誰も知らない話

あずき

第1章 ①


「あー、いい天気」



季節は5月。

桜の花びらも散り、青葉が目立つようになってきた。心地よい風が赤みがかった茶色の髪を揺らした。



「こんな日に学校とは…」


俺、高瀬翔太は今学校に向かっている。



1ヶ月前に入学式が終わりちょっとは高校生活にも慣れた。高校が地元なため、中学からの知り合いも多くこの高校に通っており嬉しかった。



「今何時かな…?」


ポケットから携帯を出し時間を見た。



『08:50』


「やべ!遅刻する!」



通りで制服を着た奴らを見掛けないと思った。いつも声を掛けてくる友達ももう学校に着いているらしい。


俺は走って学校へ急いだ。



************


「なあ~翔太まだ学校来てねーのか?」

「あー…そういや来る途中 見なかったな、遅刻じゃ ね?」

「なんだーつまんねーの」

「おい、俺が居るだろうが」

「えー…お前うざいもん」

「悲しいこと言うなよ…」



ガラッと扉が開く


「はあ…何とか間に合った」

(疲れた…ちょっと走った位で疲れるとは…運動不足かな?)



「おせーぞ翔太」

「おはよ、ぎりだったな」


そう考えていると友達の亮と直哉が声を掛けてきた。


「何してたんだよ」


少し拗ねた顔で亮が言う。


「ちょっとゆっくりしててさあ」

「のんびりだな…」

「マイペースだな」

「?そうか?」



ガラッ

「席つけ、ホームルーム始めるぞ」

「おはよ、宮本」

「先生ってつけろ!先生って!」

「はーい」



俺は席に着いた。ちなみに俺の席は窓側から2列目。ほん窓側になりたかったねえ。



「えー、今日からこのクラスに1人新しい生徒が増えるぞ。前にも言ったがな」


(…ん?新しい生徒?聞いてねええ!!)



「宮本!それ初耳!」

「だから先生付けろぉ!」


宮本が怒鳴る



「宮本、俺聞いてねえぞ?」

「だから先生付けろって…はあ…もういいわ」


宮本がはぁっと溜め息をつく



「お前が寝てたんだろ…」


斜め後ろのクラスメイト、竹本がぼそっと呟いた。



「なあなあ、その生徒って女?」

「男だ」

「ちっ、なんだ…」

(男かよ!女だったらよかったのになあ~)



「どんな人だろうね~」

「格好よかったらい~なあ~」


クラスの女子達が騒ぎ始める。



「おい!格好いいのだったら、ここに居るだろう?俺が」


クラスメイトのお祭り男子、河村がそう叫んだ。



「え~…自分で言うなよ」

「ていうか、このクラスは対象外だし?」



あーあ、言われちゃったよ。でも俺は河村が結構イケメンだと思うけどな。やっぱナルシストは駄目なんだなー。



「おい、その辺にしとけ…河村ショックで石化してるから。」


河村、よっぽどショックだったんだな…



「じゃあ入れ」



シーン…



「どうした?入っていいぞ?」


宮本が扉を開け、外を見ながら促した。

が、扉の向こうには誰も居なかった。



「おい?雪坂?おーい」



何回よんでも返事は返ってこず、気配も消えていた。


「宮本、どうしたの?」


俺が問い掛けた



「いや…どっか行っちまった」

「はぁ?」

「丁度いい、高瀬、雪坂を探しに行って連れてきてくれないか?」

「何で俺!?」

「先生を呼び捨てにした罰だ」


宮本はにやりと笑った



くそ~~~~~!!



俺は仕方なく教室を出る。

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