第19話 悪いこと、教えてほしいの善司くん


 5月のGWゴールデンウィーク


 俺と先輩は、出掛ける事にした。

 

 どうせなら、ちょっと豪華なデートをしようという話になったからだ。


 その日は朝から快晴だった。

 自転車で先輩の家まで迎えに行く。

 玄関から出てきた先輩は、春らしいふわっとしたワンピース。

 正直、めちゃくちゃ可愛らしかった。


「どお? 可愛い? ほらほら~」


 だから煽んなって。

 照れくさくなってそっぽを向いてるのに、わざわざ視界に入ってくるから逃げられなかった。


「んー? 善司くん、赤くなってる? かわい」


 たっぷり見られたから恥ずかしいよ。




 人混みでごった返す駅から電車のった。

 がやがやと喧しい駅のロビーで離れないように自然と手を握った。

 最近は自然と触れ合える。先輩の暖かさが心地いい。


 一緒に居ても苦痛じゃないっていうのが良い。

 俺はむかしやらかしたことがあって、人との距離を取りがちだ。

 だけど、先輩と居たら、自分を消してしまいたくなるような気持ちは感じなかった。


 海沿いの線路を揺られる事、1時間半。

 そこは異国情緒いこくじょうちょあふれる港町だ。


 海にはりだしたモノレールから眺める港湾都市こうわんとしは、出不精な俺でもわくわくさせられた。


「善司くん、ほら! ほらあれ見て! すごいね!」


 子供みたいにはしゃぐ先輩は弾けるような笑顔だった。

 思い切って、出てきてよかった。

 先輩が笑ってくれてると、俺もうれしい。


 「早く行こ?」

 

 と先輩が手を引く。

 顔は大丈夫かな? きっとにやけてまくってるだろう。


 つなぐ手が柔らかい。指を合わせて、絡ませて。

 もう離れないようにぎゅっと握った。


 兄貴にバイト代の前借りをして軍資金はある。

 昼飯は、原色が舞い踊る中華街のレストランで食べた。

 コース料理を頼んだら、めちゃくちゃ豪華で、二人で目を丸くした。


「もう、無理! こんなに食べられないよ」


 笑いながらも、先輩もそこそこ食べてた。

 確かにすごい量だった。

 基本、残してもいいらしい。


 無理と言いながら、デザートはしっかり食べてる。

 点心を口いっぱいに頬張って、むぐむぐしている姿。

 前にハンバーガーをおごった時を思い出して、笑ってしまった。


「もー、何笑ってるの?」


 先輩は照れながら、両手で顔を隠してバタバタしてたな。


 2月の冬の夜。

 出会ってから色々あった。

 あの時はこんな関係になるなんて、思いもしなかった。


 赤レンガでできたお洒落な商業施設で、小物を見て回る。

 暖色の明かりに照らされて、いろんな品物がキラキラに輝いていた。

 それに一つ一つ、先輩は目を奪われてはしゃぎまわる。


 おい、コケるなよ。


 心配して、そう声をかけそうになるけど、

 

「ねぇねぇ、善司くん! これ可愛くない!?」

 なんて、ぱぁと笑顔を咲かせているのを見たら、何も言えねぇよ。


 俺と先輩は、そうやって、デートを楽しんだ。



 ◆◆◆



 夜の海辺の公園は、俺たちみたいなカップルだらけだ。

 対岸の夜景は信じられないぐらい綺麗で、先輩の目も輝いていた。


 でも、さ。

 そろそろだぜ。覚悟を決めろ善司。

 まぁ、暗黙の了解だからさ。

 先輩も分かってる。

 だから、俺から言わないとさ。


「あのさ、先輩。この後なんだけどさ――」


 こんな時間まで遊び歩いてるんだ。

 このまま帰る気なんてはじめから無いし、先輩もそのへんはわかってる。


「――うん、わかってるよ」


 で、先輩の手を取る。

 先輩は、伏し目がちで、ちょっともじもじして。

 何でそんなに顔赤いんだよ。


 夜景の中で見る先輩は世界で一番可愛い。

 素直にそう思う。

 

「予約、とってあるからさ。行こうぜ」


 そう言って手を引いたけど、


「まって。先に、こっち」


 手を広げてた。おいでって。

 にっこりと笑って。抱きしめてくれた。


 ――善司くん。大好きだよ。って





 ◆◆◆


 で、ホテルにチェックインしたって訳だ。


 ちなみに先輩もちゃんと親御さんにお泊りするって言っておいてくれた。

 俺の方も大丈夫。

 要兄貴がずっと、ニヤニヤしてやがったのがイラついたけどな。

 

 ホテルはめっちゃ綺麗だったよ。

 大きな窓からさ、夜景が見えてな。でっかい観覧車が見えるんだ。

 ライトアップされてた。それを二人で見たんだよ。


「でっかいねー」「きれいだなー」


 なんて、小学生かよ? 

