第18話 <修行編>あっという間に5ヶ月が過ぎて

 訓練校に在籍できる期間は、わずか6ヶ月だ。その最後の1ヶ月は、共同制作をすると決まっていた。つまり個人制作ができるのは5ヶ月目までだ。


 1〜2ヶ月は、テキストを参考にモデリングを学び、アニメーションに取りかかったのは3ヶ月目からだ。3〜4ヶ月目には、15秒くらいの簡単なアニメーションを5本ほど作った。短い動画だが、フレームレート30で作ったので、10秒で300フレーム、15秒だと400フレームだ。


 フレームレートとは、1秒間あたりに表示される画像(フレーム)数を表す単位だ。

 フレームレートは色々あって、映画だと24フレームだが、4K/8Kテレビやゲームだと60フレームだ。あとで調整もできるが、60フレームで作ると画像処理の負担が増えてしまう。


 それから5ヶ月目は、様々なエフェクトを使った短い動画を日替わりで20本ほど作った。どれも4秒で、それぞれ120フレーム。


 これは。テレビ番組や映画などのオープニング動画みたいなイメージで作ったものだった。架空のタイトルを入れて、爆発や放射などのエフェクトを使ったりして、まとめた短い動画だ。それを日に1本ずつ作っていった。


 本当は、1ヶ月間かけて、1分半くらいの短いアニメ作品を1本作りたかったのだが、訓練校は、もともとCGモデラー養成のコースだから、アニメーション制作についての授業は一切なかった。私にはまだストーリーボードがちゃんと作れなかった。だから、15秒までならなんとか作れたのだが、それ以上は難しかった。


 そんなわけで、これも質より量だ。クオリティに目をつぶらなきゃ、それだけの数はたくさん作れない。


 しかし、マンガで言えば、4コマとストーリーマンガの違いかもしれない。4コマくらいなら、コンテがなくてもなんとか描けるが、それ以上になるとコンテは必要だ。ちゃんとシナリオやストーリーボードがないとまとまらない。


 私は、以前、広告の仕事をしていたので、テレビやラジオなどの広告、そのくらいの時間感覚はなんとなくわかる。でも、コピーライターだったから、実際、自分ではコンテを作ったことはなかった。


「そういや、長さで言えば、広告では『ラジオC M』の90秒ってのが一番長かったかもしれへんなあ。でも、あれラジオだったし、『映像』はなかったけど……」


 たしか90秒C Mは『ドラマ仕立て』のラジオC Mだったから、ストーリーみたいなものもあったし、シナリオもあった。でも、20年くらい前だから、何を書いたのか、ぜんぜん覚えてない。もともと印刷媒体が多かったから、ラジオもテレビ広告はそれほど多くやってなかったしな……


 長年、ずっとコピーライターの仕事をしていても、アニメ制作には何も役には立たない。



 「ま、ストーリーボードの勉強はあとまわしや。ここは、ゲーム系のモデラー養成コースやし、ここにいる間はそれより色んなCGエフェクトを試しといた方がええわ。そのくらいやったら、講師にまだ質問もできるし」


 しかし、一人だけでアニメーションを作ろうと思ったら、色々やらなあかんから、ほんま大変やな……


 私は、無印良品の「4コマノート」を1冊毎日持ち歩き、動画のアイデアをメモするようにした。コンテやストーリーボードはまだ書けなかったが、日頃から考えておくのは必要だ。

 「4コマノート」は、もともとコピーライターの時から企画書をまとめるために使っていた。一度廃盤になったが、また復活して販売されている。


 また家でテレビドラマやアニメを見る時にも「4コマノート」をなるべく手元に置くようにした。気になったシーンがあった時に停止ボタンを押して、どういうふうにカメラが撮られているのか、コマ送りにして、落書きのようなメモをとるようにした。

 

 「ストーリーボードを作る時、少しは役に立つかも……。マンガだと好きな先生の作品を模写したりするんだろうけど」

 

 どういうシーンだと何秒くらいかかるのか、それはまだピンとこなかったが、とりあえず4秒作品を20本も作ったので、少しずつ時間感覚のようなものがなんとなくわかってきた気がした。まだ「なんとなくそんな気がする」程度だったけど、まだまだ初心者だからこれもしょうがない。


 こうして、あっという間に5ヶ月が過ぎてしまい、訓練校での最後の1ヶ月は6人グループでの共同制作だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る