第1章 ⑩
俺はその様子をただ呆然と見ていた。
「あーあ、服血で汚れちまったよ。洗濯しねーと」
雪坂は血で汚れた服を見ながらそう言ってちる。
…血って洗濯で落ちるものなのか?
「あ」
雪坂は俺に気付き、俺の手を拘束していた縄を解いてくれた。
「ありがとう…」
「ん」
(優しいなこいつ。つーか…)
「なあ」
「あ?」
「お前喧嘩強えーな、びっくりしたわ」
「そうか?遊びみたいなもんだけどな」
「え!あれが遊び?」
(どんだけだよ雪坂…てか)
「てか、お前怪我大丈ーーっ!?」
急いで雪坂の左胸を見たら、”怪我”というものが存在していなかった。
「え、何で?あれ?あれ?」
何回も左胸を見るものの、全くなかった。
でもシャツには血がついている。
狼狽えていると雪坂は面白そうに俺を眺め、口を開いた。
「どうした?」
「お前、怪我…」
「ああ、大丈夫大丈夫。すぐ消えるし」
「はあっ!?」
「だって俺、人間じゃねえし」
(……はい?)
「え!ちょっと待って!」
「なんだよ」
「なんだよ。じゃねーよ!だってお前明らか人間じゃねーか!」
「違うし」
「嘘!絶対嘘!!ていうか人間じゃなかったらお前何なの?」
焦りながら俺は喋る。
雪坂は面白そうに口元を緩め、
「お化け?みたいなもんかね」
そう答えた。
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