第2話
8月13日
蛍は睦月と鎌倉に出かけた。駅に着きキヨスクでパンを買った。どんよりした空、駅前にはレンタサイクル屋がある。コンビニの前には屋台が並び、焼きおにぎりや焼きモロコシを売っている。由比ヶ浜は大賑わい。
睦月は白黒ボーダーTシャツ、ワイドパンツ、ベレー帽、赤いバックの組み合わせのフレンチマリンスタイルだった。
睦月は素足を浸してキャッキャッはしゃいでる。
「ヒンヤリしてるね?」
魚がユラユラ泳いでいる。🐟
昨日、ディスカウントストアで買ったシートを砂に敷いて座ってパンを食べた。🥐🥖🥪
随分前から酒とBGMが禁止になった。
「パパが若い頃はオッケーだったみたいだよ」
海に入った。睦月はクロールや平泳ぎなど水泳が得意だ。蛍はカナヅチだ。海から出て、民家風のレストランでチキンカレーを食べた。
「パクチーが効いてるね」
睦月は苦そうな顔をしている。
翌日、蛍は久々に官邸を訪れた。茨城県民はかつて東京でテロを起こしたことから、監視レベルが高い。一般人は県外から出ることを許されていない。
蛍は父親が副首相だから特別待遇だ。
父の壱太はかなり白髪が増えていた。
鎌倉に行ったことを話したら母と昔遊びに行ったことを話していた。
「あのときは鎌倉で遊んでから大崎を経由して、お台場に行ったんだ。TOYOTAのサーキット場や、アメリカのレトロな車が飾られていた」
壱太はソファで葉巻を燻らせていた。
「そうなんだ~」
「エッチとかはしてないだろうな?」
最近もラブホテルで爆破事件が起きた。政府の送り込んだチームの仕業らしい。
「安心してよ。てか、デリカシーないから」
「スマンスマン。話は元に戻るが、あんときはガンダムの実物大の足の部分が完成していた。テレビ局に入ったんだが、チケット代が高かったから入らなかった。軽食屋でシナモンパンを食べたのを覚えてる」
蛍には気になってることがあった。
壱太のすぐ後ろにある水槽だ。その中にたくさんのサソリがいるのだ。🦂🦂🦂🦂🦂
「気味悪いな」
「八重山諸島に行ったときに持ってきた」
「毒とか怖そうだ」
「無毒だから大丈夫だ。ヤエヤマサソリは単為生殖で、1匹だけで殖える」
「タンイセイショク?」
「メスだけで増えるんだ。我々人間も単為生殖ならいいんだけどな?このまま行ったら、日本は滅ぶんじゃないか?」
「その頃には俺も父さんもこの世に存在しないよ」
「安穏としてるな? 就活は順調なのか?」
蛍には政治家になる野望はなかった。ゲームクリエイターになる夢があった。
「安心してよ」
「ブラジルに行ったときにサジマズタランチュラってのに遭遇した。紫色の蜘蛛でな……」
蛍にはどうでもよかった。睦月とセックスがしたい。
9月12日
今日は睦月の22歳の誕生日だ。ポインテッドパンプスという赤い靴をプレゼントした。
睦月は最近、髪型をアイドル風前髪に変えた。
翌日、蛍の祖父が亡くなった。
昔は冒険家をしていたらしい。明け方、ポータブルトイレに座った途端に苦しみ出し3秒くらいで亡くなってしまったらしい。最後に電話したときは声が随分小さくなってしまっていた。89歳だから大往生だ。
祖父はBOROの『大阪で生まれた女』が好きでよく聴いていた。
『大阪で生まれた女やさかい〜♪』って歌だ。蛍は『サカイ引越センター』の歌とばかりずっと思っていたが違かった。
9月18日
遂にお別れの日になってしまった。前日に弟の
午前10時に官邸を出て、ディスカウントストアに寄ってコーヒーやお茶を買ったが開始まで時間があるので、新江戸市にある葬儀場近くの公園で時間を潰した。
「昔、じーちゃんと来たよね?」
ベンチに座っていた伝丸が言った。
「うん」
公園近くには神社があり、料理の神様が祀られてる。
「空気が読めないところがあった」
中学生の時、レストランに連れてきてもらったのだが、歳の離れたカップルがいたら「あれはきっとわけありに違いない」と暴言を吐いていた。
つい最近、『暴言王』ってバラエティ番組が終わったがあれに出れたかも知れない。一般人とゲストで言い合いする番組だ。
12時前に葬儀場に入った。遺影を眺めた。祖父は満面の笑みだ。控室に入り、お茶を飲んでいたら伝丸が母がパンを食べてるところをデジカメで撮っていたので笑ってしまった。
親戚が次々にやって来て打ち合わせをした。
