第2話 野田海頼
「生徒の一部にギャルいない?」
ペン先のインクを拭いながら涼真が訊く。
「いる。何で知ってんの」
「実は、
「あ、わかる。髪の毛が明るい生徒だよな。涼真のこと話してみるわ」
「染めてるのに地毛だって言い張ってるんだよ、あいつ」
船渡川梓紗。
担当クラスの生徒ではないが、見た目が派手で、友達と廊下でけらけら笑っている姿をよく見かけるので顔が思い出せた。
彼女は二年一組、ハイレベルコ―スの生徒だ。
そのまま内部進学できる普通コースと違って難関大学合格を目指すハイレベルコースは進級試験をパスしなければいけない。普通コースに比べて授業数も課題も多い。
船渡川は賢いギャルのようだ。
「大地に教えてくれる先生は美人なのか? おばちゃん?」
「おっさんなんだよ。その先生がまた癖が強くてさあ」
指導教諭ついて愚痴っているうちに開店時間になってしまった。
シャッターの向こうで小学生たちが待っている。店番の邪魔をするわけにもいかず、デッサン用の鉛筆を数本買ってから店を出た。
いつの間にか、商店街には人通りが増えている。
全国的には、いわゆる「シャッター通り」になってしまう商店街が問題になっているようだが、ここは市街地の中心にあるせいか程よく活気づいていた。
八百屋や寿司屋など昔から続く店もあるし、潰れた映画館や本屋の代わりに洒落たレストランやバーも多くなってきている。
カレーを作るよう言付けされていたことを思い出し、画材店から三軒隣のスーパーに立ち寄った。
両親が仕事の日、食事の用意は自分の役目となっている。「料理なんて面倒せえな、やらねえよ」と威張るような年齢でも立場でもないので、今日も素直に任務を遂行する予定だ。
姪たちが我が家に泊まりに来る日の献立は、いつからそうなったのかは忘れたが、カレーと決まっている。
具材は鶏肉か豚肉か、その日の気分で決めていた。牛肉は高いから滅多に買わない。
カレーの材料を買い揃えスーパーを出る。
通路の端に立つ一人の少女の姿が目に入った。彼女が着ているのは藤ヶ峰の高等部の制服だ。
よく見ると、隠し子がいると噂されていた二年三組の野田
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