第4話

どこまで話したっけ?あ、俺が引っ越すところまで?オッケー。と言ってももうそんなに話すことないんだけどさ。


それで、俺は親父と全然知らない土地に行ったわけ。

よし、新生活だ!なんて呑気なことも言ってられなくて新しい家、新しい学校、新しい友達。もう目の回るような忙しさだったよね。

どうも越してきた土地は昔親父が暮らしてた土地らしくて。父方の祖父母、つまり親父の両親はすでに他界しててそんな話も聞いたことなかったし、正直俺はだからなんだって感じで何かが変わるわけでもなかった。今思えば、親父は辛かったのかもな。おふくろと過ごした町に居続けるのが。


そうそう、付いてしばらくして、荷ほどきのとき気づいたんだけど俺のカバンの中に見覚えのない本があったんだよね。カバーがしてあったから表紙をめくってタイトルを見てみたら彼女が好きだって言ってた本だった。……あー、でも読んでないんだよね。だって、それ恋愛小説だったから。失恋して傷心なのにいくら彼女の好きな本だって言ったって読む気にはなれなかった。ひょっとしたら俺が気づかないうちに貸してくれてたのかもと思ったけど、もうあの町に戻れる感じではなかった。借りパクみたいであれだけど、最後だし……なんて自分を納得させたよ。ずるいね。


あの本、どこにしまったっけ。多分ここかな?あった。よかった、綺麗なままだ。虫食いとかあったらショックだけど……大丈夫っぽい。

ん?読んでみたいの?意外、恋愛もの好きなんだ。いいよ、俺の代わりに読んであげて。

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