第8話

 2040年4月、睦月は看護師としてつくば市郊外の武蔵むさし病院に勤務していた。

 その日もいつもと変わらぬ日常を過ごしていた睦月だったが、勤務先の病院では指の傷の患者が毒物検査でICUに運び込まれたり、各地で何らかの事件が頻発し、テレビやラジオでは臨時の緊急ニュースが放送されていたが、睦月は何らかの違和感を抱きつつも特に気にすることはなかった。


 その翌朝、睦月が目覚めると、近所に住む少女の弓子が顔に重傷を負った姿で、寝室の前に立っていた。薔薇男は慌てて駆け寄るが、次の瞬間弓子の首筋に噛み付き、そのまま食い千切る。凄まじい血飛沫と共に死亡する薔薇男の姿を目の当たりにした睦月は必死に救助を呼ぶが、電話は輻輳して繋がらない。その傍では、死んだはずの薔薇男が起き上がり、驚く睦月に牙を剥いて襲い掛かる。睦月は間一髪で家から脱出するが、家から出た彼女が見たものは、見慣れた家屋が炎に包まれ、人が人を襲うという混沌の世界であった。睦月は止めてあった車に乗り込むと急いでエンジンを吹かし、アクセルを踏み込む。


 なおも恐ろしい形相で四肢を振り上げながら追い駆けてくる薔薇男を何とか振り切った睦月は、当ても無く車を走らせ続ける。

 睦月がやってきたのは亡き蛍の実家だった。

 突如、昨夜見た眼科医が睦月の目に納豆を入れる夢を見て笑いが込み上げてきた。

『怪力』の魔法を覚えた睦月は玄関のドアを蹴破り、蛍の部屋のクローゼットで蛟を見つけた。

 10歳くらいのガキが目を擦りながら「お姉ちゃん、何してるの?」と立っていた。

 きっと、不法侵入したガキに違いない。

 睦月は蛟でガキの腹を突き刺した。 

 2030年12月にタイムスリップした。その当時、睦月は17歳だった。

 あのガキは蛍の甥っ子だ。

 睦月は悪魔になり果てた。

 母校であるつくば高校は要塞となっていた。蛍が過去に戻って歴史を変えたことが原因だ。

 基地内で蛍によく似た兵士が働いていた。

「あれ、蛍?」

瑠璃川るりかわだけど? おばさん誰?」

「2040年からやって来た」

「頭、大丈夫?」

 

『ハデス社』は巨大要塞を築き、上杉郡司うえすぎぐんじの指示の下で、ウイルスの研究や実験を繰り返していた。その要塞を睦月が襲撃。要塞は壊滅的なダメージを受ける。


 郡司は要塞をあっさり見限りヘリコプターで1人逃亡、予め仕掛けていた特殊爆弾を爆破する。睦月もろとも、つくば周辺は要塞ごと消滅した。

郡司は勝利を確信するが、瑠璃川は生き延びて郡司と同じヘリの中にいた。瑠璃川は郡司を追い詰めるが、瑠璃川は郡司の使った魔法により視力を失ってしまう。

 さらにヘリがつくば山に墜落し、郡司を取り逃がしてしまう。この世界では郡司が薔薇男のブレスレッドを手にしていた。郡司はハッキングをすることで『ブラインド』の魔法を得ていた。


 それから数カ月後の5月3日、瑠璃川はブルガリアにあるというデヴュタシュカ洞窟を訪れていた。

 洞窟は、ブルガリアの首都ソフィアから、北東に200km程のところにある大きな洞窟だ。

 まるでドラゴンの住処のような場所。しかも、ほとんど観光客もいない。

 ちなみにこの洞窟は、冷戦時にソビエト側の軍事兵器保管場所だった。確かにこの大きさなら、大型の戦車や戦闘機も余裕で格納できる。

 その時、瑠璃川を1人の女が襲撃。瑠璃川は苦しめられながらも、フリスクナイフという全長18.5Cmの隠しナイフでその女を倒す。瑠璃川は服の下にフリスクナイフを隠していた。

