第4話 <修行編>はじめての課題は、ロボット制作
そんなわけで、やっとはじまったCG魔道士への道。
最初の課題は、単純なロボットだった。
テキストに「簡単! 超入門」と書いてあり、最初は、先生が見本を見せながら説明してくれた。テキストに書いてある通りに作れば完成である。
ゲームでいえば、第一の試練、チュートリアルステージみたいなヤツ。
作り方は、デフォルトで用意されている「立方体」を引き伸ばしたり、「球」を追加したりして形を整えて、さらに「マテリアル」と呼ばれる色や光沢を加えて、最後に「レンダリング」という「写真撮影」みたいなことをやる。
シンプルな形だから、CG制作に慣れた人なら、10分とかからない。実際、隣の席にいる謎のイケメンは、先生の説明も聞かずに、わずか数分でさっさと作業を終えると、退屈そうにデスクにうつぶして寝てしまっていた。
しかし、初心者の私には、何時間もかかった。しかも苦心の末に完成したCGロボットは、かなり不恰好だった。
また私は、オバチャンならではの「三重苦」とも戦っていた。
まず、問題は、久しぶりのWindowsだ。それまで事務パートなどでもWinは使っていたんだが、自宅にはノートパソコンのMacしか持っていない。
ひさしぶりなので、Windowsの使い方をすっかり忘れていた。そりゃ2〜3日あれば、すぐ思い出すだろうと思ったんだが、オバチャンの記憶力はアテにならないのだった。
Macとは基本的な操作がちょっと違う。だから、「あれっ、これって、Winではどうやるんだったっけ?」ととまどう。CGとか、以前の問題だが……。
初日は、帰ろうとして、「えっと、Windowsって、どうやって『終了』するんだっけ」……と悩むハメに。そりゃ誰かに聞けばいいのだが、オバチャンは意外とこういうところはシャイなのである。こんな初歩的なことを聞くと「そこから、わからんのかーい!」と誰かからツッコまれそうでこわい。
結局、やさしそうな講師におそるおそる聞いて、「ああ、そうそう、そうやるんだった」となんとかシャットダウン。
また、次の問題は、マウス操作だ。
「おいおい、マウスも使えんのかい!」と言われそうだが、これももちろん経験がなかったわけではない。ただ最近、パット入力だとかペン入力だとか、つまり、すっかりマウスを使ってなかったのだ。すると、すっかりマウスを忘れていた。
自宅にも「無線マウス」をもっていたが、あまりにも使わないので、電池切れのまま、数年もほったらかしてあった。
教室にあったマウスは、しっぽがついていた。そういや、ありましたっけねえ、こういう有線マウス……。久しぶりに見たかも。
さらなる問題は、老眼&近眼だった。
いやはや、ほんま、オバチャンはいろいろ大変やねん。近眼だけならいいけど、老眼もあるねんで。
まあ、一応、それも予想していたから、初日はメガネを数本もっていった。3本のメガネのうち、一番古くから使っている1本がぴったりだったので、それで何とかなりそうだった。もし、どれも合わなければ、連休中に新しいのを買いに行く予定だったのだが、買わずに済んだ。
でもでも、CGを作るのはめっちゃ楽しい!
学生の頃、石膏デッサンで「立体」を描くのが難しかったことを思い出した。石膏デッサンをだいぶ苦労して描いた経験があった。そういや、もう30年以上前だが。
いや、一昨年くらいにも、たまたまヌードデッサンを描ける機会があったのだが、時間切れでモデルのケツしか描けなかったのよ。
しかし、これなら、ひょっとして時間とかも関係ないのでは?
ソフトの操作を覚えるのは大変だが、ある意味、これは慣れればいいだけなのかもしれない。だって、色や光沢、影の違いなどもパソコンがぜんぶ計算してくれる。てことは、これって操作に慣れさえすれば、カッコイイ油絵を描くより、むしろカンタンなのでは……?
さらに、嬉しいのは、CGなら、ぜんぜん絵の具代もかからず、デスクも散らからず、そして、手も汚れないことだ。パソコンを閉じるだけで、お片づけもいらない! いつでも好きな時に始められて、好きな時に終われるのだ。どんな巨大な作品だってやりたいだけ。いくらでも大きいのも作れる。やっほー。
実際、マウスをつなげば、自宅のノートパソコンでも、ざっくり簡単なモデリングくらいなら十分できた。夕食づくりのお鍋を火にかけながら、キッチンのテーブルの上で。
おお。これって、忙しい兼業主婦にもぴったり、なのでは……?
わずか3日で、私は、すっかりご機嫌だった。もうすっかりホグアーツ魔法学校に入学したような気分だ。まあ、最初はポンコツロボットしか作れなかったが、そんなことはどうでもいい。
こうして、オバチャンならではの試練をクリアしつつ、楽しいCG修行がスタートした。
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