反逆Quest 

鷹山トシキ

第1話

〆切2023年4月10日23:59



 2035年のゴールデンウィーク

 浅井蛍は2013年に生まれた。生まれたときは、コロナとか影も形もない。今年で22歳、長野大学にいられるのも後少しだ。長野といっても長野県にあるわけではない。場所は茨城県つくば市にある。創設者の名前が長野昌幸ながのまさゆきというのだ。

 三村睦月みむらむつき目黒桃太郎めぐろももたろうとは大学のロビーで3年前に知り合った。

 

 憲兵の命がけの報せを受け、父であり副首相の浅井壱太から、柳生裕二やぎゅうゆうじ討伐を依頼された。裕二は柳生十兵衛の末裔だ。

 裕二は甲府にある『柳生食品』の社長だ。

 須藤首相は若い頃、『柳生食品』で派遣社員をしていたが派遣切りに遭ったらしい。

「年越し派遣村とか、お父さんが若い頃大変だったんでしょ?」

 4月29日、官邸で壱太と喋っていた。

「俺と須藤は幼馴染みなんだ。アイツからよく殴られたりした」

「悪そうな顔してるもんね?」

「言葉を慎め」

 蛍は壱太から銃と防弾チョッキを受け取った。

「親父は俺に死んでもらいたいの?」

「んなこたない」

 壱太はタモリの真似をしたが全然似ていなかった。

 蛍の服の色は海みたいな青色だ。

 

 睦月はコロナの後遺症のせいで攻撃力とHPは低く、扱える武器の種類も少ないが唱えられる呪文の種類が豊富でMPと素早さが高い。呪文による後方支援を専門としており、今作での最強攻撃呪文イオナズン、味方1人を全快させる回復呪文ベホマなどを覚える。最高レベルは35。


 5月1日

「君の妹ってどんな人?」と、蛍。

「陽子か? そうだな……はっきりと物を言う勝気な性格かな?」と、桃太郎

 旅の途中、狭山のドライブインでニュースを見ながら食事をした。首相の須藤誠一が記者会見に応じている。

『日本がコロナになったのは私のせいではないだろ』

 蛍はたぬきうどん、睦月はきつねそば、桃太郎はカレーライスをそれぞれ食べた。 

「目黒って中学の時って部活は何やってた?」

 蛍は尋ねた。

「バスケ部だよ」

「奇遇じゃん?俺もだよ」

 蛍のポジションはパワーフォワード(PF)だ。ゴール下の守備が任務だ。高身長の蛍には持って来いだ。180cmもある。

「ポジションは?」

「ポイントガード」 

「PGか」  

 司令塔であり、ゲームメーカーだ。パスをしたり、指示をするのが任務だ。

 食事を終えた蛍は自宅近くにある図書館で借りた、垣根涼介の『室町無頼むろまちぶらい』を読んだ。

「蛍は本が好きだよね?」

 カップに注がれた水を飲み、睦月が言った。

「うん。狭山って言ったらトトロだよね」

「今、本の話してたのに」

「垣根涼介は『ギャングスターレッスン』とかが面白いよ」

「どうでもいいが、早く行こうぜ」と、桃太郎。

 桃太郎は壱太から裕二を殺してくれたら、5万やると約束されていた。

 蛍は壱太から裕二を殺してくれたら、グアムに連れてってやると頼まれていた。

 睦月は壱太から裕二を殺してくれたら、ルィヴィトンのバッグをプレゼントすると約束されていた。

 睦月にはたくさん笑うと魔法を使うことが出来る。

 

 桃太郎の運転する、フォルクスワーゲン社のゴルフの助手席で、睦月は大笑いしていた。テレビでドリフターズのコントがやってる。

『あ? ボラギノール?』

 志村けんのギャグに、睦月は飲んでいたデカビタを鼻の穴から出して笑った。

「きったねーの」

 桃太郎は露骨に嫌がる。

 飯能のムーミン屋敷のすぐ近くをゴルフは走ってる。

 後部席で蛍は浮かない顔をしていた。

 これから人を殺さないとイケないと思うと溜め息が出る。

「ん?」

 バックミラーを見た桃太郎の顔が険しくなる。

 黒いスポーツカーが颯爽と洗われた。

 壮絶なカーチェイスが始まった。1度はうまく撒く事に成功した桃太郎だが、パトカーの姿を見た桃太郎は隠れようとバックしたところ、今まで凄まじいカーチェイスでも傷一つ付ける事のなかったのミラーを駐車中の車にぶつけて壊してしまい、そのことで不機嫌になったゴルフはエンストを起こしてしまう。そのせいで隠れて避けようとしていたそのパトカーに見つかってしまった。何とかエンジンが動き、敏腕刑事の尾藤びとうらの激しい追跡を受けているうちに、事故を起こし渋滞が起きている橋にさしかかる。身動きが取れず立ち往生かと思われたその時、荷台が空であったキャリアカーに向かって発進し、その荷台をジャンプ台に使った荒業で並んでいる車を飛び越して逃亡に成功した。

