第1章 ②
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廊下を歩く。どこの教室もホームルームをしていてしん。と静まりかえっていた。
「…」
俺は今複雑な気分だった。宮本の罰もむかつく。それに、
(女だったらテンションあげて探しに行くのに)
何で自分が?
あと教室を出る時にすれ違い際に宮本に言われた言葉。
『まあ怒るなよ、転校生、美人だったぞ』
「美人…ねえ」
(てか先生何で俺に言ったんだ?美人…って男だし)
そこまで考えて俺ははた。と気付いた
「先生って…そっち趣味?」
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「つーかどこに居んだ」
教室、トイレ、職員室や体育館はすべて見た。
「しかも、顔わかんねーし」
顔が分からないと探しようがない。顔がいいのは分かるんだが
「屋上…か?」
屋上ーー
そこはまだ確認していなかったはずだ!
「北条先輩ら、居ないよな」
北条先輩はこの学校の不良で、屋上をいつも占領している。喧嘩がものすごく強い。
でもそんなこと言ってらんねー。もう9時半近くだし、さっさと転校生みつけてさっさと寝よう!
俺は屋上へ足を向けた。
キイッ…と屋上の扉が開く。途端に柔らかな太陽の日差しと心地よい風が入ってきた。きょろきょろと周りを見渡す。
(屋上って久しぶりだな)
入学式が終わって2、3日後に屋上へ行ったきりだ。そこで北条先輩らに絡まれてから行かなくなった。亮と直哉も一緒に居たが、
「ーー?」
と考えていると、どこからか煙草の匂いがしてきた。匂いの出所はどこだろうか、匂いのする方向に顔を向けると
「……っ」
俺は釘付けになった。
男。は横顔だったが、とても綺麗だった。
太陽の日差しに当たり、きらきらと輝いた黒い髪。雪のように白い肌。目は黒くくりっとしており鼻筋はきれいに通っている。
制服は程よく着崩していて、煙草をぷかぷかと吹かしている。
ーーと、男は俺に気付いたのか、目をこちらに移した。
「えっと、あの…」
「…」
しばらくの沈黙が訪れる。
(うわ、この沈黙いやだ)
男は視線を戻し、再び煙草を吹かし始めた。
(って、俺なに見とれてんだ!とりあえず話、話)
「えっと、お前雪坂だよな?」
俺はそいつに声をかける。そいつは視線をフェンスの向こうに向けたまま答えた。
「…だれ?」
低く掠れた声で。
「えっと、俺は同じクラスの高瀬。宮本先生は知ってるだろ?」
「ああ…」
「お前、居なくなったから宮本先生が探しに行け。って言われたんだー」
「ふーん」
「で、雪坂見つけたから今から教室いこーぜ」
「分かった」
(やっぱ緊張するな、転校生と話なんて…。つーかこいつめちゃくちゃ顔綺麗なんだけど!)
「どうした?行かないのか?」
そう考えていると雪坂に声を掛けられた。
「おー行く。あ、そうそう」
「あ?」
「屋上あんまり来ない方がいいぜ」
「は?なんで」
「ここ怖い先輩の気に入り場なんだー。俺も本当は屋上に来たいところだけど」
そう言った俺の言葉に雪坂は怪訝そうな顔をし、口を開く。
「なんでそいつらの気に入り場所だからって来ちゃ行けねえんだ?」
「は?」
「来たいなら来ればいいじゃねーか」
「まあ、そりゃそうだけど…」
(そりゃそうなんだけどさあ!!)
「先輩こえーしよ…」
「"先輩"ってそんなにこえーのか?」
「恐いわ!」
俺は叫んだ。何こいつ!?
と、俺の携帯のバイブが鳴った。ズボンのポケットから携帯を取り出す。
<亮>
「もしもし?」
[あー翔太。今どこ?]
「屋上。転校生も居る」
[そっかー、つーかもう授業終わったわ]
「え。」
[何か先生が高瀬おせーから授業しちゃお。って]
「まじでか…」
[まじ]
(宮本…覚えとけよ)
「分かった。じゃ、今から転校生連れてそっち行くわ」
[おー]
ピッ。と電話を切りポケットへと仕舞う。
「へー、"こっち"もそういう物あるんだな」
雪坂が何故か感心したように言った。
「え?」
「いや、こっちの話」
「?」
「さ、行こうぜ」
「お、おう」
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