第1章 ②


***********



廊下を歩く。どこの教室もホームルームをしていてしん。と静まりかえっていた。



「…」



俺は今複雑な気分だった。宮本の罰もむかつく。それに、

(女だったらテンションあげて探しに行くのに)

何で自分が?



あと教室を出る時にすれ違い際に宮本に言われた言葉。



『まあ怒るなよ、転校生、美人だったぞ』



「美人…ねえ」

(てか先生何で俺に言ったんだ?美人…って男だし)


そこまで考えて俺ははた。と気付いた



「先生って…そっち趣味?」


***********



「つーかどこに居んだ」

教室、トイレ、職員室や体育館はすべて見た。



「しかも、顔わかんねーし」

顔が分からないと探しようがない。顔がいいのは分かるんだが



「屋上…か?」

屋上ーー

そこはまだ確認していなかったはずだ!



「北条先輩ら、居ないよな」

北条先輩はこの学校の不良で、屋上をいつも占領している。喧嘩がものすごく強い。



でもそんなこと言ってらんねー。もう9時半近くだし、さっさと転校生みつけてさっさと寝よう!

俺は屋上へ足を向けた。




キイッ…と屋上の扉が開く。途端に柔らかな太陽の日差しと心地よい風が入ってきた。きょろきょろと周りを見渡す。



(屋上って久しぶりだな)

入学式が終わって2、3日後に屋上へ行ったきりだ。そこで北条先輩らに絡まれてから行かなくなった。亮と直哉も一緒に居たが、



「ーー?」



と考えていると、どこからか煙草の匂いがしてきた。匂いの出所はどこだろうか、匂いのする方向に顔を向けると



「……っ」


俺は釘付けになった。



男。は横顔だったが、とても綺麗だった。



太陽の日差しに当たり、きらきらと輝いた黒い髪。雪のように白い肌。目は黒くくりっとしており鼻筋はきれいに通っている。

制服は程よく着崩していて、煙草をぷかぷかと吹かしている。



ーーと、男は俺に気付いたのか、目をこちらに移した。


「えっと、あの…」

「…」



しばらくの沈黙が訪れる。

(うわ、この沈黙いやだ)



男は視線を戻し、再び煙草を吹かし始めた。



(って、俺なに見とれてんだ!とりあえず話、話)

「えっと、お前雪坂だよな?」



俺はそいつに声をかける。そいつは視線をフェンスの向こうに向けたまま答えた。



「…だれ?」

低く掠れた声で。



「えっと、俺は同じクラスの高瀬。宮本先生は知ってるだろ?」

「ああ…」

「お前、居なくなったから宮本先生が探しに行け。って言われたんだー」

「ふーん」

「で、雪坂見つけたから今から教室いこーぜ」

「分かった」



(やっぱ緊張するな、転校生と話なんて…。つーかこいつめちゃくちゃ顔綺麗なんだけど!)



「どうした?行かないのか?」

そう考えていると雪坂に声を掛けられた。



「おー行く。あ、そうそう」

「あ?」

「屋上あんまり来ない方がいいぜ」

「は?なんで」

「ここ怖い先輩の気に入り場なんだー。俺も本当は屋上に来たいところだけど」


そう言った俺の言葉に雪坂は怪訝そうな顔をし、口を開く。



「なんでそいつらの気に入り場所だからって来ちゃ行けねえんだ?」

「は?」

「来たいなら来ればいいじゃねーか」

「まあ、そりゃそうだけど…」

(そりゃそうなんだけどさあ!!)



「先輩こえーしよ…」

「"先輩"ってそんなにこえーのか?」

「恐いわ!」

俺は叫んだ。何こいつ!?


と、俺の携帯のバイブが鳴った。ズボンのポケットから携帯を取り出す。


<亮>



「もしもし?」

[あー翔太。今どこ?]

「屋上。転校生も居る」

[そっかー、つーかもう授業終わったわ]

「え。」

[何か先生が高瀬おせーから授業しちゃお。って]

「まじでか…」

[まじ]

(宮本…覚えとけよ)



「分かった。じゃ、今から転校生連れてそっち行くわ」

[おー]



ピッ。と電話を切りポケットへと仕舞う。



「へー、"こっち"もそういう物あるんだな」

雪坂が何故か感心したように言った。



「え?」

「いや、こっちの話」

「?」

「さ、行こうぜ」

「お、おう」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る