34 邂逅/デニス(1)
◆登場人物紹介(既出のみ)
・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。帰省先の故郷から王都に向けて帰還中。神秘魔法で大黒狼や大人の姿などになれる。
・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属するAランクの先輩冒険者
・デビット…ワーレンの町冒険者ギルドマスター
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昨日の俺は、我ながらどうかしていたんだと思う。
おそらく、昨日からリリアンの一人旅の話を聞いて、心配が
だがあの程度のダンジョンで、あんなに取り乱してしまうとは。
そしてリリアンを引き止める為とはいえ……
宿でも、八つも年下のリリアンにあんなに気を遣わせてしまった。
うん…… 彼女は、ちゃんと年下のはず、だよな?
確かに彼女の言動がやたらと大人びていると感じる時は、たまにあったが。
あの時は何が起こったのか良くわからなかった。どうやら特殊な魔法石でも使ったのだろうか?
昨日の…… リリアンが見せた、あのリリスと名乗ったあの姿は……
……俺の好みだった。
彼女の事を思い出すと、胸が少し詰まる……
今まで女と付き合った事は、そりゃあ無いわけじゃないし、一度や二度じゃない。でもいつも何かが違う気がしていた。
その違和感の正体は…… 多分、俺は自分ではわかっているんだと思う……
彼女は…… あのリリスは…… その違和感をあっけなく
容姿だけじゃない。あの視線、仕草…… かけてくれた言葉……
全て俺の心の中の何かを揺り動かすものだった。
いや違う。あれはリリアンだ。リリスなんて別の女じゃない。
でも、あと何年かすれば、リリアンはあんな女性になるのだろうか……
昨晩リリアンからは、ダンジョン攻略を手伝ってほしいと頼まれた。今後、冒険者としていくつか行きたいダンジョンがあるらしい。
彼女が行こうとしているそのダンジョンの多くは、おそらく昨日のダンジョンと製作者――ダンジョンマスターが同じだと言うのだ。
そして俺のトラウマになったダンジョンもその一つなのだろうと。
この国にあるダンジョンの
魔王が倒され、魔族が居なくなってもダンジョンはそのまま残る。人々はそこに残された魔族の遺産を求めて、ダンジョンに潜る。
ダンジョンはそのマスターによってクセがあり、その魔力の匂いなどで判別がつくそうだ。
リリアンは『鼻がいい』ので魔力の匂いに気がついたと言っていた。おそらく俺にも魔力の匂いがわかったか、もしくは気配などで察したのではないかと。
「英雄になりたいのなら、慣らしておいた方が良いんじゃないですか?」
確かにそうだろう。このままではとてもじゃないが英雄には選ばれない。
彼女には逆に迷惑をかけてしまうかもしれないが、事情を知った上で慣らしに付き合ってもらえるのなら、それは有り難い事だろう。
* * *
今日はまず冒険者ギルドに行って、リリアンが預けていたものを受け取りたいそうだ。
朝のうちからギルドに伺うのは迷惑ではないかと思ったが、他に用事がある訳ではないので、ひとまず行ってみようという話になった。
ギルドに行くと、思った以上には空いていた。
受付嬢によると、例のダンジョンの調査が終わったので若干落ち着いたらしい。少し前にはあちこちの町から調査隊が来ていてやたらと忙しかったと、苦笑いをしながら教えてくれた。
ギルマスのデビットさんの部屋を訪れると、俺たちの来訪を予想してか既に支度をしていてくれたようだ。
デビットさんが部下に持って来させたのは、軽くはない金貨の袋と、大きな肉の塊だった。
「……リリアン、預けてた物ってこれか? これは何の肉だ?」
「ミノタウロスですー」
「約束のミノタウロスの肉半分と、残りの素材は買い取らせてもらったので、その代金だ」
二人の言葉に、耳を疑った。
確かにミノタウロスが出た話は聞いていたが…… なんでリリアンが関係あるんだ……?
「えっと、偶然ミノタウロス倒しちゃいましたー」
「話によると、手負いのところに鉢合わせて止めを刺したと。まあ、どんな経緯であろうと倒したのは彼女なので、このミノタウロスは彼女のものだ」
「……リリアン。お前、いったい何してたんだ?」
「えーー、走ってたら偶然見つけちゃっただけですってばー」
「この町としても、彼女が止めを刺してくれた事は非常に助かった。依頼の形ではなかったが、経験値を付けさせてもらおうと思う」
デビットさんに
デビットさんが出して来た書類には、買取の素材一覧と金額が記載されている。それに目を通して、リリアンがサインをして完了となる。
ミノタウロスはAランクの魔獣だ。しかも魔獣の中では比較的その素材の需要も高い。なので、買取額もそれなりの額になったようだ。
サインを済ませたリリアンは、今は嬉々として肉をマジックバッグに仕舞っている。
「王都に戻ったら、皆で食べましょうねー」
って、何とも無さげに言うなよ。それなりに高級な肉だぞ……
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(メモ)
ミノタウロス(#12、14)
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