Ep.20 望み

 お前の望みはなんだ?


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 あのお方の気持ちを知る事ができた。私は幸せだった。

 後は、彼の隣に胸をはって立てる自分になりたい。


 ――――――――


 姉様に認められたい。その為なら何でもするわ。

 この任務をやり遂げれば、きっと姉様は私を褒めてくれる。


 ……手伝ってくれるの?

 貴女にはなんの得にもならないのに?


 ――――――――


 今まで何かを望んだ事はない。生まれた時からずっとそうだった。

 でも、もうそれも終わりにしよう。そうではない生き方を、お前が教えてくれた。


 俺は自由になりたい。そして……


 ――――――――


 皆になんと言われようと、この任務を受ける事を選んだのは自分自身だ。

 ならば、この役目を成し遂げなければ。


 魔王を倒す。その為に私はこうしてここに居るんだ。

 その為に、力を貸してくれないか?


 ――――――――


 ルイは、神の国に帰してあげなければ。

 私たちの一方的な都合で、彼女を振り回している。本当ならこんな場所に居るはずの無い者なのに。


 そうルイに伝えても、大丈夫だと言って健気に微笑む。

 せめて、つらい思いをしないよう、傷つく事のないよう、彼女を守ってやらないと。


 ――――――――


「本当は……」


 あの時、言い掛けて言葉が詰まった。


 ああ、やっぱり言えなかった。

 言ってしまったら、きっと彼は私から離れていってしまう。


 いや…… 本当はそれでいいのだ。それが彼の為なのだ。


 私の我儘わがままで彼を縛り付けている。

 彼から、自由に飛び立てる翼をもいでしまったのは私だ。

 あの鳥たちのように、もっと自由に飛び回ってもいいのに。

 こんなけがれた私なんかに…… とらわれている事はないというのに。



 見上げた空を行くのは渡り鳥の群れだろうか。彼らが飛び去る姿をそのまま目で追いかけた。

 その後を追うように手を伸ばしかけ、止めた。


 本当は自由になりたいんじゃないのか?


 言えない言葉を、聞けない気持ちを、空に向かって呟いた。

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