第27話
朝、誰もいない文化部棟の壁にもたれかかっていると待ち人がやってきた。
「話って何?」
彼女はぶっきらぼうにそう聞いてきた。
「あれからどうなったのか気になってね。」
俺はそう言った。すると、
「どうも何も誤解を解いたらどうにかなったわよ。」
彼女はそう言った。絶対に嘘である。
「そっか、よかった。あれからどうなったかすごく気になってたんだ。」
俺はそう言った。実際は別れたことなどとうに確認済みである。それくらいは調べてある。
「ええ、それで話ってそれだけ?」
もちろん本題は別にある。
「いや、それでこれからどうするのかなと思ってな。」
と聞いた。嫉妬心を煽るという計画が失敗した以上こいつがどう動くのか把握しておく必要がある。
「どうも何もこれからは恋人として彼に尽くすわ。相談に乗ってくれてありがとう。」
彼女はそう言って歩いて行ってしまった。
尽くすと言ってもどうするつもりなんだろう。あいつ自体には興味はないが、その行動によって動き方が変わってくる。献身ヒロインにでもなるつもりなんだろうか?それならばそれでもいいが、彼があの頃のように戻ってくれる事はないだろう。
暫く考えてひとまずは彼女のことは様子見をすることにした。
その間に彼の家族である生徒会長と一年の彼の義妹と接点を持っておこうと思う。あいつらも彼がおかしくなった原因の一端だということは調べがついている。ならばその原因を取り除くのは当たり前の事である。
何故接点を持つ必要があるのかと言うと、それは誘導しやすくするためである。
俺は人の思考をある程度誘導することができる。容姿、経済力、頭脳、運動能力、社交性、全てを持っている俺は話している相手が無意識に俺のことを上位者だと思うのだ。さらに俺の声は1/fゆらぎと言われるものだ。それに加えて、家が大企業の社長であるため、様々な分野を学んできた。その中にはもちろん心理学や脳科学などもある。これらを活用することにより、結果、話している相手は無意識下で俺に徐々に心を許して、信頼し、俺の言うことを無意識に受け入れてしまうのだ。一種のカリスマとでも言おうか。これが接点を持つ必要がある理由である。
とりあえずこれからの計画を立てながら俺はつまらない授業がある教室へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます