第20話 <修行編>トワイライトカーゴ(シナリオ)

共同制作のためのイメージシナリオ。


登場人物

フィリス・タラリス(15) 宇宙船Eの艦長。星間輸送会社の社長。

ダスティン・ベッカー(38) 乗組員。星間輸送会社の社員。元軍人。

               亡くなったフィリスの父親の元部下。

CC    整備ロボット。

カシワ   ペットの宇宙鳥。羽は退化しており飛べない。知能は4歳児程度。

宇宙船E  宇宙船の人工知能。簡単な会話が可能。


1 恒星間 コックピット(戦闘後)


   宇宙船Eのコックピット内。

   フィリスとカシワ、前の操縦席側に座っている。

   後部席にはロボットと宇宙鳥。


フィリス  ふう……。なんとか命拾いできたみたいですね。でも、いったい何なんでしょう、いきなり襲ってきて……。

ベッカー  おい、安心にはまだ早いぜ。

フィリス  え? 

ベッカー  さっきのバトルで、えらい燃料、食っちまった。どっかでさっさと補給しないと漂流者になっちまうぜ。

フィリス  そんな都合のいい惑星なんか……ガス惑星ばかりの星系なのに。

ベッカー  そうとは限らんぜ。CC、この残りで補給可能な惑星を調べてくれ。みつけたらパネルに表示を。

CC    表示しました。

ベッカー  な、あるじゃねーか。

フィリス  惑星XX? それって、XXの大型基地がある星でしょ!? 

ベッカー  な、上等じゃねーか。

フィリス  冗談でしょ? そこは近くを通っただけで、何百もの戦闘機が襲ってくるのよ。

ベッカー  かもなあ。

フィリス  わかってます? この船、貨物船なんですよ。

ベッカー  それくらい知ってるよ。

フィリス  わざわざ殺されに行くようなものですよ。そ、そんなの……おバカさんです!

カシワ  (居眠りしていたが驚いて起きて騒ぎ出す)

ベッカー  おまえ黙って寝てろ。あんな、どっちがバカだ。敵の基地なら燃料はたんまりあるはずだろ。

フィリス  は? 冗談ですよね?

ベッカー  どのみち他には手がないだろ。どうするね、お嬢ちゃん。

フィリス  こんな時に子ども扱いしないでください! 

ベッカー  はいはい、艦長。だが、緊急時の判断はあんたの仕事だ。どうする? 早く決めないと、すぐまた追っかけてくるぜ。

フィリス  ……聞くまでもありません。万に一つでも可能性があるなら、そっちに賭けるしかないでしょう。

ベッカー  わかったか、大至急、惑星XXだ。

宇宙船E   はい。ワープ準備を開始します。

ベッカー  衛星軌道の外側に、見えない廃棄コロニーがあるはずだ。その影の位置へ入れ……。

フィリス  待ちなさい。なんであなた、そんなこと知ってるんです?

ベッカー  行くぜ。

(ワープ開始)


2 惑星タラン コックピット


   フィリスとベッカー、前の操縦席側に座っている。

   後部席にはロボットと宇宙鳥。


ベッカー  うーい、もう来たぜ。えらい数だな。 

フィリス  すぐに追いつかれそうですよ。どうするのですか?

ベッカー  どれも正規軍じゃない。ぜんぶ撃ち落としてやりてえってとこだが、今は、こっちの燃料がもたねえしな。

フィリス  あと、どれくらい……CC、さきほどの小惑星まで飛んで、どれくらい残りますか? すぐ表示しなさい。

CC    目的地まで、残りは2%です。

ベッカー  ふん。やっぱ、さっさと逃げ切るしかねえな。おい、おまえ撃て。

フィリス  私? ちょ、ちょっ…… ど、どうしたら……

ベッカー  弾がもったいないが、ちょっと牽制して撃つだけだ。とりあえず逃げきるまでもちこたえろ。

フィリス  で、でも、こんな数、相手したことがありません! 

ベッカー  今は手が足りねえ。おまえ一人でがんばれ。

フィリス  そんな、無茶な! 

ベッカー  CC、お嬢ちゃんのサポートをやってくれ。全速だ。

フィリス  もう! イカれてる! これだから、元軍人は!

ベッカー  よろしく!

