第15話
お昼ご飯を食べ終わった頃に「先輩」と梨絵が現れた。
聞くところによると梨絵も同じような時間に起きたらしい。あの時間まで遊んでいたのだから当然だ。そして、同じように勉強していたのだと話したというから笑っちゃう。
「昨日は面白かったね。というか今朝かな?」
私の一声に梨絵は数時間前の記憶を呼び起こすかのように遠い目をした。
「一晩中走ってましたもんね」
良かった。梨絵もまんざらではないようだ。それから独り言のように、ラーメン屋かと呟いた。その一言が気になって訊ねたけど、特に意味はないとばかりに、別にと言って頭を振る。何か理由でもあるのかもしれない。だてに何年も付き合ってはいない。
「もしかして…気になってるとか?」
どうやら図星だったらしく私の言葉に表情を変えた。ほんの僅か血色がよくなったようにも見えただろうか。
「助手席の人?」
「う~ん、っていうか、ちょっと良いなって」
歳も梨絵に近いから、ひょっとしたらうまく行くかもしれない。そんな考えを頭に巡らせたとき、
「運転してた人」と弱々しく答えた。これには私も思わず目を見開いてしまった。
「オジサンっぽかった人?」
「朝見た時はそんな風に見えなかった」
それは私も一緒だ。でもさすがにそっちは無いだろうと思っていたのも確かだ。もっとも私にすれば一晩一緒にドライブしただけの相手だから気になるほどでもなく、むしろ妹分の望みを叶えるべく協力してやっても良いと浮かんだ考えを口にした。
「今度、一緒に食べに行ってみようか!」
その一言で梨絵の表情がパッと明るくなった。
「じゃ、まずは宿題からね」
何曜日が定休日なのか行ったことがないので知らなかった。兄貴でも家にいれば知っているかもしれないが、生憎情報を得られそうな人は身近にはいない。適当に出掛けて休みでは骨折り損なので、日曜日に行くことにした。
飲食店でまさか日曜休みは有り得ないし、夏休み中で曜日の感覚は麻痺してる。それでも昨日は日曜だったはずと、一週間後に出掛けることで梨絵と話が決まった。退屈気味だった夏休みに光が射し込んだような気がした。
「梨絵ちゃんっていくつくらいまでに結婚したいとかある?」
シャーペンを握って一時間もすると集中力も切れるようで思いついた話題を振る。
「結婚ですか~。いつかしたいとは思ってますけど、そんなことよりは来年の受験ですよ。やっぱり」
「そうよね」
日本史に出てくる江戸時代とかならともかく、受験は結婚の間にクリアしなければならない問題だ。
「先輩はあるんですか?」
「私は二十歳までにしたいかな~。それで子供は三人産みたい。それで両手を広げて鳥のように歩くと子供達も同じようにマネしてついて来て。あ~考えるだけでなんだか楽しい!」
「先輩、意外と子供っぽい夢があるんですね」
年下の梨絵に笑われてしまった。
「それに若いお母さんって授業参観とかにも良いでしょ?」
「確かにそれは言えてるかも。ってことはあと四年ですか?」
「そうね!それまでに良い人見つけなきゃ!」
私は以前から描いていた構想を楽しそうに梨絵に話した。
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