 なんとその女は17歳の睦月だった。

 ほどなく意識を取り戻した睦月は記憶喪失になっており、自分の名前さえ覚えていなかった。

「腹を刺しても死なないって……」

 瑠璃川は唖然としていた。


 翌日、瑠璃川と睦月は他の生存者を求め、洞窟内に隠してあった小型ヘリでソフィアに向かった。

 すると、おびただしい数のアンデッドに囲まれた刑務所の屋上に生存者を発見し、そこに着陸する。瑠璃川達は生存者達から、ホタルって怪物の存在を知らされる。


 ソフィアはヨーロッパ最古の都市の一つであり、セルディカ 、スレデツ 、トリアディツァと呼ばれた。その歴史は7千年以上に及ぶとされる。有史以前の集落跡が現在のソフィアの中心や王宮の付近、オベリャ 、スラティナなどで見つかっている。トラキア人が最も重要視していた、鉱泉の周囲に町を築いた紀元前7世紀にさかのぼる城壁は良いコンディションで保存されている。鉱泉は現在も湧水がある。時代の変遷とともに幾つかの異なる名前で呼ばれてきたソフィアの数千年にわたる歴史の痕跡は、今日でもその一部を見ることができる。


 ソフィアは町がバルカン半島の中心に位置している。

 バルカン半島は、東南ヨーロッパにある地理的領域であり、地理的・歴史的に様々な意味合いと定義付けの下で使用される概念である。名称はバルカン山脈からきている。この山脈はセルビアとブルガリアの国境から黒海沿岸まで、ブルガリア全土を横断している。バルカン半島は北西をアドリア海に、南西をイオニア海に、南と南東をエーゲ海に、そして東と北東を黒海によって区切られている。


 瑠璃川と睦月はアドリア海上のタンカーに降り立った。

「もう燃料がないわ」

 睦月は泣きそうだった。

 甲板で瑠璃川たちはフィリピンに棲んでいる怪物、マナンガルに襲われた。シキオル島の魔女で昼間は普通の女性だが、夜になると上半身と下半身を切り離し、コウモリみたいな翼を生やし飛び回り人間の生き血を吸うのだった。

 睦月はピアニストを目指しており、最近、フランツ・リストの『ラ・カンパネラ』が弾けるようになった。睦月はMusicPoint(以後MP)が上がると様々な魔法を使えるようになる。

『ラ・カンパネラ』を弾けるようになると視力を回復することが可能になる。

 フランツ・リスト(1811年10月22日 - 1886年7月31日)は、ハンガリー王国出身で、現在のドイツやオーストリアなどヨーロッパ各地で活動したピアニスト、作曲家。

 Campanellaは、イタリア語で「鐘」という意味である。

 睦月が「フンフンフン♪」と『ラ・カンパネラ』を口ずさむと瑠璃川の目に光が飛び込んできた。

 瑠璃川はMilitaryPoint(以後MP)が上がると魔法を使えるようになる。

 瑠璃川は去年、武漢で中国兵と戦った。敵から見える場所に手榴弾を使ったトラップを置いておき、細い道しか通れなくさせた。何個かはダミーの手榴弾が紛れていた。また、見える場所に地雷を1つ敷設させると、敵の動きが遅くなったりした。気を倒したり、爆薬で落石を起こして道を塞いだりもした。

 瑠璃川は下士官から准士官にレベルが上がっていた。

 瑠璃川は爆破魔法でマナンガルを倒した。

「どうして早く魔法を使わなかったの?」

「魔法を使うと呪われるって噂だったから」

 

 アドリア海の海港として知られる都市には、ヴェネツィア、バーリなどがある。イタリア半島側に位置するルネサンス期のヴェネツィア共和国は、東方との貿易で利益を上げ、「アドリア海の女王」の異名で知られ、現在もその特異な町並みを見ることができる。


 バルカン半島側では、クロアチア沿岸部が複雑な地形をもち、風光明媚な景観を構成している。保養地、景勝地が点在し、中でもドゥブロヴニクは「アドリア海の真珠」と呼ばれる。


 バルカン半島からEU諸国への亡命は、しばしばアドリア海を横断してイタリア経由で行われる。近年はアルバニアの経済破綻による経済難民がイタリア南部に集中して社会問題となった。

 ニシン漁やウナギ漁が盛んである。

 タンカーはヴェネツィアに辿り着いた。

 

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