CC    フィリス様のパネルに、誘導値を表示します。

カシワ  (ギャーギャーと騒ぎだす)

ベッカー  うるせーな。いいかげん、食っちまうぞ!

フィリス  来た!

  攻撃開始。撃墜する

ベッカー  おい、撃ち落としたのか。いい子だな!

フィリス  わたしにだって、これくらいやれます!

ベッカー  そこらの新兵よか、いいセンスだぜ。

フィリス  あ……そうですか? えへへ……(少し調子にのる)



3 リビングルーム(恒星間航行中)


フィリス、コックピット側から、リビングルームに入ってくる。


フィリス  もうクタクタ!(疲れ果てた様子)

   (独り言)ホントこれじゃ、いくつ命あってももたないわ。

フィリス  (キッチンで水を飲みながら)次の依頼もあるのに……

      でも、あの重量だから、やっと利益が出る……

ベッカー (リビングに入ってくる)

     これくらいでバテててちゃ。軍は務まらんよ。

フィリス  わたし、べつに軍人志望じゃないから。

ベッカー  あ、そうか。おまえ、ホントは学者志望なんだったっけ? たしか死んだ母親が……

フィリス  母さんは関係ない! 運び屋が本業です!

ベッカー  あ、そうか。マザコンじゃなく、ファザコンだったな。

フィリス  誰がファザコン!?

ベッカー  そうやって死んだ親父の軍服をわざわざ着てるってのは……ファザコンだろ。

フィリス  違う、これは……。

ベッカー  そんなブカブカのボロ軍服を着なくてもいいのに。

フィリス  あなたこそ、なによ、そのボロ服。

ベッカー  おれの場合、他に似合う服がなくてね。

フィリス  父はずっと仕事で、あまりそばにいなかったの。死んだことさえ、しばらく知らされなかった。

ベッカー  まあ、隊長クラスの戦死は色々あってな。家族にもすぐ伝えられんのさ。軍の事情ってやつ。

フィリス  父の死の理由も守秘義務?

ベッカー  …………。

フィリス  教えて。父がどんな人だったのか。

ベッカー  当時のことはぜんぶ忘れたんでね。

フィリス  そんな……。ぜんぶ忘れるわけないでしょ。

ベッカー  どんな人だったかな……。いや、オレはあの頃のことは忘れたんだよ……ぜんぶ。

フィリス  また何も言ってくれないのね。

ベッカー  いや……ま、たぶん……いい隊長だったよ。いま覚えているのはそれだけだ。

フィリス  それだけ?

ベッカー  まあ、軍は辞めたがってたな。なるべく娘と一緒に過ごしたいって。この船を買っておいたのもそれだろ……(立ち去る)

CC  (リビングに入って、フィリスに報告)順行です。フィリス様、どうかなさいましたか。

フィリス  いいえ、なんでもない。


3 リビングルーム(恒星間航行中) 


 ベッカー、リビングのソファでよっぱらったまま、だらしなく寝ている。周囲には、酒の空きビン、食べ物などが散らかったまま。カシワ、その横でもくもくと食事中。CC、工具類を点検中。


フィリス  (リビングルームに入ってくる)……うーん。やっぱ、どう見てもギリギリよね

CC  (フィリスの姿に気づき)フィリス様、お疲れのようですね。そろそろお休みになられては。

フィリス  ありがとう。でも、いろいろ心配でそんな気分になれなくて。

CC    この先、特別なことをしなければ、燃料は目的地まではもちますよ。今のところ、連中にもみつかっていないようですし。

フィリス  面倒なことをしなければ……でしょ。この船には、何考えてるかわからない、変わった人が乗ってるんだもの。

ベッカー  (眉をしかめて、寝返りをうつ)うーん

フィリス  これ、お酒? もう! ちゃんとゴミはゴミ箱に捨てなさいって言ってるでしょう。しかし、この人、ホントこの状況でよく寝れるわね。

CC    起こしますか?

フィリス  そうね……。

カシワ  (突っついて起こそうをする)

フィリス  まだいいわ。もう少し、寝かせてあげて。

CC    おや、このまま寝かせておくのですか?

フィリス  いいんじゃない。こんなに酔っ払ってたら、どうせ使いもんにならないわよ。(立ち去りながら)……だって、あんなの見ちゃったら、そう怒れないもんね……。

BB  うーん(ふたたび寝返りをうつ)

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