第1章 ⑨
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俺は言葉を失った。
(なんでここ分かったの?てか何で生徒手帳!?明日渡せばいーのに!!)
心の中でおれはつっこんだ。
「なあ先輩、転校生ってこの子っすか?」
「ああ」
「うわ、やべーまじイイ」
「ねえ、何しに来たのー?まさかヤられ「邪魔」
雪坂が冷たくあしらった。
そして俺に近付き…
「ん」
ほら、と生徒手帳を差し出した。
「何で……」
「お前これ落としてっただろ。道に落っこちてたぜ」
雪坂が呆れたように言う。
「…ありがと」
「おう…つーかお前ここで何してんだ?新しい遊び?何か両手縛ってるし」
「遊びじゃねえよ…。襲われかけてんの俺」
「襲われ?」
俺は一息おく。
「お前が今日されてたのだよ」
「へー、よく分からねえ遊びだな」
「だから遊びじゃねえっつーの、話聞いてた!?」
「おーい、俺ら放置ですかぁ?」
「!」
「……」
あー、つい忘れてた。
「二人いっぺん…っていうのもいーねえ」
「そうだな」
北条とその仲間達は俺達に背を向け会話を始めた。
「っ……」
「……」
「…なあ雪坂」
俺は小さな声で雪坂に問い掛ける。
「なに」
「この縄解いてくんね?」
「なんで」
「いいから、早く!」
「…しゃーねえなぁ」
雪坂が拘束されている縄を解こうとした。
「っ!雪坂危ね…!」
「は?なに…!」
ドコッ。と鈍い音がし、雪坂が地面にうつ伏せになりながら倒れ込んだ。
「転校生君。勝手なことしちゃ駄目じゃん」
「そうそ、俺らがお前らと気持ちよくなる遊びをしよーっと思ったのに」
ゲラゲラと笑い声が響く。
「さ、転校生君の手を結ぼか」
「っ!」
ヤバい、確実にヤバい。どうしよう。
俺は思わず顔を俯かせた。
「…クク」
「…何だ?どうしたの転校生君」
「ははは」
……え?
俺は驚いて顔を上げる。
「雪坂?」
雪坂が急に笑い出す。それもぞっとするような冷めた声で。
そして、
「何お前ら……死にてえの?」
綺麗なその顔に笑みを貼り付けて雪坂はそう言った。
血の気がどんどん引いていく。
だらだらと冷や汗が出てきた。
ピリピリとした殺気が肌に突き刺さる。
まあ、これは北条らに対してだが…
北条らも俺と同様、顔が青ざめている。
「そんなに殺り合いたいんだったら俺が相手してやるよ」
雪坂はにやり、と口元を歪めた。
「…っつ! おい!こいつ取り押さえろ!」
「出来んの?お前らに」
何人もの仲間が雪坂に襲いかかるが、それを軽々とかわす。
「ほら、出来ない」
「くそっ!!」
仲間達は悔しそうに顔をしかめた。
そして1人の仲間が金属バットを持ってきた。
それを雪坂は呆れたような目で見てやり…
「卑怯だねぇ、人間っつーのは。俺は素手でやってるのに」
まあ人の事も言える立場じゃねーが。そうぼそっと呟く。
「うおおお!!」
金属バットを振りかざしてくるが、そいつの腹に思いっきり拳を入れる。
「隙だらけ」
そいつは呻き声をあげて倒れた。
それからも次々と仲間を倒していく。
「あっけねぇ…」
服についたゴミを払い落とす。
と、後ろから北条がナイフを持ってきて向かってきた。
「雪坂うしろ!!」
俺は必死に叫ぶ。
「あ?」
「死ねえ!!」
血がだらだらと垂れていく。
赤い赤い液体。
ナイフは雪坂の左胸付近に刺さった。
「あ……」
北条はかたかたと震える。
そしてゆっくりと顔を上げた。
「え?」
目を疑う北条。
刺された雪坂は何ともないような顔をしていた。
そして北条をじっと見つめる。
「あ…、ああ……」
北条の顔がどんどん引きつっていく。
そしてーー
「何?こんなガラクタで俺が死ぬとでも?」
怖いくらい綺麗な笑みを雪坂は浮かべ、北条の胸倉を掴み蹴り飛ばした。
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