13時丁度に式がはじまる。木魚の音が響く。蛍は思わず泣きそうになった。出棺のとき、この世からいなくなってしまうと思うととても悲しかった。
棺がレールに乗せられ、火葬場へと運ばれていく。焼き上がるまで食事をした。ビールを飲んだり、茶碗蒸しを食べたりした。刺し身が美味しかった。隣の席の人がいなくて、その分ももらった。
お骨拾いは少し不気味だった。階段を上がっていく。頭の骨がほとんど残っておらず、入れ歯の金属が残ったりしていた。不思議な黒い玉を蛍は拾った。何か凄まじいオーラを感じ、ズボンのポケットに入れた。
骨壷に祖父の骨を納め式は終わった。
穏やかな秋の日差しが丸い窓から差し込んでいた。
9月25日
蛍はパラシュートで柳生邸近くに忍び込む作戦を立案した。
自衛隊の指導を蛍たちは受けた。指導教官は
自由降下を行う場合、地上の敵軍から音も姿も捉えられないよう、飛行機からの跳び出しは高度27,000フィート (8,200 m)以上で行われる。空挺部隊で標準的な自動開傘索方式では高度500–820フィート (150–250 m)程度で跳び出しを行うのに対し、このような高高度で跳び出しを行うと、低酸素・低気温など高度が人に与える影響が遥かに深刻になるため、酸素吸入が必要となるのを始めとして、装備も異なる部分が多い。
陸上自衛隊の場合、降下中に酸素マスクを装着できる専用のヘルメットを着用するほか(降下後に使用するための戦闘用ヘルメットも携行する)、背嚢も、一般隊員用とも空挺用とも異なるものを使用する。また89式5.56mm小銃も、折曲銃床式を使用する点では通常の空挺隊員と同様だが、布製のケースに収納するのではなく、脇部分にそのまま固定して降下する。パラシュートの形状も異なっており、自動開傘索方式で使用する13式空挺傘は円形であるのに対し、自由降下では上記のように操縦性能が要求されることから、自由降下傘MC-4はパラフォイルと同様にラムエア式を採用して長方形となっており、熟練した隊員であれば誤差30センチ程度の範囲にピンポイントで降下できる。空挺教育隊に設置されている自由降下課程を修了すると、自由降下の略語である「FF」の文字が入った徽章を着用できるようになるが、これは空挺隊員として最上位の降下技術を持つ証とされている。
市域は甲府盆地の中央部を南北に縦断する形で位置しており、周囲を奥秩父山塊、御坂山地、南アルプスなどの山々に360度囲まれたその地形を1939年(昭和14年)の一時期、市内に住んだ太宰治は、著書「新樹の言葉」の中で、「シルクハツトを倒(さか)さまにして、その帽子の底に、小さい小さい旗を立てた、それが甲府だと思えば、間違いない」と表現した。市街中心部の標高は約250mから300mであるが、市域全体の標高差は大きく、最低部は市域南部の笛吹川付近の標高約245m、最高部は市域最北端、長野県川上村との境界にある金峰山の標高2,599mと実に標高差は2,350mに達する。市域北側の大半は秩父多摩甲斐国立公園に属し、奇岩と渓谷美で知られる御岳昇仙峡(国の特別名勝)は山梨県を代表する観光地である。
柳生邸は笛吹川の近くにある。
睦月は館にメイドとして潜入している。
彼女からの情報では、住宅は南を正面とする2階建てで、西北隅に3階建ての塔屋が付属する。この塔屋の1階部分に玄関を設け、そこから東西方向に廊下が延び、廊下の南に3室が東西に並ぶ、片廊下式の間取りである。1階の3室は書斎、応接室、食堂と名付けられている。1階の南側と東側は菱格子を組み込んだガラス戸で囲われたベランダとする。南側ベランダには2箇所に突出部を設け、突出部の上にはペディメント(切妻破風)を設ける。1階居室は、ベランダの突出部に対応する位置(2箇所)にベイウィンドー(出窓)が張り出している。創建時にはベランダは開放で、2階には4室があり、寝室3室と居間として用いられている。
さらに、庭には番犬のドーベルマンがいる。
睦月から9月25日に柳生はゴルフコンペで留守にすると連絡があった。
パラシュートを着陸させた蛍は庭にいたドーベルマンにドックフードを食べさせた。餌には睡眠薬が入っており、ドーベルマンは気持ちよさそうに眠り始めた。
桃太郎はマゾレベルが高くなるとMP(マゾポイント)が上昇して魔術が使えるようになる。
