第13話 アリスちゃんのお絵描き

 


「おお? アリスちゃんお絵描きしてるの?」

「うん!」

「そかそかぁ♪ どれどれ〜?」


 私が魔導書の編纂をしている間にフェンちゃんにアリスちゃんの面倒を見てもらっていました。アリスちゃんはフェンちゃんを背もたれにしながら、机に真剣な表情で紙と向き合っていますね♡ 可愛い♡


「ん? アリスちゃん〜ちょっと紙の表面見せて貰っても良いかなぁ?」

「ふぇ?」

「ごめんね、お邪魔しちゃって」


 何だか少し嫌な予感がします。アリスちゃんに申し訳無いけど、お絵描きを一旦やめて貰い私はいくつかの紙を確認しました。


「ん? 主ぃ、どうしたの? そんなに顔色悪くして」

「フェンちゃん.......大変よ。アリスちゃんがお絵描きに使用している紙.......全部重要書類.......」

「えっ.......まじ?」


 あちゃあ.......王家の紋章が付いてる紙、王都にある私が保有する土地の権利書.......こっちは危険指定ランクS級のヴァンパイアロード(真祖)が、魔法により封印されている特殊な紙だよ。


「これがね! ままとふぇんねーたんだお!」

「ふぁっ.......!? アリスちゃん.......私の似顔絵を書いてくれてたの?」

「お嬢様.......」


 うふふ♡ 一生懸命に私やフェンちゃんの似顔絵を書いてくれてたと思うとニヤニヤが止まりません。もう重要書類の方はどうでも良いや♪


「お上手でちゅね〜♡ アリスちゃんはこの国.......いいえ、この大陸でナンバーワンの絵師になれちゃうよ!」

「流石お嬢様です!」

「フェンちゃん、やはりうちの子は天才よ! この絵はフォーゲンベルク家に代々伝わる家宝にするわよ! 土地の権利書や王家の紋章が入った紙よりもアリスちゃんの書いた絵の方が遥かに価値があるわ!」


 そうと決まれば、王都で有名な職人に絵を飾る為の額縁を依頼しましょうか♪お金に糸目は付けません!


「サラちゃん! ちょっと来て! お願いがあるの!」


 少し経ってからエプロン姿のサラちゃんが人化したままやって来ました。サラちゃんには王都まで少しお使いに行って貰いましょう♪


「サラちゃんこの絵を見てよ! これアリスちゃんが書いたんだよ!」

「えっへん! さらねーたんもかいたの! これなの!」

「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ.......!? これをお嬢が書いたというのか!? これは凄いぜ!」

「サラちゃん、至急王都へ行きこの絵を飾るのに相応しい額縁を凄腕の職人さんに依頼しに行って来てちょうだい! お金に糸目は付けません! それとアリスちゃんの為に最高級の紙と筆も買って来て! アリスちゃんのおやつもね!」

「あいよ! 任せてくれ!」


 サラちゃんは勢い良く外へと飛び出して行きました。サラちゃんもフェンちゃんもアリスちゃんの事を実の妹のようにいつも可愛がってくれています♪ フェンちゃんやサラちゃんを見ていると何だか過保護な姉と言った感じですね。昔は戦いに明け暮れて凶暴だったサラちゃんやフェンちゃんがこんなにも変わるとは.......本当に未来と言うのは分からないものですね。


「フェンねーたん!」

「何でしょうかお嬢様?」

「おしゃんぽ! おそといこ!」

「良いですよ〜主ぃ、お嬢様を背中に乗せてお散歩に行ってくるね〜」

「おお! 良いね良いね! 私も行こっかな♪」


 私もフェンちゃんの背中に乗ろうとしたら、気付けば背後にイリスが鬼の様な形相で仁王立ちをしていました。昔私が戦った竜王のハイメナス・ドラゴンロードの王者の威圧にも匹敵するようなオーラを放っています!


「な、なな何でしょうか?」


 え、何でしょうか? イリスがニッコリと笑って居るけど目が全く笑っていません! 私、何かやらかしちゃったかな? もしかして、イリスの楽しみにしてたおやつをこっそり食べたのがバレた? いや待てよ? イリスの下着に顔を埋めて、はぁ.......はぁ.......としながら自慰行為をしてるのがバレたのかしら? それとも勝手に下着を身に着けた事がバレた? ぐぬぬっ.......逆に心当たりが多すぎて何か分からないよぉ!!!!


「イリスねーたん!」

「アリス、お姉ちゃんは今ね。そこに居る変態さんに話しがあるの」

「おえかきしたぉ! これイリスねーたんなの!」

「えっ.......アリス。まさかこれを私の為に書いてくれたの?」

「ふぇ? イリスねーたん!?」


 え、マジか。イリスがアリスちゃんの書いてくれた似顔絵を見て涙を流してる.......嬉しい気持ちは良く分かるけど、そんなに号泣するほど!?


「うわあああああああああぁぁぁんんん! あ"り"す".......あ"り"か"と"う".......!!」

「わぷっ.......!? く、くるちいの!」

「しゅきしゅき♡ だぁいしゅき♡ 愛してるわ!」


 アリスちゃんナイス! おかげでイリスの説教を回避する事が出来たわ! 金髪美少女ちゃんと美幼女が抱き合ってる姿を見るだけで色々と捗るわね♡


「ぐすんっ.......今日の晩御飯は豪勢にしなくちゃね。この絵は私の宝物にするね」

「イリスぅ〜ビーフジャーキーとプリンも食べたいなぁ」

「フェンさん.......任せて下さい。私が今日は何でも作ってあげちゃいます!」

「わぁ〜い♪ やったぁ!」


 お? この流れならワンチャンあるわね。私も便乗しよ♪


「ねぇ、イリス〜♪」

「お姉ちゃんは駄目です」

「ええぇ.......何で!? まだ私何も言ってないよ!?」

「お姉ちゃん、あちらの部屋で少しお話しをしましょうか♪」

「ヒィィ.......!? フェ.......フェンちゃん助けて! 主の危機だよ!?」

「あ、いたた.......僕急にお腹が痛くなっちゃったなぁ.......おトイレに行ってきますぅ.......」


 フェンちゃんの裏切り者おおぉぉぉおおおおお! 主の危機だと言うのに! フェンちゃん、美味しいご飯が食べれるからって、最近イリスの肩を持つ事が多くないかしら!?


「ねぇ、お姉ちゃん.......私何で怒ってるか知ってる?」

「え、思い当たる事が多すぎてよく分からないよぉ!」

「お説教です♪」

「ギャアアアアアアアアアア.......!?」

「主ぃ.......ごめん」


 ミレーナは首根っこを掴まれて、半ば強引にイリスに引き摺られながら奥の部屋へと消えて行ったのであった。


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【深淵の魔女】〜人間?の赤子を拾ったハイエルフは、母性に目覚めてママになる。 二宮まーや @NINOMIYA_M

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