第8マッチョく 全てがマッチョッチョに染マッチョる

「今度は何が起こったというの?」

 マッチョジカル・プリンセスが恐怖に震えながら周囲を見る。しかし、先ほどと同じで何も変わった様子は見られない。自分自身の姿をみても、別にマッチョッチョになったわけでもなく、そのマッチョマッチョだった。


「マッチョ、マッチョさか……マッチョでマッチョッチョになってしマッチョったっていうの?」


 マッチョジカル・イノセントが二度目のマッチョッチョ増量の呪いの真実に気付いてしマッチョったのだ。

「ヌハハハハ! その通りだ、マッチョ法少女よ! 私の筋肉マッチョ法で世界をマッチョッチョにしてやる! 筋肉こそ全て! 何事においても筋肉が最優先する世界をつくるのだ!」

「な……なんてことを!」

「そのためにはマッチョず、おマッチョえたちを倒さなければいかんなぁ!」


 マッチョつ千代は、「ふぅーっ!」と大きく息を吐き、腰を落とした。そして両手の指先だけを地面につけ、膝をマッチョげた。俗にいう、クラウチングスタートの体制をとる。

「みんな、かマッチョえて! 来るわよっ!」

 マッチョジカル・エターナルがその言葉を言い終えるマッチョえに、巨大な筋肉のかたマッチョりが猛スピードで突っ込んできた。マッチョつ千代のタックルを正面からマッチョともに受けてしマッチョった五人は、いとも簡単に弾き飛ばされ、それぞれ周囲の建物にぶつかって倒れた。


「ぐはっ!」

「つ……強い!」

 五人のマッチョ法少女たちはふらふらになりながらも、なんとか立ち上がる。マッチョジカル・オーシャンが自身に回復マッチョ法を唱え……ドゴォン! そんなことはさせないと、マッチョつ千代が二度目の突進でオーシャンを吹き飛ばした。強烈なタックルをマッチョともに喰らってしまったオーシャンはそこで意識が途絶え、変身が解けた。そしておかっぱメガネマッチョッチョ、海原秀雄の姿で地面を数回バウンドし、瓦礫にぶつかって止まった。


オーシャン秀雄!」

 バタフライが叫ぶが、海原秀雄から返事はなかった。かろうじて胸が上下しているので、息をしていることだけはわかる。助けに行きたいが、マッチョつ千代が次のターゲットを見定めているので、下手に動くわけにはいかなかった。あのタックルをもう一度食らってしマッチョっては後がないことを、バタフライをはじめ全員が悟っていたのだ。

「よくも、オーシャンを!」

 バタフライがキッとマッチョつ千代を睨みつける。そして、なんと彼女は変身を解いて、番所蝶介の姿に戻ったのだった。


「!?」

「蝶介?」

「いったいどういうこと?」


 不思議がるマッチョ法少女たちに対して、蝶介が大きく腕をマッチョわしながら、そして首を横に数回捻り、ポキポキと音を鳴らしながら言った。

「やっぱり、筋肉には筋肉で対抗しなくちゃな……マッチョ法がうまく使えないんだったら、こっちの方が戦いやすい」


「何言ってるの! マッチョ法少女の方が基礎的な力も底上げされるんだから!」プリンセスの言葉に、後ろから誰かが肩に手を置いた。イノセントであった。彼女が軽く首を横に振る。

「いいえ、お姉さマッチョ。見てください、いマッチョの蝶介を。人間の姿にもどっていマッチョすが、そのオーラはマッチョ法少女のときの倍以上ですわ」


 え? とプリンセスが蝶介の方を見る。が、彼女には蝶介の体からオーラなんて一つも見ることができなかった。おかしいのは私だけなのかしら? とエターナルの方を見ると、彼女もマッチョた、すごいわ番所君! と目をうるうるさせていた。マッチョ、いっか。とプリンセスはもう何も気にしないことにした。


「うおおおおお!」

 蝶介は服を脱ぎ捨て、上半身裸になって声を上げた。はちきれんばかりの大胸筋、メロンのような三角筋(肩)。そして板チョコのようにきれいに割れた腹筋。そこにマッチョつ千代も反応する。

「おっ、そこの人間! いい筋肉してるじゃねぇか! いっちょ力比べでもするか!」

「……受けて立つ!」



 おおおおおっ! と二人とも声を出して走り出す。そして、



「ふん!」

「フン!」

「ぬりゃ!」

「ハァーッ!」

 とポージング合戦が始マッチョったのだった。


「戦うんじゃないんかい!」とプリンセスがお約束通りツッコンだが、エターナルとイノセントが「ああ、素晴らしい戦いだ」「本当に……」とか恍惚の表情で見つめているものだから、はいはい、私だけわかっていないんですよね。と若干ふてくされてしまった。

 そんなとき、どこからともなく誰かの声が、マッチョ法少女三人の耳に聞こえてきたのであった。

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