 頭が悪い感じの感想言いあって。馬鹿みたいに喜んでクスクス笑ってさ。

 でもそれが楽しくて仕方なかった。



 それから、なんとなく無言になって、ベットに並んで座った。

 気まずくなって、二人で明後日の方向を向いてさ。

 何するか? 

 なんて決まってるのに、二人して言い出せないんだ。

 でもそういうもんだろ? 

 好きな人との最初のってのはさ。


 どっちからって事もなく、自然にキスした。

 前みたいな貪るみたいな激しいやつじゃなくて、大事に大事に、触れるみたいなキス。それから、体を寄せ合って。


 先輩が顔を近づけてくる。耳に触れるか触れないかの距離だ。

「善司くん、興奮してる?」


「してるに、……決まってるだろ」


「ふーん、そうなんだ」


 微笑んだ先輩は、するすると、タイツを脱ぎだした。

 挑発するみたいに足を上げて。いじわるな小悪魔みたいな顔。

 白くて、すべすべなんだろうな。スカートの裾から太股ふとももがちらちら。

 いや、それ以上も見えた。黒かよ。大人……。


「えへへ……、下着見えた?」


「……見えた」


「えっちだった?」


「……」


 正直、俺の目は座ってた。

 早く、もう待てん。と言わんばかりだったと思う。


「じゃこんなのは?」


 先輩が四つん這いになって、前屈みで俺の側に来る。

 上目遣い。挑戦的な目で見つめられた。

 好奇心と、興奮で、先輩の目もキラッキラしてた。


「胸、見える? おっきい?」


 ふるふると目の前で揺らされる。

 ぷるっぷるかよ。今年のメロンは豊作だなぁ。


 思わず手を伸ばしたが、触れるか触れないかのところで、先輩がさっと離れた。


「まだだめ……、善司くん可愛いんだもん。もうちょっとだけ遊ぼ?」


 先輩は後ろを向いて、束ねた髪を持ち上げる。

 白くて綺麗なうなじ。見蕩れるよな。


「この服、後ろにボタンがあるの。善司くんが脱がして?」


 言われるままに、一つずつ外す。

 全部外すと、肩を揺すって先輩が服を落とした。

 

 なんて、きれいな肩と背中なんだろうな。

 薄明りに照らされて、ゆっくりとブラを外す先輩は女神の像みたいだった。


 前からも見たい――、

 生唾を飲み込んで、うめくみたいにそう言った。


「うん。いいよ。――はい」


 って先輩は振り向いた。両手を広げてな。

 そのポーズ、俺が好きなの知ってやがる。

 

 で、顔は、めちゃくちゃ勝ち誇ってた。

 俺がだんだん余裕なくしてたのを楽しんでた。

 私の勝ちーみたいな顔。


「優しくしてね?」

 なーんて可愛く言った。


「――いや、すまん、煽られすぎて、無理だわ」

「へ?」


 俺は一気に、先輩を押し倒す。


「んにゃあ!?」

「てめぇ、覚悟はできてんだろうな――、散々挑発しやがって」


 攻守交替だ。今晩は寝られると思うなよ。

 気絶しても終わらねーからな。


「えっと……、一応確認だよ? 私初めてだから、そのゆっくりね?」


「無理」


 先輩の提案を一刀のもとに却下した俺は、その生意気なおっぱいから攻略することにする。


「ん、強いかも……」

「俺知ってるんだぜ。先輩、強くされる方が好きだろ?」


「ばれてた」

 ペロっと舌を出す先輩。お見通しだよそんなもん。

 




 そんな感じで、俺と先輩は過ごした。

 もっと見せろ? やなこった。先輩は俺のだからな。


 

 俺たちは今を生きてる。一日一日が大事だ。

 しんどい事もあるし、クソみたいなこともある。

 でも、いい事だって沢山ある。それが青春ってもんだ。

 

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