 睦月は雲に向かって念力を送った。ゴロゴロと雷鳴が轟き、稲妻が走った。ピカッ!⚡

 尾藤の運転する覆面パトカーに落ちた。

 パトカーのボンネットから黒い煙が立ち昇り、爆発炎上した。

 

 2035年、茨城県は『青の壁』に覆われ須藤誠一によって統治されていた。

 蛍はガラス製の集合住宅に住んでおり、道路には盗聴器が仕掛けられ、空には監視用の航空機が飛行するなどプライバシーは一切無かった。全ての住民に番号が割り振られていた。コロナ拡大を防止するために、性行為さえ当局が関与する完全なる管理社会であった。


 蛍を含め、そういう社会を誰も疑問視せずに統制された生活を送っていた。ところが、睦月が国家転覆を企てていると知った蛍は次第に感化され、科学だけでは割り切れない人間の行動や感情を取り戻して行く。しかし、宇宙船を製造していた睦月の父、三村雷也が飛行実験を行った直後、密告により計画は失敗に終わり、雷也は拷問・処刑された。

 

 拷問を行ったのは須藤誠一の腹心、強羅ごうらだ。強羅はどことなく哀川翔に似ている。

 百刻みという、酒で酔わせ痛覚を鈍らせた上で、身体のあちこちの肉を削いで行く拷問を施した上、銃でこめかみを撃って雷也を殺した。

「須藤先生に歯向かうのが悪いんだ」  

 強羅はミンチ状態になった雷也につばを吐いた。


 6月27日、午後7時。蛍は図書館で有栖川有栖ありすがわありすの『スウェーデン館の謎』を借りてガラスの館で読んだ。

 火村英生役は堂本剛、アリスの役は堂本光一がいい。


 同じ頃、睦月はスペイン語を独学で勉強していた。開けるはアブリル、味はサボル、家はカサ、安全はセグロ、行くがイル、痛みがドロル、糸がイロ。 

 

 桃太郎は大学の実験室にいた。ワトソンというAIは大門未知子でも難しいガンを見抜く。


 残間順次ざんまじゅんじはミュージカルの演出家としてのキャリアを諦め、映画館で上映前に上演されるプロローグの演出をすることとなる。日本中の映画館で需要のある膨大な数のプロローグが次々と舞い込み、同僚たちからプレッシャーをかけられるが、身近に情報を漏らす者がいるらしくアイデアをライバルにどんどん盗まれ仕事はハードになっていく。

 あまりにも忙しすぎて、バイトの陽子が残間に恋していること、陽子が身を粉にして残間に尽くしていることに気づかない。


 チェーン展開しているビッグバン映画館の大きな契約話が舞い込むが、契約を締結するには一晩で3つの別々の劇場で豪華なプロローグを上演し、ミュージカル俳優の瑞巌寺善吉ずいがんぜんきちに印象付ける必要がある。3曲の振付やリハーサルの様子が漏れるのを防ぐために残間およびスタッフたちは缶詰めとなる。

 

 堂本薔薇男どうもとばらおは叔父からもらったブレスレッドのお陰もあって、残間から作品を盗んだことにより眠りの魔法を覚えた。

 ブレスレッドは悪業を魔法に変えることができた。


 桃太郎は最近、髪が薄くなってM字ハゲになった。

「まだ、20代なのに……」

 自宅の鏡で生え際を見て溜め息を吐いた。

『ハゲたね? 河童みたいじゃん?』

 バイト先のファミレスの店長、雑司ヶ谷大輔ぞうしがやだいすけから侮辱された。

 交通事故にでも遭えばいいのに。そう思った矢先、車に轢かれたからビックリした。死ぬことはなかったが、雑司ヶ谷は車椅子生活になってしまった。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る