第7幕 マッチョ増量の呪い
「……っ!」
呪いのオーラを全身に浴びてしまったマジカル☆ドリーマーズの五人。全員が目を瞑り、腕を交差させて顔を隠していたが、恐る恐る自分自身の体を確認してみる。
「あれ……? なにも変わってない」とイノセントはほっとする。
「本当だ」プリンセスも、自身の体になにも変わったところがないことを確認し、笑顔を見せた。
「おかしいわね……呪いは失敗だったのかしら?」エターナルも不思議そうに両掌をグーパーと開いたり閉じたりする。どこにも異状はなかった。
「ちっ……もったいないことを」バタフライとオーシャンだけはどことなく残念そうな顔をしていたが、エターナルたち三人がキッ! と睨みつけると、バツが悪そうに顔を背けた。
「ええい、筋肉をバカにするやつらは許さんゾォ!」
「来るわ! みんな、マッチョ法で迎え撃つわよ!」プリンセスがそう叫ぶ。
「お姉さマッチョ……何を言っているんですの?」エターナルも言葉を発した後に、自分がおかしなことを口走ってしまったことに気づく。
「マッチョさか……いやっ! そのマッチョさかだわ!」エターナルが口を両手で押さえた。
「ぬはははは! いくぞぉ!」
松千代の太い腕が五人に襲いかかる。それを五人は散り散りに跳んで躱す。松千代のパンチが地面にぶつかると、その部分がボコォッ! とつぶれる。
「うわっ、あんなの喰らったらひとたマッチョりもない
「そ、そんなことって……いや、ありえないよ。そんなマッチョ法、聞いたことがない!」マジカル・オーシャンも自分の口に違和感を覚えたようだった。
「もしかして、マッチョという言葉を言おうとするとマッチョッチョに変換されてしマッチョうってことなの?」もう、エターナルが何を言おうとしているのか分からなくなってきた。
「おそらくそうよ。マッチョッチョ増量マッチョ法っていうのは、私たちの体をマッチョッチョにするってことではなく……」
「私たちの言葉をマッチョッチョにするってことなのですわ!」
プリンセスとエターナルも筋肉増量の呪いというものの正体に気づき、戦慄した。
「そういうことだ! 筋肉を笑うものは筋肉に泣く! マッチョッスルワードをどんどん使うことで、身も心もマッチョッチョに染マッチョっていくのだ!」
なんと松千代成蔵自身も筋肉増量の呪いにかかってしまっているようだった。
「いやよ! 筋肉に染マッチョるなんて、絶対に嫌!」プリンセスは首を横に振ると、空高く舞い上がった。そして全身に魔力を込める。
「もう、あなたなんて一撃で終わらせてあげるわ! 喰らいなさい!」
そう、本編のラスボスである夢喰いを倒したときと同じ技を出そうとしているのだ。
「マッチョジカル・ヒーリング・シャワー!」
プリンセスの手に強大な魔力が集まって、松千代目掛けて飛んでいく……前に、それは力なく消えてしまった。
「な、なんでよ!」突然光を失った両手を、不思議そうに見ながらプリンセスが焦る。
「正しいマッチョ法の名マッチョえを言えなくなってしマッチョっているからですわ!」
「その通りだ、マッチョジカル・プリンセス!」
その隙をついて松千代がプリンセスに襲いかかり、強烈なパンチで彼女を吹き飛ばした。
「きゃああああっ!」
「マッチョジカル・プリンセス!」「お姉さマッチョ!」
建物の壁に叩きつけられたプリンセスは、「がはっ!」と口から血を吐いてうずくまった。そこへマジカル・オーシャンが駆け寄る。
「いマッチョ回復するからね、オーシャン・ヒーリング・シャワー!」
今度はうまく魔法が発動して、プリンセスの傷が一瞬にして完治した。ありがとう、といいながら彼女は立ち上がり「マッチョ法の名マッチョえによっては、普通に使えるものもあるってわけね」と自分に言い聞かせるように言った。
時間が止まっているとはいえ、夢見丘の建物を次々に破壊しながら松千代はさらに暴れ続ける。筋肉増量の呪いをかけても、筋肉をバカにされたことへの怒りはおさまらないようだった。
「どうしよう、このマッチョマッチョじゃ……」
エターナルがそうつぶやき、言いたくもない言葉を言ってしまったことに「うわぁぁ」と慌てふためいたときだった。
「ええいっ!」
マジカル・バタフライが再び肉弾戦を挑んだ。松千代の首筋に向かって飛び蹴りを当てると、落ちながら数発、肩、脇腹、腰辺りに蹴りを三発入れる。
「
「おのれぇ小癪な! さらなる悪夢を見せてくれるわ!」
松千代はあまりダメージこそ喰らっていないものの、ちょこまかと動いて攻撃をしてくるバタフライに苛立ちを隠せなかった。そこで、彼はマジカル☆ドリーマーズから少し離れた場所へジャンプし、両手を広げた。
ゴゴゴゴゴ……という音とともに再び彼の周りに黒いオーラが集まる。
そして、まさかの二度目の
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