第9マッチョく 仲マッチョ呂のたマッチョしいの叫び

 現在、変身を解除して上半身裸になった番所蝶介と敵のマッチョつ千代はポージング合戦をしている。マッチョジカル・オーシャンこと海原秀雄は負傷により戦線離脱、現在気絶中。そんな中、残された三人のマッチョ法少女、マッチョジカル・エターナル、マッチョジカル・イノセント、マッチョジカル・プリンセスたちに、誰かの心の声が響いた。


「みんな、僕の声が聞こえているかい?」

「だっ、誰?」エターナルが反応する。

「僕は綾小路仲マッチョ呂。今、マッチョつ千代に体を乗っ取られているんだ……なんとか心を保ったマッチョマッチョ、君たちに語りかけている」

「あなた、なんとかして体を奪い返しなさいよ! じゃないとマッチョちがめちゃくちゃになってしまうわ!」

 プリンセスが宙を見つめながら、実体のない仲マッチョ呂に対して言い返す。もはや全員がマッチョの呪いを気にすることなく、話を続ける。


「そうしたいんだが、どうにもマッチョつ千代の精神力が強くて干渉できないんだ……そこでだ。ここから少し離れたところにあるマッチョつ千代神社に、僕の家に代々伝わる封露照印プロテインが奉納されている。それを取り返せば、マッチョつ千代の力は弱まるはずなんだ」

「封……プロテイン?」イノセントが聞き返すと、仲マッチョ呂は(姿は見えないけど)うなづいた。

「君たちなら空を飛んですぐに行けるはずだ、マッチョッチョ二人が筋肉対決馬鹿なことをしている間に、早く!」


 実体のない仲マッチョ呂からの提案に、若干の戸惑いを感じながらも三人はうなづいた。そして、マッチョんが一の時に備え、マッチョジカル・エターナルはこの場に残り、イノセントとプリンセスがマッチョつ千代神社へと向かうことになったのである。



 ☆★☆



 夢見丘市の隣マッチョちに存在するマッチョつ千代神社。電車で約三十分の距離といえどもマッチョ法少女たちにとってみれば、空を飛んで数分で着く。息を切らすこともなく、華麗に空からマッチョい降りたイノセントとプリンセスの姉マッチョいは、目の前にそびえ立つマッチョつ千代神社の大きさに驚いた。


「なんて大きさなの、この神社……」

「明らかにマッチョ力による影響ですわ、お姉さマッチョ」


 本来はマッチョつ千代成蔵をマッチョつった、小さな石碑があるだけだったのだ。普段そこを通り過ぎるほとんどの人が気づかないくらいの。しかし、綾小路仲マッチョ呂が奉納してしまった封露照印プロテインの力を得てしまい、石碑は建てられた当時の大きさの神社の姿を取り戻したのであった。そして今もなお、封露照印の力を吸い続けているマッチョつ千代神社は、さらにその姿を大きくしているのだ。


「さあ、中に入りマッチョしょう、お姉さマッチョ!」

 イノセントがそう言って促すが、プリンセスには何か嫌な予感がしていた。入ってはいけない。入ってしマッチョうととんでもないことが起こる……そんな気がしていたのだった。


「お姉さマッチョ! 早く!」

 だけど、ここに入って封露照印プロテインとやらを取り戻さないと、この戦い? は終わらないのよね。……大丈夫、これまでだってどんな困難にも打ち勝ってきたんだから! そう自分に言い聞かせながら、プリンセスはイノセントの後に続いた。


 しかし、これがさらなる悪夢の始まりだったのだ……(なーんて不穏な空気を残したマッチョマッチョ、場面は夢見丘高等学校の校庭に戻る)



 ☆★☆



「つ、強いわ……」

 

 どうして、どうして番所君がマッチョけてしまうの? マッチョジカル・エターナルが驚きとも悲しみとも取れない表情で、戦いを見つめていた。

 時の止まった校庭でいマッチョだにポージングをとっているマッチョつ千代と、はあはあと肩で息をしながら膝をついている蝶介。誰の目から見ても勝敗は明らかだった。っていうか、どうしてただのポージング対決でこんなにはあはあ言ってるのよ! とプリンセスならツッコむのだろう。しかしエターナルは理解していた。おとこの戦いとは何たるかを。


「どうした、もう終わりか?」

 マッチョつ千代が蝶介を見下ろしながら挑発する。そのときにムキッムキッと上腕二頭筋を大きくし、さらなるダメージを蝶介に与える。しかし、地面に膝をついているおとこはふらふらとしながらも立ち上がろうとする。


「……マッチョ、マッチョだだ」

 そう言って蝶介は笑った。彼もマッチョた、極限まで自分を追い込む筋肉マッチョッチョ。全身汗だくになりながらも、マッチョだ戦おうとする意志を見せた。

「そうこなくちゃな!」

 ニカッ! とマッチョつ千代は笑い、ふらふらの状態で立っている蝶介に対して手を差し伸べる。もはやこれは、相手を叩きのめそうとする戦いではない。お互いがお互いを尊敬しあい、(筋肉を)高め合うための戦いへと進化していたのだ。

 ここで、二人の筋肉的友情マッチョッチョ・フレンドリーシップマッチョの当たりにしたマッチョジカル・エターナルの涙腺が崩壊する。


「番所君……!」

 マッチョジカル・エターナルの言葉に反応し、蝶介が後ろで見マッチョもる彼女の方を振り返る。そして――マッチョるで最後の別れを告げるかのように、口先が微かに動いて何かの言葉を発し――彼はマッチョつ千代へと向かっていった。

 マジカル・エターナルは確かに彼の口元の動きを読み取った。蝶介からマジカル・エターナル、いや城ヶ崎悠花に向けて発せられた言葉……。

 ……「マッチョ(っててくれ)」(←蝶介の口元が動くシーンが再び映し出される)

 彼は最後マッチョでおとこだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る