第28話
そうして今日は特に何事もなく昼休みになった。
昨日から昼飯は文芸部の部室で食べることになったので席を立って部室に向かう。
文化部棟に向かう途中で飯塚さんと遭遇した。
「こんにちは。」
挨拶するとうんとだけ言われた。そのまま2人で並んで特に会話することもなく部室へと向かう。そして部室に入ると、すでに部長がいた。
「あら、こんにちは。2人は一緒に来たの?」
と尋ねられるが途中であったことを伝える。そうして話していると九条さんが部室に入ってきた。
「遅くなりまして申し訳ございません。」
と謝りながら部室に入ってきた。そうして4人で席について話をしながらご飯を食べているとドアがノックされた。
「はい、どうぞ。」
部長が代表して答えると入ってきたのは薫さんだった。
「あら、どうしたんですか?」
部長が尋ねると、
「その… ユウと一緒にご飯を食べようと思ったんですがすぐにどこかへ行ってしまって着いてきたんです。」
とのことだった。俺としては彼女が一緒に食べるのは構わないが他の人がそうだとは限らないので皆んなの顔を見回す。
「今は部活の会議中なの。暫くは遠慮してくれるかしら。」
部長はそう答えた。なんかどこはかとなく圧を感じる。
「そ、そうですか…失礼しました。」
すると彼女はそう言って圧に負けたのか退室していった。
「では邪魔はいなくなったので楽しい時間を再開しましょう。」
部長はそう言って何事もなかったのかのように会話を再開した。さっきの圧は見間違いだったのだろうか。
そうしてその後は何事もなく昼休み、午後の授業は終了し、放課後になった。放課後は文化祭のことについての話し合いの続きをするとのことなので部室に向かう。
そうして話し合った末今年は部誌を販売することに決まった。そこで一旦休憩することにした。
そうして雑談をしていると本日二度目のノックの音がした。
「どうぞ。」
部長が答えるとまた薫さんがやってきた。
「今度はどうしましたか。」
そう言った部長の言葉にはどことなく棘が含まれているように感じる。それを向けられた彼女だが気にすることなく、
「はい、入部したいと思いまして、入部届を書いてもらいににきました。」
この学校の部活動は書類に氏名などの必要事項を書いたうえ、その部の部長のサインと担当の先生のサインを得た入部届を提出する必要がある。
「なるほど、ですが、貴方はバスケ部に入っていたと思いますが。」
部長はそう言った。この学校では兼部は認められているがバスケ部は忙しく兼部している暇はないはずだ。
「大丈夫です。顧問に了承はとってあります。」
彼女はそう言った。
「そうね。なら文化祭が終わってからということになるけれどそれでいいかしら。」
部長はそう言った。何故文化祭が終わってからなんだろう。
「何故文化祭が終わってからなんですか?」
当然彼女も疑問に思ったらしく尋ねていた。
「我が部では今年、部誌を販売することになったのよ。けれど未経験な貴方では無理でしょう。これから忙しくなるのだけど貴方はやることはないわ。私達も貴方に構う暇もなくなるし。だったら文化祭が終わってからということでいいのではないかしら。」
彼女はそう言った。確かにその通りかもしれないと思っていると、
「わ、わかりました。では仮入部ということで親睦を深める意味で昼ごはんを一緒に食べてもいいですか?」
と聞いてきた。それくらいはいいのではないかと思っていると、
「昼休みも文化祭の話をするから親睦を深める事はできないと思うわ。だから文化祭が終わってからでお願い。」
と部長は断った。
「…そうですか。では失礼します。」
といって若干肩を落としながら彼女は退室していった。
「そこまで断る必要あったんですか?」
と部長に尋ねると、
「貴方も別れてすぐだと気まずいでしょう。」
と答えてくれた。俺に気を遣ってくれたのかと部長に感謝を伝えると、
「いいのよ。(別の理由もあるのだし)」
と言った。後半は何を言っているのかは聞こえなかったので聞き返そうとすると
「じゃあ話し合いを再開しましょうか。」
と部長が言ったので話し合いに戻ることにした。
そうして話し合いを続け、いい時間になったので今日は解散になった。
「それでは失礼します。」
彼女達は少しゆっくりしていくようだが俺は夕食の準備があるためそう言って一足早く部室を退室した。
部室から話し声が聞こえるが俺は気にすることなく家路を急いだ。
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