その一言で行き先が決定したようだ。二度目だったということもあり会話は思った以上に弾む。客商売なのか話術は上手でトーンも優しい。この人なら梨絵を任せてもと、途中で私だけ車から降ろしてもらい二人だけにする案も考えたけど、無理に押し付けるような気がして口には出せなかった。


 それ以外にも理由があったのだろうか。


 それから三十分くらい走って郊外にあるホテルへと車を乗り入れた。

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