蛍は庭で桃太郎にローソクプレイを施した。
日本では、古くから照明用としてハゼノキから作られた和ろうそくが一般的に用いられていた。いつごろからか、この和ろうそくを用いたSMプレイが生まれ「蝋燭責め」「蝋燭プレイ」などと呼ばれている。和ろうそくは、一般的に市販されている西洋ろうそくとは違い融点が低いので、火傷するほど熱いわけではないが、安全に細心の注意が必要なのは変わりがない。日本だけでなく、国外でもろうそく責めはメジャー化しているが、これは和ろうそくと同じ樹脂を含んだ松明から滴る溶けた樹脂を、17世紀頃に拷問に用いたことから転化したものと思われる。そのためキャンドル・プレイではなくワックス・プレイと呼ばれる。
熱い蝋が無防備な肌に触れると、かなり熱さを感じるとともに蝋が固まるまでその熱さがじんわりと続く。
「アウ〜!」
桃太郎は喘いだ。
桃太郎のMPがグングン上昇し、どんなドアでも開けるスキルを得た。
玄関の扉が開いた。廊下の南にある部屋に入った。
隠し金庫が置かれてある。芥川龍之介の『
唐王朝の洛陽の都。ある春の日の日暮れ、西門の下に杜子春という若者が一人佇んでいた。彼は金持ちの息子だったが、親の遺産で遊び暮らして散財し、今は乞食同然になっていた。
そんな彼を哀れんだ
3度目、西門の下に来た杜子春の心境には変化があった。金持ちの自分は周囲からちやほやされるが、一文無しになれば手を返したように冷たくあしらわれる。人間というものに愛想を尽かした杜子春は老人が仙人であることを見破り、仙術を教えてほしいと懇願する。そこで老人は自分が鉄冠子[9]という仙人であることを明かし、自分の住むという峨眉山へ連れて行く。
峨眉山の頂上に一人残された杜子春は試練を受ける。鉄冠子が帰ってくるまで、何があっても口をきいてはならないというのだ。虎や大蛇に襲われても、彼の姿を怪しんだ神に突き殺されても、地獄に落ちて責め苦を加えられても、杜子春は一言も発しなかった。怒った閻魔大王は、畜生道に落ちた杜子春の両親を連れて来させると、彼の前で鬼たちにめった打ちにさせる。無言を貫いていた杜子春だったが、苦しみながらも杜子春を思う母親の心を知り、耐え切れずに「お母さん」と一声叫んでしまった。
叫ぶと同時に杜子春は現実に戻される。洛陽の門の下、春の日暮れ、すべては仙人が見せていた幻だった。これからは人間らしい暮らしをすると言う杜子春に、仙人は泰山の麓にある一軒の家と畑を与えて去っていった。
蛍は栞に書かれた『09044332562』という電話番号を見つけた。
蛍が電話をしてみると相手が石和に住んでいる富豪、
蛍をその場に残し、桃太郎と睦月は石和に向かう。睦月はスピッツの『涙がキラリ☆』に乗りながらミニクーパーを運転してる。桃太郎は助手席でうたた寝してる。
石和温泉駅から笛吹川まで近津用水路を中央に、東西約1kmにわたり温泉街が伸びている。
全盛期の宿泊施設は大小合わせて120軒超と、その規模は熱海に次ぐとも言われていたが、現在は50程度の温泉旅館が営業している。
宿泊施設は団体客向けの大型施設から家族向けの旅館、純和風の高級旅館など様々である。以前は宿泊前提であったが、日帰り旅行向けの施設も増えてきており、健康ランドをはじめ有料の「石和源泉足湯ひろば」という足湯及び手湯も存在する。
共同浴場は石和温泉駅を南下し、平等川を渡った市部地区に「石和温泉」という名前の浴場が1件存在する。
別所邸に辿り着いた2人が、不自然に厳重な警備システムを抜けて中を探索していると、強羅が現れる。
「おまえのせいでパパは!」
睦月は父親を殺した死神に向かって吠えた。
笑い魔術もこんな状況下じゃ使えない。
睦月は桃太郎の尻をヒールの爪先で蹴った。
「アウッ!」
普通なら悶絶するが、桃太郎は笑みを浮かべた。
桃太郎は右手を広げて、炎を放った。
「パイロキネシスじゃねーか!」
強羅は驚いている。
数秒後、強羅は火達磨になった。
炎から逃げる為に2人は別所邸から逃げ出した。
避難所でうまい棒を食べながら桃太郎が言った。
「別所ってのは偽名だったのかな?」
「知らないわよ。お尻大丈夫?」
「気持ちよかった」
「M」
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